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FASHION

一台のミシンがデザイナーへの道の始まり。
イスラエル人デザイナーが語るファッションへのこだわりとは。

ISRAERU 編集部|2020年10月06日

独占インタビュー|リアット・ブレンデル(ファッションデザイナー)


時代を越えて愛され続けるクラシックなデザインをベースに、ミニマルかつエレガントさを表現。世界各地の技術や建築物からインスピレーションを受けたファッションを提供するイスラエル出身デザイナー、リアット・ブレンデル氏のブランドは、イスラエルだけでなく日本でも高く評価されています。今回は、彼女のデザイナーとしての軌跡、ファッションへのこだわり、日本での展示会についてお話を伺いました。


リアット・ブランデル氏

祖母からもらったミシンがきっかけで生まれたファッションへの興味

リアット氏がファッションに興味を始めたのは、若干12歳の頃。祖母から贈られたミシンで、双子の姉妹と一緒に洋服づくりを始めました。最初の頃は、人形に着せるための洋服を作っていましたが、次第に自分自身が着るための洋服やバッグを作り始めます。当時は洋服づくりに使える布が限られていたため、古いシーツやベッドカバーなど、身の回りのものを手当たり次第に集め、洋服を作っていたそうです。


その後、兵役時に受講した縫製コースでパターンメイキングを学んだ後、イスラエルを代表するデザインスクールの一つであるシェンカル大学へ進学し、本格的にファッションデザインを学び始めました。



デザイナー人生に大きな影響を与えた「マークス&スペンサー」でのインターンシップ

シェンカル大学で優秀な成績を収めたリアット氏は、大学3年生の時に、学校の特別インターン制度を利用し、ロンドンの「マークス&スペンサー」でインターンとして働く機会を得ました。これが、彼女のデザイナー人生に大きな影響を与えたのです。


「マークス&スペンサーでのインターン経験は、あくまで大学の授業の一環だったけど、それは私が特権的に獲得した機会だったの。そこでインターンを経験できるのは、シェンカル大学の様々な学科、グラフィックデザイン科、工業デザイン科、宝飾デザイン科、そしてファッションデザイン科からの、ほんの一握りの限られた優秀な生徒たちだけ。私たちのロンドンでの滞在費は、シェンカル大学の基金を使って賄われてたわ。


私が在籍したのは、ロンドンにあるマークス&スペンサーのランジェリー部門ね。今思うと、まるで夢のような経験だったわ。本当に素晴らしい時間でした。インターンの内容は非常に幅広く、生地選定から、準備、組み合わせ、そして色の選択まで、すべての過程を体験させてもらえたの。マークス&スペンサーには番号で管理された色カタログがあって、それぞれの色の調合法までが記載されているのよ。


すべてのインターン過程が非常に興味深いもので、様々なことを学ぶ事ができたわ。イスラエルにいるだけでは絶対に教えてもらえなかっただろうと思われる、実際の作業で非常に役に立つ道具に関する情報も、ここで学ぶ事ができたし。」



卒業制作のコレクションがきっかけで東京デザイナーウィークへ出展

「マークス&スペンサー」でのインターンシップを始め、シェンカル大学でデザイナーとして多くのことを学んだリアット氏。学生生活最後に、新たなチャンスを得ることになります。彼女が卒業制作として制作したコレクションがシェンカル大学で毎年行われるショーに取り上げられ、東京デザイナーウィークでの展示が決定したのです。その時の様子を次のように語っています。


2013年テルアビブで開催されたシェンカル大学卒業制作ファッションショーにて。Photographer: Avi Golren

「卒業制作で作った私のコレクションが、東京デザイナーウィークのオープニングアクトを飾るファッションショーへの出展が決まったの。卒業制作のテーマに沿ってデザインしたプレゼンテーションは、オンラインやSNSで見せていく架空の人格と、本当の自分との間の緊張感をテーマにしたものだったわね。


2013年、東京デザイナーウィークの展示の様子


2013年、東京デザイナーウィークの展示の様子

東京デザイナーズウィークで、日本とイスラエルのファッションの違いを感じたと彼女は語ります。


「日本のファッションは、イスラエルのそれとは相当違うという印象を受けたわ。ちょっと着崩す感じで、より自由に、そしてよりルーズに、生地や素材の成り立ちに沿って着こなしている印象。あまり生地を細かくタイトに裁断せず、それでもそれを体型に合うように着ている感じ。言い方を変えると、生地そのものに寄り添っている感じ、とでも言うのかな。

私たちの西欧的なアプローチでは、自分が予め決めたデザインに合わせて物を形作っていくけれど、日本人はもっといい意味でルーズなアプローチで、素材そのものに沿って物を形作っていくのね。私たちは流行を事前に見極めるわ。それが大きめの素材であれ、細かく体型に沿って刻まれた物であれね。私たち西欧文化は、非対称的なアプローチではなく、対称的な、シンメトリーなデザインを好むのよね。」


もう一つの要素は、紙だけでなく布や木も折り紙のように使用すること。印象に残っているのは折り紙のように折りたたまれた紙のランプとリアット氏は語る。

自分が着ないものは作らない。リアット氏のブランドに対する思いと今後の目標とは。

彼女の服作りへのこだわりは、着ている女性を幸せな気分にすること。欠点をうまく隠し、自慢できる部分を強調して美しく魅せるデザインを常に意識しています。またデザイン性はもちろんですが、実用性にもこだわっており、毎日着られるデザインであることを重要とし、自身も毎日自分のブランドの洋服を着ているとのことです。


「私のコレクションには、自分が着ないような洋服は一つもないわ。サンプルを作るときも、自分で採寸するの。最初は経済的な理由でそうしていたけど、でも時間と共に女性の体は変化するわよね。背も変わるし、妊娠や出産で体型も変わってくる。私自身、そうだったわ。それでね、自分で自分を採寸することがとっても大事なことだっていうのが今では分かってきたの。どこを隠して、どこを強調すればいいか、自分が一番分かっていることだし、だいたい、大学で使っていたモデルのような、胸もぺちゃんこで、やたらと背が高くて、しかもとっても綺麗な人なんて、少なくとも私の周りには一人もいないわ。


2015年イブニングコレクション。仮想アイデンティティと現実的アイデンティティの間に存在する、二次元と三次元の間の緊張について。
Photographer: Lee Agmon, Model: Noemi, Hair: Or Amit Sultani, MU: Eran Israeli

リアット氏は、ブランドの将来について次のように続けます。


「今後の目標は、バッグとアクセサリーのシリーズを完成させること。まずはそこからね。これは高校時代にもやっていたことだけど、私、今でもバッグが大好きなの。


もちろん、未来のコレクションのファッションショーへの出展も夢のひとつ。でも新型コロナの影響で、何がどうなっていくか、ファッションショーもどうなってしまうのか、全く予測がつかないけど。


あと、お店はやっぱり持ちたいわ。自分の家のスタジオではなく、ちゃんとしたコンセプトショップをね。東京に滞在中、プラダとイッセイミヤケのショップを訪ねてみたわ。2つとも、私の修作時代のインスピレーションの源だったお店よ。日本でのショーの一つで、一人の建築家と話をした時のことをよく覚えているわ。彼女、日本人にしては比較的大きい人だったのだけど、それこそイッセイミヤケのスカーフを身に付けていたの。そう、こんな風に、自分の作った服が人々に着られていくようになったら本当に素晴らしいことだなあってその時も思ったのよ。それが常に私の夢ね。」


リアット・ブランデル氏

ウェブサイト:

https://liatbrandel.co.il/


Instagram

https://www.instagram.com/liatbrandel/


Etsy

https://www.etsy.com/shop/liatbrandel/