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BUSINESS

起業家、写真家として成功を収めるイーロン・ガノールから学ぶアートシンキング

by 長谷川 雅彬 |2021年07月06日

“起業とアートは似ている”。机上の空論でしょうか?多くの人にとってビジネスとアートは全くの別物です。最近ではアートシンキングが流行り、ビジネスの世界でアートが注目されるようになりましたが、実践できている人はまだまだ少ないかもしれません。実は起業とアートの双方で成功しているイスラエル人がいます。今日はそんな一般常識を覆すような生き方をしてきたイーロン・ガノール(Elon Ganor)の実体験を通して、本物のアートシンキングとは何なのかについて迫りたいと思います。


イーロン・ガノール氏
イーロン・ガノール氏

日本人が知らない!イスラエル発、世界トップのビジネススクールが教えるアートシンキング
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日本人が知らない!イスラエル発、世界トッ...

長谷川 雅彬 / 2021年06月08日


イーロン・ガノールとは

イーロン・ガノールはスイス生まれのイスラエル人で、テルアビブ大学では医学博士を取得をしています。卒業後は病院で働くも自分で起業することを志し退職し、1987年にスイスで医療関係のVirovahl社を設立。彼が37歳の時のことです。その会社では世界初のペプチドベースのHIVテストを開発し、スウェーデンのPharmacia ABとライセンスの独占契約を結び輝かしい成功を収めます。



その後、コンピューターの音声技術を開発していたVocalTec社に1990年に参画。当初はセール&マーケティングを担当していましたが、すぐにCEOとして抜擢されます。そこで彼は、ソフトウェア事業に集中するべく大きな舵取りをします。


世界で初めてVoIP(インターネット上で音声通話を実現する技術)を商業化、ソフトウェアとして販売することで企業の成長を牽引し、NASDAQに上場を果たします。Skypeをはじめとする多くの企業が同社のテクノロジーを採用しました。イーロン・ガノールによれば現在、多くのハイテク企業の重役が彼の企業の卒業生だと言います。


起業家から写真家へ

2006年にVocalTec社を離れたイーロン・ガノールは写真家になることを決め、大学でフォトグラフィーの学位を取得。起業家時代に投資家たちの強欲な姿を見て辟易とした彼は、そんな強欲な投資家たちを風刺したWall Street(ウォールストリート)という作品を発表し、一気に注目を集めます。現在彼の作品は、Tel Aviv Museum of ArtやShpilman institute Photographyのコレクションにも含まれているほどです。


Whiteknight
Whiteknight (写真:イーロン・ガノール)

この話だけ聞くと、彼が何か特別な才能を持っていて、何をやっても成功出来ただけというように聞こえますが、実際に彼と話すと、彼が成功出来た理由は彼の考え方やマインドセットで、特筆すべき才能があったからではないことが分かります。ガノール氏は「自分が本当に信じてるアイディアがあるなら他人の批判には耳を貸さず、積極的に成功を掴み取りにいくべきだ。絶対に諦めてはならない。」と言います。



例えば、彼がVocalTecに参画した1990年頃は、会社の資金も乏しく社員も10名しかいませんでした。1995年、同社がVoIPテクノロジーを世界で初めて商業化した当時はインターネットの急成長期で、次々に新しいサービスが生まれ、メディアがこぞってITに関するニュースを取り上げていた頃です。どれだけ良い製品を作っても人々に知ってもらえなければ宝の持ち腐れです。イーロン・ガノールは、自社製品である世界初の商業化された映像付きのインターネット電話ソフトウェア(今で言うSkypeやZoom)を世界に発信するため、大手のPR会社にコンタクトしました。


このPR会社の最低予算は最低でも50万ドル(約5000万円)。当時の彼の手元には、わずか1万ドル(約100万円)の広告予算しかありませんでした。広告会社の担当者に彼の製品を実際にインストールさせて使ってみせるも断れた彼は、「これがどれだけのチャンスだろうか?世界初のインターネット電話だ。もしこの製品のPRを行えば、それだけで君の会社は大きなとてつもない影響力を持てるようになる!」と担当者を説得。その結果ウォールストリートジャーナルとの独占報道契約を結ぶことに成功し、VocalTecの製品は世界中に知られることになったのです。


決して才能や特別な環境のおかげではなく、その考え方とマインドで成功を掴み取ってきたイーロン・ガノールは「起業もアートも似ている。とにかく沢山試してみなければならない。」と言います。


イーロン・ガノール

重要なのは試行錯誤を繰り返すこと

多くの人は、起業やアートも才能や人脈など何か特別なものがないと成功出来ないと思いがち。しかし、彼にとって起業もアートもプロセスは非常に似ています。周囲の無理だ不可能だという言葉には耳を貸さず、自分自身を信じて様々な方法を試し、試行錯誤することが非常に重要な要素なのです。


誰にとっても失敗は怖いものです。しかし、とにかく色々な方法を試してみることが大切だと、イーロン・ガノールは強調します。そして、この点こそがまさにビジネスとアートを繋ぐ重要な部分なのです。今流行りのアートシンキングではありますが、本物の起業家やアーティスト にとってアートシンキングとは、絵を描くことでも陶芸をすることでもありません。自分のアイディアを具現化するために、絶え間ない試行錯誤と実験を繰り返すマインドセットのことなのです。