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BUSINESS

副市長が語る観光都市エルサレムの復興とは

独占インタビュー|フルール・ハッサン・ナフム(エルサレム副市長)

「FEMALE LEAD」は、ビジネスやカルチャーなどの分野で活躍するイスラエル人女性とイスラエルに関わる日本人女性の成功までのストーリーを紹介するプロジェクトです。

人が沢山いる会場でフルールが微笑んでいる写真です。
写真提供:フルールのFacebookページ

歴史的建造物や美しい景色が点在し旅行先としても人気の高い都市、エルサレム。パンデミックの影響で、旅行がしにくい日々が続いていますが、観光業はエルサレムに観光客が戻ってくる日を待ち続けています。

そんな観光業を担う存在でもあり、エルサレム副市長を務めるフルール・ハッサン・ナフム氏は、この予期せぬ事態においても退屈な日々を過ごしていません。


観光客から移民、そして政治家へ

エルサレム副市長を務めるフルール氏ですが、イスラエル出身ではありません。ジブラルタルで生まれ、イスラエルへ移住した当初はヘブライ語も全く話せなかったと言います。常に社会に貢献したいという思いを持っていた彼女は、移民として「自分が新しく住むと決意したこの国」に貢献したいと思うようになります。弁護士として働く傍ら、地元の政党から誘いを受けた彼女は、政党への加入を決意。こうして政治家としてのキャリアが始まりました。


政治家として最初にサポートした候補者は惜しくも市長当選を逃しましたが、次にサポートした候補者が市長に選ばれます。
「選挙の後、市長に何をしたいかと問われ、私はエルサレムの外務大臣になりたいと伝えました。」


フルール氏は、主に外交関係や経済発展、観光に従事。移民である彼女は、外国からイスラエルを訪問する観光客の思考が理解できると言います。なぜなら、「彼女自身がその一人だった」からです。また、流暢な英語とスペイン語は世界中の人々とコミュニケーションをとることができるので、業務上でとても役に立っています。外国の人々とコネクションを築くということに関しては、相手の考え方が理解できるため、移民であることが役立つとフルールは信じています。移民であることは彼女にとっての強みなのです。


エルサレムの景色

女性政治家としての挑戦

女性であるということは、どのビジネスにおいても挑戦であり、政界もその例外ではありません。「政治家として働く女性にとって、一番の課題は過小評価される点です」と彼女は言います。女性がこの業界にもたらすことへの期待が低いことが問題であると指摘する一方、利点もあると言います。それは「驚きという力を与えてくれるのです。誰も予測していないのです。」一度役職についてしまえば、その人の価値は明白となりますが、それ以前は女性は過小評価されるとのこと。しかし、多様性がある程「社会も決断もより良いものになる」という彼女は、女性は政界にいなくてはならない存在だと信じています。


フルールは政治に携わろうと考えている女性にアドバイスがあると言います。「もし何かに対しての情熱、信じている主張や解決したい課題があるならば、進んで挑戦してください


フルールがスピーカーを手に発言している様子を写した写真です。
写真提供:フルールのFacebookページ 撮影者:Laura Ben-David

パンデミックにおけるエルサレム

パンデミックが発生した当初、地方自治体はとても困難な状況に晒され「悲劇だった」とフルール氏は振り返ります。パンデミック以前、年間500万人の観光客を記録していたエルサレムですが、2021年には20万人にまで落ち込みました。観光業が大きな割合を占めるエルサレムは、イスラエル国内で一番打撃を受けた都市となったのです。


しかし、地方自治体は観光客を呼び戻すため、明確な政策を提案し続けています。「私は、地元の観光客を対象としたキャンペーンを行うことを決断しました」。そして、イスラエル人をエルサレムに呼び寄せるため、彼女がこのキャンペーンの代表者に任命されました。多くの外国の人々がイスラエル観光を楽しむのと同様に、以前は年間400万人のイスラエル人が国外へと観光に出かけていました。パンデミックにより海外旅行にいけなくなった彼らは、新しいビジネスターゲットでした。イスラエル人を引きつけるため、アトラクション、お祭り、レストランを融合させたり、ホテルのセット販売を行ったりしました。「このキャンペーンはとてもうまくいきました」とフルール氏は言います。


世界を魅了するエルサレム

パンデミック以前には、年間500万人が訪れていた世界中の人々を魅了する由緒ある都市エルサレム。日本人もその例外ではありません。エルサレムで日本人観光客が最も惹かれるもの・場所は何かフルール氏に尋ねたところ、歴史を感じられるエルサレム旧市街が最も興味深いのではないかと答えてくれました。「きっと日本の人々は、エルサレム旧市街をとても気に入るでしょう」と彼女は言います。エルサレム旧市街は博物館やダビデの町もあり、魅力が沢山あります。見応えたっぷりなこと間違いなしです。


モニュメントの前でサンタと並んでいるフルールの写真です。
写真提供:フルールのFacebookページ

エルサレムの地方自治体で働く

現在、フルール氏は観光業以外にも、興味深い事業に多く携わっています。主に超正統派や東エルサレムのアラブ人など、社会的に弱い立場にある人々に対する雇用機会の提供に努めるほか、インフラ整備や同市のテック市場におけるジェンダーギャップの解消にも注力しています。


また、大規模なプロジェクトの運営も任されています。例えば、中東や北アフリカからきたユダヤ人の歴史を伝える博物館の設立を検討しています。彼女はアブラハム合意以降、両国間の継続的な平和を保つアラブ首長国連邦・イスラエルビジネス協議会(=UAE-Israel Business Council)の共同設立者でもあります。これらの取り組みを通して、フルール氏は外務省と多くのイベントを開催してきました。将来の企画としては、エルサレムに観光客が早急に戻ることを願っていると言います。「2022年は再生と再建の年にしなくてはなりません」。


夜に演説をしているフルールの写真です。
写真提供:フルールのFacebookページ