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ホロコーストの悲劇を忘れないために。ヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)

by Marat GALIMOV |2023年04月17日

ヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)
iStock/studioraffi


エルサレムの丘に位置するヘルツェル山。海抜804メートルの高度にあるこの山には、ヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)が建っており、追悼の山としても知られています。イスラエル国会(クネセト)の決定により、1953年に創設されたヤド・ヴァシェムは、ホロコースト国立記念館として正式に知られ、毎年、イスラエルおよびユダヤ史上最も悲惨な歴史と犠牲者たちを追悼するために、数多くの厳粛な国家式典を開催しています。


Yad Vashem

その中でも特に有名なのが、ホロコーストを追悼する式典です。ホロコーストは、ナチス及びその協力者たちによって約600万人のユダヤ人が殺害された歴史的な出来事です。毎年、ペサハの一週間後、独立記念日の一週間前、イスラエルではヨム・ハショア(公式名『ホロコースト記念日』と翻訳される)として、犠牲者の記憶と反抗したユダヤ人たちを称えます。この日はヘブライ暦に基づく日付によって変動し、午前10時にイスラエル全土でサイレンが鳴り響き、2分間の黙祷が行われます。その後、ヤド・ヴァシェムの敷地で公式の式典が行われます。


式典の様子は下記にてライブ配信されます。


ヤド・ヴァシェム記念館の見どころ

ヤド・ヴァシェムの記念館は、聖書のヘブライ語から翻訳された「記憶と名前」という意味を持つ空間であり、観光地としても注目すべき場所。現在ヤド・ヴァシェムは、モニュメント、彫刻、メモリアルプロジェクト、および支援施設を含む約30種類の鑑賞場所があるほか、今なお拡大している複合施設です。これらの施設は、訪問者がホロコーストを通じたユダヤ人の生存の奇跡を理解するための役割を果たしています。


iStock.com/danibeder
iStock.com/danibeder

まず最初に向かうのは、コンクリートとガラスで構成された壮大な立方体構造からなるビジターセンター。 施設に入ると、インフォメーションスタンド、コーシャ認証のカフェテリア、トイレ、クロークなどの基本的なサービスが利用できます。希望があれば、ヘッドセット付きの英語版オーディオガイドや、ヤド・ヴァシェムの地図をそれぞれ約30シェケルと12シェケルで購入することができます。入場は無料ですが事前登録必須。さらに10歳未満のお子様の入場は禁止されています。


iStock/studioraffi

この記念館の主要な見どころは、ホロコースト記念博物館でしょう。こちらでは、ユダヤ人の個々の視点からヨーロッパの大災害の物語が語られています。ピラミッド型の建物は、ホロコーストの歴史の入り組んだ章に捧げられた9つの地下ギャラリーに分かれています。それらは、ナチス・ドイツにおけるユダヤ人への差別、占領ポーランドにおける反ユダヤ政策、ゲットーの創設、ドイツによるソ連侵攻、アドルフ・ヒトラーの「ユダヤ問題の最終解決」政策の開始、ユダヤ人の死の収容所への強制移送などが含まれています。各ギャラリーには、多様なオリジナルの遺物や証言、写真や文書、美術品やマルチメディアが豊富に備えられています。



この180メートルの回廊を出る前の最後の停留地は「名前の広間」です。この広々とした部屋には、ホロコーストによって直接影響を受けた人々からの約270万枚のオリジナルの証言ページが収容されています。円形の記念碑に隣接しているコンピューターセンターでは、訪問者の方々がホロコースト犠牲者名簿のデータベースを通じて、犠牲者たちの運命について学ぶことができます。現在、ホロコーストで犠牲になった600万人の死者のうち、約100万人が未だ確認されていない状況です。そのため、ヤド・ヴァシェムのホロコースト研究所では、関連する研究や教育活動を絶え間なく行っています。ヤド・ヴァシェムの映像・学習センターやアーカイブ、図書館も、同様の目的で活用されています。



次に訪れるべき場所は「記憶のホール」。ホロコースト美術館や展示パビリオン、そしてヤド・ヴァシェムのシナゴーグに隣接しており、これらも見逃せないスポットです。ここには、巨大なユダヤの墓石であるマッセバの形をしたコンクリートの屋根付きのパビリオンがあります。入場前には、男性の方々にはキッパと呼ばれるユダヤ教徒の縁のない帽子をかぶるよう案内があります。内部の暗闇は、実際のホロコースト犠牲者の遺灰が安置されている追悼の炎によってのみ照らされています。パビリオンの床には、22のナチスによる虐殺現場の名前が刻まれています。


Kobi Gideon/Government Press Office

狭い空間が連なる場所を抜けると、パビリオンの西側には開放的な空間といくつかのモニュメントがお出迎え。「諸国民の正義の人」とされる人々に捧げられた場所を、ヤド・ヴァシェムではいくつか見かけるかもしれません。これは、イスラエル国およびユダヤ人を代表してヤド・ヴァシェムが、ホロコーストの際に自らの命を危険にさらしてユダヤ人を救った非ユダヤ人に授与される称号です。2022年時点で、この名誉を授与された人々は2万8千人以上に増加しました。その中には、有名なハリウッド映画で称えられた実業家オスカー・シンドラーや、1942年の夏にヨーロッパから逃れるユダヤ人を日本経由で助けるために2,000件以上のビザを発行した外交官である杉原千畝氏も含まれています。


ヤド・ヴァシェムの見どころをほぼ全て巡った後は、最後の感動的な体験をするためにビジターセンターに戻ることをおすすめします。地下博物館の上を通り過ぎ、堂々とそびえ立つ勇気の柱を過ぎた先の道を下ると、そこには岩壁に切り込まれた簡素な洞窟や、その上に突き出た白い柱がいくつか見えます。実は、これはホロコーストで早世したおよそ150万人のユダヤ人の子どもたちを追悼する記念碑なのです。洞窟を歩いていくと、訪問者は彼らの名前、年齢、出身国をヘブライ語と英語で聞くことができます。全ての録音を聞き終えるには、数か月かかることでしょう。



ベン・グリオン空港からヤド・ヴァシェムへ訪れる場合は、まず高速鉄道に乗り、エルサレム行きの列車に乗り換える必要があります。そしてエルサレムに到着したら、市内電車でヘルツェル山のふもとまで向かいます。この旅はおおよそ1時間半かかります。タクシーや車を利用すると、30分程度時間を短縮することもできますが、駐車場の費用が1日あたり28シェケルかかるのでご注意。ヤド・ヴァシェムの敷地内を回るツアーには1日を費やすことがあるため、訪問者は営業時間情報を確認し、できるだけ早く到着することをお勧めします。


住所: Har Hazikaron, Jerusalem 9103401 Israel
メール: webmaster@yadvashem.org.il
電話番号: (972) 2 6443400
Fax: (972) 2 6443569
営業時間: 日曜日 – 木曜日 08:30-17:00、金曜日と祝日前夜: 08:30-14:00、土曜日・ユダヤ教の祝日:休日
入場料:無料

WEB: https://www.yadvashem.org/ 
SNS: facebook / twitter / instagram


この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:ISRAERU編集部翻訳