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BUSINESS

認知や教育、清掃活動を通じて、プラスチック削減に挑戦するイスラエルでの取組み

by nocamels |2020年06月17日

プラスチック問題への取り組みとして、紙ストローの普及やレジ袋の有料化など、世界中で様々な対策が行われています。イスラエルも例外ではありません。

マイクロプラスチック研究者であるスタブ・フリードマンさんは、2018年にイスラエルに引っ越して来た時、大量のゴミ、特にプラスチックが浜辺に捨てられていることにすぐに気がつきました。


テルアビブの海岸にプラスチックごみが散乱している様子

そんな状況に不安を覚えた彼女は、一緒に活動できるビーチ清掃活動や環境団体を探し始めましたが、なかなか見つかりません。

これが、彼女が自らがこのゴミ問題の解決に取り組もうと決意した瞬間でした。


「自分自身の『清掃活動』の体制を整えるのに約2か月かかりました。それが、2018年の3月ですね。FacebookやInstagramでこの活動について告知をしたのです。結果、12人の有志が集まってくれました。」と、当時を振り返るフリードマンさん。たった12人と思うかもしれませんが、これが、プラスチックを使用しないライフスタイルを推奨するフリードマンさんの草の根活動団体、『プラスチック・フリー・イスラエル』(Plastic Free Israel)の第一歩となったのでした。


アメリカ出身のフリードマンさんは、現在ロンドン大学キングス・カレッジのPopulation Health & Environmental Sciences Medical Research Council Centre for Environment and Health’s Microplastics Labのアシスタント研究員をしています。ロンドン大学キングス・カレッジの気候変動:環境・科学・政策修士号の一環として、空気中のマイクロプラスチックに焦点を当て、修士論文を執筆しています。


ビーチにおける清掃活動では、彼女の活動立ち上げを手助けしたイスラエル中の環境関連団体から集まった、志を共にする仲間たちに出会いました。


プラスチック・フリー・イスラエルは、テルアビブの様々な地域で、毎月のビーチ清掃、プラスチック削減方法に焦点を当てたキャンペーン、そしてプラスチックごみを含む環境問題についてのセミナーやパネルを開催するなど、様々な草の根活動を展開しています。


プラスチック問題

プラスチック・フリー・イスラエルによると、過去10年間のプラスチック生産量は、前世紀と比べて増加しており、その数は史上最多となっています。世界の22~43%のプラスチックが、適切にリサイクルされることなく、最終処分場で廃棄されており、毎年1,000万トンのプラスチックが海に流されています。


つまり約268,940トンの重さ、5.25兆個のプラスチックが海洋中に浮遊していることになり、これにより影響を受ける海中の生物の数は、なんと700種以上。


私たちが日常的に使用するプラスチック容器でさえ、高熱、変形、使いまわしなどにより、食事や飲料に到達する可能性もあります。毎年、世界中で3.2億トン以上のプラスチックが生産されており、プラスチック生産は、この先毎年4%ずつ増え続けると予想されています。


イスラエルでは、ウェットティッシュ、使い捨てプラスチック、たばこの吸殻が至るところで捨てられ、大きな問題となっています。


プラスチック・フリー・イスラエルがゴードンビーチで清掃活動を行った際、1時間もしないうちに、1.5万本以上ものたばこの吸殻を見つけたとのことです。


テルアビブの海岸で清掃活動を行う人たち

プラスチック・フリー・イスラエルは、毎月最低1回清掃活動を行っていますが、ボランティアや協力団体が十分に集まった場合には、清掃活動回数を増やしています。


マイクロプラスチックは至るところに・・・

フリードマンさんは、研究の一環でマイクロプラスチックの影響や、マイクロプラスチックが自然環境へ与える影響を調べています。


マイクロプラスチックは、プラスチックが長い間雨風にさらされることで、細かな破片に分解される際に作られます。その断片(通常、5㎜程度)が至るとこに浮遊しており、例えば、北極海の氷床や、遠く離れたフランスピレネー山脈の頂上にでさえ、見つけることができます。


そして、マイクロプラスチックは、私たちの日常生活の中にも存在しています。飲料水、ゴミ、そして食卓塩、海塩、ビール、はちみつなど、私たちが日々に口にする食品の中にもマイクロプラスチックが含まれているのです。


2019年に発表されたある調査では、普段の生活の中で人は、毎年平均5万ものマイクロプラスチック粒子を消費しているとされています。それだけでなく、シャワージェルや歯磨き粉などにも含まれているため、最終的には下水道に流れ、海に流れ込んでいるのです。


コーヒーカップキャンペーンとは?

市民が声をあげることで、政府のプラスチックに対する考え方、学校でのプラスチック消費の在り方、ビジネスや産業のプラスチック製品生産の方法を変えていくことができるとプラスチック・フリー・イスラエルは信じています。


その取り組みの一つとして、消費者による使い捨てコーヒーカップの数を減らすことを目標として、テルアビブでコーヒーキャンペーンを開始しました。


使い捨てコーヒーカップは紙製ですが、ポリエチレンも含まれています。紙やプラスチックの組み合わせは、リサイクルするのがとても難しいため通常リサイクルされません。


そこで多くの地元コーヒーショップと手を組み、リサイクル可能なカップを持ってきた人には割引特典が得られるキャンペーンを開始しました。


「私たちは、素材を廃棄するのではなく、再利用することにもっと慣れていくべきです。イスラエルでは、テイクアウト用のカップが好まれているので、なかなか難しいのですが。」と、フリードマンさんは話します。


彼女は、自身のマイカップを持参した人へのインセンティブについて、研究チームと共に様々なコーヒーショップとの話し合いを続けています。


「こうした活動は、欧米諸国ではとても効果があって、今ではとても勢いに乗っています。このキャンペーンは、ソーシャルメディアを通じてどんどん拡大し、より多くの人と企業に拡がっています。プラスチック・フリー・イスラエルは、このキャンペーンがイスラエルの大きなコーヒーショップネットワーク形成につながることを願っています。」


スローダウン - プラスチック・フリー・ライフのための秘訣

「私は、『スローダウン』という考え方が好きなんです。座って、一杯のコーヒー飲む。『テイクアウトですか?店内のご利用ですか?』と聞くまでもなく、みんなマグカップや紙カップに入ったコーヒーを楽しむことが必要だと思います。」と、フリードマンさんは提案します。


「こんな小さな変化が、素晴らしいライフスタイルを生み出します。家で料理をして、それをノン・プラスチックのランチボックスで持っていく。フォークやナイフ、ウォーターボトルも持参します。こうしたことが、少しずつですが、スピードを緩めることに繋がるということを覚えていてください。日々の生活を充実させることができる素晴らしい方法ですよ。」


プラスチック汚染や一般的な汚染を削減するための他の方法として、誰もができるもっともシンプルなこと。それは、もしゴミを見つけたら、それを拾うことです。


プラスチック・フリー・イスラエルによると、「わずかのゴミでも拾うことが、変化を起こすための第一歩です。私たちみんなが、一人ひとりのロールモデルなのです。」


サステイナブル・ベビー・ステップス」(Sustainable Baby Steps)という団体のブログでは、再利用可能な製品に代替可能なプラスチック製品のリストを掲載しています。


一例として、竹から作られたキーボード、ステンレススチール製のキッチン用品、木製の歯ブラシなどが紹介されています。


様々な役割を担うボランティア

プラスチック・フリー・イスラエルのビーチ清掃は少しずつ拡大し、多くの人の関心を寄せ始めています。


「私たちがパートナーシップを結んでいる学校や団体とのコラボレーション・ビーチ清掃では、多い時で100人以上もの人が参加しています。私たちは、ヨーロッパ連合ともパートナーを結んでいるんですよ。」と、誇らしげに語るフリードマンさん。


イスラエルのある海岸で清掃活動をする女性2人

これまでプラスチック・フリー・イスラエルでは、900人以上のボランティアと一緒に、イスラエルの海岸沿いにある5,500キロもあるゴミを取り除きながら、19回のビーチ清掃を行ってきました。


団体のFacebookフォロワーは11,000を越え、定期的にビーチ清掃やイベント情報を投稿しています。


「プラスチック・フリー・イスラエルは、完全なボランティア団体です。現状、私たちはどこからも資金援助を受けず、すべて物理的な寄付((ゴミ袋、手袋、清掃活動参加者から抽選でプレゼントする再生可能なギフトなど)によって運営しています。中にはかなり多くの活動に参加してくれるボランティアもおり、コミュニティとの信頼関係を築きながら、献身的な活動を続けてくれています。彼らはまさに私たちの活動の中核的存在です。」と、フリードマンさんは説明します。


また、彼女は、プラスチック・フリー・イスラエルについて、善意と私たちの自然環境に起こっているひどい状況に突き動かされた人びとから成る「信じられないくらい熱心な団体」と表現し、それこそが、私たちがプラスチック・フリー・イスラエルを運営する糧となっていると話します。


団体に参加するボランティアは、「コンテンツ作成・ソーシャルメディアマネジメントチーム」、「清掃チーム」、「エデュケーションチーム」のように分かれて活動しています。多くのイベントやキャンペーンがボランティアの稼働状況によるため、プラスチック・フリー・イスラエルでは常により多くの同志を探しています。


最後に、フリードマンさんは次のように語りました。


「こんな素晴らしい活動が成長していく姿を見ることができ、とても幸せです。」


プラスチック・フリー・イスラエル

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