衣服を作る過程で、大量の水やエネルギー、化学物質を使用する繊維産業。こうした製造工程の環境負荷を軽減するため、イスラエルのテクノロジー企業「Sonovia ソノビア」は、超音波を活用した新しい染色・加工技術の開発を進めています。特にデニムのインディゴ染色に焦点を当て、環境への配慮と生産効率の両立を目指しています。

超音波の力で繊維加工を変える
ソノヴィアは2013年、イスラエルのバル=イラン大学(Bar-Ilan University)の研究成果を商業化することを目的に設立されました。超音波を利用して繊維に機能性物質を定着させる技術を基盤とし、持続可能性と高い製品性能を両立する製造ソリューションの開発に取り組んでいます。
従来の繊維染色や加工では、水や熱エネルギー、化学物質が大量に必要となる場合があります。Sonoviaは、超音波によって生じる現象を利用することで、こうした工程の効率化を目指しています。
同社の技術では、液体中に超音波を照射することで「キャビテーション」と呼ばれる現象が起こり、微細な気泡が発生します。気泡が崩壊する際に生じる高速の流れを利用し、染料などの化学物質を繊維の表面に効率的に届ける仕組みです。
この方法は、繊維に物質を定着させるための化学結合剤への依存を減らす可能性もあります。既存の繊維加工ラインへの導入を視野に入れ、天然繊維から合成繊維まで、さまざまな素材への応用を目指しています。

デニム染色の環境負荷を軽減
現在、ソノヴィアがとくに力を入れている分野の一つが、デニムのインディゴ染色です。同社の「D(y)ENIM」は、超音波技術を活用し、従来の染色工程で必要とされる水やエネルギー、化学物質の削減を目指す技術です。
同社が紹介する2025年7月のFFG Technology Reportでは、従来方式との比較として、生産量1キログラム当たりの水使用量を85%、熱エネルギー消費量を76%、電力消費量を42%削減できるとしています。※
水資源の消費や排水処理が課題となる繊維産業にとって、染色工程そのものを見直すことは、環境負荷を軽減するための重要なアプローチです。ソノヴィアは、環境性能だけでなく、コスト面でも競争力のある生産方式の実現を目指しています。

研究開発から産業利用へ
ソノヴィアは、研究開発にとどまらず、製造現場での実用化も進めています。公式サイトによると、2024年にはPure Denimで初の産業用設備の設置を完了。2025年には、染色機「Sonata」の製造に向けてイタリアのRamallumin社との提携を発表し、同年10月には同機の正式発表を行いました。
また、同社はファッション関連の国際展示会などで技術を紹介し、繊維メーカーやブランドとの協業を進めています。2024年には、世界的なラグジュアリーグループであるKeringとの初の契約締結も公式サイトで公表しました。
新型コロナウイルス感染症の流行期には、抗菌機能を持つマスクの開発・販売にも取り組み、超音波技術をさまざまな繊維製品へ応用してきました。現在は、持続可能な染色・加工技術を事業の中心に据えています。

ファッション産業の未来に向けて
ファッション業界では、製品のデザインや素材選びだけでなく、原料の調達から製造、流通に至るまで、サプライチェーン全体の環境負荷を見直す動きが広がっています。
ソノヴィアの取り組みは、完成した衣服を環境配慮型にするだけでなく、その製造プロセス自体を変えることを目指すものです。超音波技術を活用した染色が、品質やコスト、量産性の面でも製造現場の要求を満たせるかどうかが、今後の普及を左右する重要なポイントとなります。
イスラエルの技術開発を背景に、繊維産業の課題解決に挑むソノヴィア。環境負荷の軽減と産業としての競争力を両立する技術として、今後の実用化と導入の広がりが、世界的に注目を集めています。
※これらは同レポートに基づく数値であり、実際の削減効果は製造条件や比較対象によって異なる可能性があります。
SONOVIA公式サイト
https://sonoviatech.com/home/


