イスラエル出身の映画監督ガイ・ナティーヴの新作『The Liberation』が、9月10日から20日まで開催される第51回トロント国際映画祭(TIFF)で上映されることが発表されました。アカデミー賞受賞作『Skin』や、ゴルダ・メイア元イスラエル首相を描いた『Golda』などで知られるナティーヴ監督。今回スクリーンに映し出すのは、ホロコーストを生き延びた自身の祖母の人生をもとにした、極めてパーソナルな物語です。

ホロコーストを生き延びた祖母、その知られざる人生
『The Liberation』の主人公は、ホロコースト・サバイバーのリタ・クーパー。ナティーヴ監督の祖母をモデルにした人物です。
過去の重荷を抱えながら生きるリタは、ある日、カリスマ的な若い女性リッキーと出会います。彼女に強く惹かれたリタは、それまでの家族との生活を捨て、女性たちだけで暮らすコミューンへと身を投じていきます。
母を連れ戻そうとやって来た娘のエラとジョー。しかし、彼女たちもまた、その共同体が持つ不思議な魅力に引き込まれていきます。リタはやがて、自らが求める新しい人生と、残してきた家族との間で大きな選択を迫られることになります。
この物語の背景にあるのは、ナティーヴ監督自身の家族の実話です。祖母リタはアメリカでカルト的な共同体に加わり、家族から離れて生活していました。2019年には、亡くなった祖母をイスラエルに埋葬するための監督自身の経験が報じられるなど、長年にわたり彼の中に残り続けてきた家族の記憶でもあります。

キャリー・クーン、リリー・ジェームズら豪華キャスト
主人公リタを演じるのは、『The White Lotus』などで知られるキャリー・クーン。娘エラ役には『The Last of Us』のベラ・ラムジー、もう一人の娘ジョー役にはオデッサ・ヤングが出演します。

そして、リタを新しい世界へと誘うコミューンのリーダー、リッキーを演じるのがリリー・ジェームズ。さらに、キャリー・クーンの実生活での夫でもある俳優・劇作家のトレイシー・レッツが、劇中でもリタの夫を演じています。
家族、記憶、自由、そして人が何かに強く惹きつけられていく心理――。サスペンスの要素を取り入れながら、一人の女性とその家族の複雑な関係を描く作品となっています。
『Skin』『Golda』『Tatami』に続く新たな作品
現在は妻で俳優・プロデューサーのジェイミー・レイ・ニューマンとともにロサンゼルスを拠点に活動するナティーヴ監督。短編映画『Skin』で2019年のアカデミー賞短編実写映画賞を受賞し、世界的にその名を知られるようになりました。

その後も、ヘレン・ミレン主演で第四次中東戦争時のゴルダ・メイアを描いた『Golda』、イラン人とイスラエル人の映画作家が共同監督した『Tatami』など、イスラエルにルーツを持ちながら国際的な作品を発表し続けています。

『The Liberation』は、ナティーヴ監督がイスラエルを離れて以降に手がけた主要なアメリカ作品として、『Skin』『Golda』『Tatami』に続く一本。ニューヨークを拠点とするイスラエル出身の映画プロデューサー、オーレン・ムーヴァーマンとも再びタッグを組みました。
世界が注目するトロント国際映画祭へ
『The Liberation』は、2026年のトロント国際映画祭で「Special Presentations」部門に選出され、カナダ・プレミアとして上映されます。映画祭は9月10日から20日まで開催予定です。

世界最大級の映画祭として知られ、ハリウッドの賞レースを占う重要な舞台でもあるトロント。今年も世界各国から約300作品が集まり、話題作が次々と上映されます。
その中でナティーヴ監督が選んだのは、壮大な歴史そのものではなく、その歴史を生き延びた一人の女性と、自らの家族に刻まれた記憶でした。
ホロコーストを生き延びた祖母は、なぜ家族を離れ、新たな共同体へ向かったのか。そして「解放=Liberation」とは、彼女にとって何を意味したのか。
イスラエルから世界へと活動の場を広げてきたガイ・ナティーヴが、自身のルーツと家族の記憶に深く向き合った新作。『The Liberation』は、彼のフィルモグラフィーの中でも、とりわけ個人的な一本になりそうです。
*本記事はイスラエルメディアynetの報道をもとに構成しています。

