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イスラエル建国で重要なアトリット被拘禁者キャンプとは?

by クニコ コーヘン |2022年05月27日

建国74周年を迎えたイスラエル。イスラエル建国記念日イブの5月4日には、各都市で様々なイベントが繰り広げられ、夕方には建国記念の風物詩である花火も打ち上げられました。そして建国記念日の当日5月5日は、家族や友人たちと出掛けたり、バーベキューをしたりしてお祝いするのが習わしです。


イスラエル国旗

筆者はイスラエルに長く住んでいますが、イスラエル建国記念日を前に、改めてイスラエルの歴史を学ぶため、現在は博物館として一般公開されているアトリット被拘禁者キャンプ博物館を訪れました。第二次世界大戦前後、自由を求めてイスラエルに避難してきた多くのユダヤ人たちが、被拘禁者としてまず収容されたのがアトリット被拘禁者キャンプなのです。



今でこそ中東のシリコンバレーとして知られるイスラエルですが、独立までには長い道のりの歴史がありました。アトリット被拘禁者キャンプ博物館では、より深くユダヤ民族の歴史を知ることができ、自由を求めて命がけで避難してきた人々の姿を目の当たりにした気持ちになるでしょう。


アトリット被拘禁者キャンプの歴史

アトリット被拘禁者キャンプ博物館があるのは、ハイファの南約20kmの北海岸にある小さな町、アトリット。1930年代後半、委任統治領パレスチナ当局によって、主に公式の入国許可を持っていないユダヤ人とアラブ人を収容するため、強制収容所としてアトリット被拘禁者キャンプは設立されました。


1940年代イギリスの統治下、英国当局は、ユダヤ人の移民を制限するというアラブの要求に応じて、ユダヤ人の入国許可を拒否します。しかし不法移民(マアピリム)として何万人ものユダヤ人難民がイスラエルに到着し、このキャンプに収容されました。1930年から第二次世界大戦終了まで、被拘禁者の多くはドイツ占領下から逃れてきたヨーロッパからのユダヤ人難民でした。最終的にアトリット被拘禁者キャンプは、イスラエル建国まで運営されたとのことです。イスラエルは、こういった難民の人たちの努力によって建国されたと言っても過言ではなく、そのためアトリット被拘禁者キャンプはイスラエル建国の歴史において、非常に重要な意味を持つ場所なのです。



国定記念物として宣言され一般公開へ

そんなイスラエル建国にとって非常に重要な意味を持つアトリット被拘禁者キャンプは、1987年にイスラエルによって国定記念物として宣言され、市民に一般公開されるようになりました。そして現在は、ユダヤ人の移民の歴史に関する博物館となっています。


アトリット被拘禁者キャンプ模型
アトリット被拘禁者キャンプ内模型

アトリット被拘禁者キャンプ博物館の紹介

それではここからは博物館の中身をご紹介!アトリット被拘禁者キャンプ博物館では、当時の収容所の建物を復元した兵舎や、新たな被拘禁者を消毒する部屋、シャワールーム、難民を運んだ船や飛行機などが見学可能。1934年から1948年までのイスラエルの不法移民の歴史について学べるよう、上手く設計されています。



兵舎に入ると、上部に吊るされた袋が目に入ってきます。これは当時、蚤(のみ)や虱(しらみ)を避けるため、持ち物を吊るしたのだそう。


兵舎内
兵舎内

兵舎は板張りのため、暑い夏や寒い冬の生活はかなり厳しかったそうです。兵舎の壁には収容されていた人々の当時の写真が貼られ、また難民たちが自分の消息を家族や友人に知らせるために刻んだ実物の名前や絵が残されており、家族や友人に会いたい気持ちが伝わってきます。



ちなみに兵舎に展示されている衣服や本、人形、日用品、写真は、元収容者から寄贈されています。


衣服を消毒する機械
シャワールーム
当時の難民の様子について語るガイドさん
イギリス兵と難民の人たち

博物館に展示されている写真の中には、難民の人たちの笑顔が見受けられます。これは、たとえどんなに辛い環境下での生活だとしても、イスラエルにたどり着いた喜びから溢れる笑顔です。彼らが辿ってきた長い道のりは、到底私たちには想像できません。


それではユダヤ人難民たちは、どのようにイスラエルにたどり着いたのでしょうか。アトリット被拘禁者キャンプ博物館には、アメリカのユダヤ民族基金のサポートにより寄贈された飛行機が展示されています。



他にも難民を運んできた船「GALINA(ガリナ)」も展示されており、実際に乗り込むことができます。船内には、当時の状況を再現する人形や毛布、バッグなどが展示。航海中を再現するムービーも上映されています。


難民を運んだ船「GALINA(ガリナ)」

船内の様子当時を再現した人形がベッドに横たわっています。

イスラエルは2022年に建国74周年を迎えましたが、独立までの長い道のりを乗り越えて、自由を掴んだ人々とこのアトリット被拘禁者キャンプ博物館で出会えた思いです。そして驚くことに、今回一緒に博物館を訪れたイスラエル人の友人は、兵舎に彼女の祖父と父親の写真を見つけたとのことでした。今回アトリット被拘禁者キャンプ博物館を訪問したことで、改めてユダヤ人の歴史を学び、そしてこのキャンプはイスラエルの建国の歴史において非常に重要な意味を持つ場所であることをつくづく考えさせられました。



アトリット被拘禁者キャンプ博物館

開館時間:午前9時~午後5時(日曜日~木曜日)、午前9時~午後1時(金曜日)

※ヘブライ語と英語でガイドによるツアーがあります。(要事前予約、約1時間)

入場料金:大人 32NIS、子どもおよび高齢者 27NIS

電話番号:04-984-1980

位置:ハイファから南15km、アトリットのダウンタウンから北に3km。ハイファらか車で、国道2号線を南に向かって国道7110号線に乗り30分程度。