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FASHION

自己のアイデンティティ、ルーツを反映したタイムレスなデザインで人気を博すメンズウェアブランド「NARGASSI」

インタビュー|デザイナー、エリラン・ナルガッシ氏

by Sara Hamada |2020年08月21日

Photo by Eran Evan

ミニマルなデザインながらも大きな存在感を放ち、さらには神聖な雰囲気を醸し出すメンズウェアブランド「NARGASSI」。イスラエルのベストメンズウェアデザイナーとして選ばれた経験も持つエリラン・ナルガッシ氏が創り出すデザインには、自身のアイデンティティやルーツが大きく影響しているようです。

イスラエルをはじめ世界で最も注目したいメンズウェアデザイナーの一人であるエリラン・ナルガッシ氏に、ブランドの誕生話、デザインに込めた思いなど、お話を伺いました。独占インタビューです。


エリラン・ナルガッシ氏 Photo by Eran Evan

―――今日は、NARGASSIブランドについて色々お話を聞かせてもらいたいと思います。まず最初に、ブランドはどのようにして誕生したのですか?コンセプトも教えてください。


エリラン・ナルガッシ氏(以下:エリラン):NARGASSIを設立したのは2013年の夏ですが、実はその時しっかりとしたプランなどはありませんでした。設立した目的は、新しいメンズウェアブランドに対する興味を図るため、言わばローカルマーケットでの市場調査ですかね。しかしオンランショップが持つパワーの強さに気付き、すぐに私もオンラインショップを作りました。これが功を奏して、ファッション業界に足を踏み入れる手助けとなりました。


何年にもわたり、パリやミラノ、フィレンツェといったファッションの聖地での展示会やショールームに参加しています。美術館でも展示され、コンテストでの優勝経験もあり、その甲斐あって二年連続でイスラエルのベストメンズウェアデザイナーとして選ばれたのです。

またテルアビブファッションウィークや中国北部で開催されるハルビンファッションウィークにもしました。



私のデザインは流行を追いかけません。流行は毎日変わりますからね。長く着られるタイムレスな装いをデザインするようにしています。そしてスローファッションの考えを非常に大事にしています。ファッションブランドは少しスローダウンして、製造量も減らし、環境に配慮し、低賃金労働者を利用せず、人や動物の権利を大切にすべきだと考えていますね。


Photo by Eran Evan

NARGASSIのデザインは、私のルーツや私自身から大きな影響を受けています。東洋人であり、同性愛者である私は、厳格なユダヤ教の家庭で育ちました。時間をかけて、宗教と関係のない生活にも慣れましたが、ユダヤの宗教や伝統、モロッコやクルド系のルーツは、私のデザインに大きな役割を果たしています。過去と現在、古いものと新しいもの、伝統と革新、これらを紐解き一つの遺伝子として洋服に入れるのです。

通常、素材や色、形に映し出されるコントラストを通して、自分のインスピレーションを描き出していますが、着心地の良さは常に重要視しています。



―――自分のブランドを始めようと思ったきっかけは何ですか?また代表作を教えてください。


エリラン:正直に言うと、本当に行き当たりばったりでした。(笑)ファッションの学校を卒業して、地元のファッション会社で働き始めたのですが、とあるアーティストから展示会を計画してるから参加して欲しいと連絡があったのです。参加を決めた私は早速洋服を作り始めました。残念ながら展示会はキャンセルとなってしまったのですが、自分の頭に浮かんだアイディアに圧倒され、そのアイディアを洋服やプリントとして創り出すことを止めることはできませんでした。そこで会社を退職し、自分のコレクションを創り始めました。そして第一弾コレクションを発表すると、ありがたいことにイスラエルだけでなく世界中から多くの反響があったのです。


代表作は間違いなく着物ローブ/コートですね。変化をつけながら、これまでいくつものコレクションで展開しています。個人的に自分との深い繋がりを感じており、シルエットは非常にシンプルながらも、異なる要素を加えることで印象はがらっと変わるのです。あるときはお坊さんのように、あるときはユダヤ教徒のように・・・。試着してみると神聖な気持ちになり、宗教的かつ救世主のように見えます。


Photo by Danny Lowe

―――NARGASSIのファッションはミニマルで上品な印象を受けます。デザインする際のモットーは何ですか?


エリラン:デザインを開始する際は、まずこの洋服を通して何を伝えたいのかを考えています。誰が着るのか、これを着た時にどのような気持ちになるのか、そして自分自身が着たいと思うかどうか。そしてどのようにミニマルなデザインで表現するか。

先ほども言ったように、私のデザインは、自分のアイデンティティやルーツからインスピレーションを受けています。ユダヤ教の中でも特にスピリチュアルなこと、宗教と非宗教、ジェンダーやセクシュアリティのアイデンティティに関する問題など。調和かつ完成されたものを製作する者として、自分を特徴づける対比を繋げるようにしています。


デザイナーとしてのモットーは、感情と愛をこめてデザインすることですね。


Photo by Mor Elnekave

―――どのような人がNARGASSIを着用していますか?


エリラン:お客様のほとんどが、直接的または間接的に美学に関係している人が多いと思います。20代から50代の方に多く着用していただいており、デザインや哲学などの業界に携わる人、スピリチュアルや愛に関係している人が多いですね。ワンシーズンではなく、生涯に渡り着る洋服として購入されているようです。


Photo by Merav Ben Loulou

―――日本を含む海外からもNARGASSIの洋服を購入できますが、日本人の方に着こなしのポイントを教えてください。


エリラン:日本人はミニマルなデザインを好む方が多く、黒、白、グレイなどを使ったモノクロカラーを好む傾向があるので、NARGASSIの洋服を気に入って頂けると思いますよ。アドバイスとしては、1サイズ大きめを選ぶことです!


Photo by Alina Braginski

―――今年は世界中で挑戦の年となっていますが、エリランさんのこれからの目標を教えてください。


エリラン氏:確かに、この一年は世界中どこでも厳しい状況だと思います。

私は、今やっていることを続けていくことができたら、とても嬉しいですね。そしてイスラエルの花婿向けに作っている新しいコレクションも完成させたいと思います。

それと、来年の夏に向けて、メンズ向け水着も作っていこうと考えています。


―――エリランさん、たくさんお話を聞かせていただきありがとうございました!



ウェブサイト

https://www.elirannargassi.com/


Instagram

https://www.instagram.com/nargassi/