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CULTURE

東京パラリンピックにイスラエルから世界レベルの選手が登場

イスラエルパラリンピック委員会名誉会長が語る東京パラリンピック

by ISRAERU 編集部 |2021年08月24日

イスラエルパラリンピック競泳ユリア・ゴルディチョク選手 Photo by Keren Isaacson/IPC
イスラエルパラリンピック競泳ユリア・ゴルディチョク選手 Photo by Keren Isaacson/IPC

イスラエルパラリンピックスポンサーのアンドリュー・ダノス氏は、イスラエルの車いすテニス全国大会で、両足を失った若い南アフリカのテニス選手にトロフィーを渡したとき、パラリンピックの重要性を理解したと言います。


「南アフリカでは、このような障がいを持っていると、路上で物乞いする生活が運命であると彼は私に言いました。しかし車いすテニスが、彼をその運命から救ったのです。そして今、彼はテニスで世界中を飛び回っています。その話は私の頭から離れることはなく、そのとき点と点が繋がったのです。」


このことが起こったのは今から6年前のこと。今日ダノス氏は、イスラエルパラリンピック委員会の名誉会長を務めており、彼のファミリービジネスであるジェームスリチャードソングループは、イスラエルパラリンピックチームのメインスポンサーを務めています。


今年の東京パラリンピックには、イスラエルの多宗教代表団として18歳から55歳までの33名の選手が11競技に出場。8/24の開会式では、ボートのモラン・サミュエル選手とボッチャのナディブ・レビ選手が旗手を務めます。


東京パラリンピックに最初に出場するのは、イスラム教徒の競泳選手、リヤッド・シャラビ選手(33歳)で、9/5最後に出場するのは射撃のユリヤ・チェルノイ選手(41歳)です。


2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場したリヤッド・シャラビ選手とその父親。 Photo courtesy of the IPC
2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場したリヤッド・シャラビ選手とその父親
写真提供:IPC

東京パラリンピックでイスラエルチームを先導するダノス氏は、 6年前にオーストラリアからイスラエルに移民したばかり。祖父はオーストラリアとイスラエルのベングリオン国際空港にある免税店ジェームスリチャードソンチェーンの創設者です。


36歳の時に事業を引き継いだダノス氏は、教育、スポーツ、健康に焦点を当てた慈善活動を行っています。


彼がイスラエルに移住した際、既にイスラエルの車いすテニスを支援していましたが、彼自身が初めてイベントに参加した後、より深い関りを持つことになりました。


そして2019年5月に開催された国際テニス連盟(ITF)主催の車いすテニスワールドチームカップでは、ジェームスリチャードソングループは後援を務めます。


このことで私たちとパラリンピックスポーツとの繋がりはますます深くなりました。」とダノス氏は述べています。


イスラエルパラリンピック委員会名誉会長のアンドリュー・ダノス氏と競泳選手アミ・ダダオン選手、マーク・マルヤル選手
写真提供:アンドリュー・ダノス
イスラエルパラリンピック委員会名誉会長のアンドリュー・ダノス氏と競泳選手アミ・ダダオン選手、マーク・マルヤル選手
写真提供:アンドリュー・ダノス

パラリンピックスポーツとの親交を深めていたダノス氏ですが、イスラエルパラリンピック委員会が彼に名誉会長になることを打診した際は、戸惑いがあったとのことです。


「この話を頂いたときはとても驚きました。名誉会長として私は若すぎるのではないか、それに値しないのではないかと不安もありましたが、引き受けることにしたのです。そしてそれは素晴らしい決断であったと思います。祖父は1956年のメルボルンオリンピックでイスラエルチームの公式特使を務めていたので、ある意味祖父と同じ場所に来た気分です。当時は走り幅跳び、飛び込み、競泳の3人の選手のみの小さなチームだったため、役員を派遣できなかったのですが、今回のように大きなチームとなったことは、私たち家族としても大変うれしく思います。」


目次

輝かしいストーリー

世界12億人の障がい者を代表する新しい人権運動「WeThe15」の設立を記念し、紫色に点灯されたエルサレムのストリングブリッジ
写真提供:Amir Bilu/イスラエルパラリンピック委員会
世界12億人の障がい者を代表する新しい人権運動「WeThe15」の設立を記念し、紫色に点灯されたエルサレムのストリングブリッジ
写真提供:Amir Bilu/イスラエルパラリンピック委員会

ダノス氏は名誉会長として、各地で行われる公開イベントでチームを紹介するため、全国大会に選手たちを同行させますが、過去2年間はパンデミックにより様々な困難がありました。


「パンデミックにおいて誰もが様々な課題に直面しましたが、パラリンピックチームはパンデミックに関わらず、日常生活を送るうえで毎日課題に直面しています。これらの課題の克服方法を知ることは、私にとって、そしてすべての人にとってインスピレーションを得る機会となったと思います。」


イスラエルのパラバドミントンのニナ・ゴロデゼキ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
イスラエルのパラバドミントンのニナ・ゴロデゼキ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

ドロン・シャジリ(射撃)

射撃のドロン・シャジリ選手(54歳)は、8年連続でパラリンピックに出場し、これまで8個のメダルを獲得しています。1987年、兵士だった19歳の時に、彼はレバノン国境近くで地雷により左足を失いました。そして1989年には、テルアビブにあるIDF障がい者退役軍人組織であるベイトハロケムで射撃と車椅子バスケットボールのトレーニングを開始します。


19歳の時に地雷で左足を失ったドロン・シャジリ選手。これまでに8個のメダルを獲得している。
写真提供:Karen Isaacson/IPC
19歳の時に地雷で左足を失ったドロン・シャジリ選手。これまでに8個のメダルを獲得している。
写真提供:Karen Isaacson/IPC

アリエル・マリヤール、マーク・マリヤール(競泳)

20歳の双子の兄弟競泳選手であるアリエル・マリヤール選手とマーク・マリヤール選手は、生まれつき脳性麻痺を患っており、理学療法のため5歳の時に水泳を始めました。マークは2019年の世界パラ水泳選手権で金メダルと銀メダルを獲得し、今年は欧州選手権で優勝を果たしています。


マーク・マリヤール選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
マーク・マリヤール選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

パスカル ラヘル・ベルコビッチ(カヌー)

生まれ故郷のフランスで列車事故に遭い両足を失った パスカル ラヘル・ベルコビッチ選手は、今回4回目のパラリンピック出場です。以前はボートと自転車(Hクラス)の競技で出場していましたが、今回はカヌー競技での出場です。


以前はボートと自転車(Hクラス)の競技で出場していたが、今回はカヌー競技での出場となるパスカル ラヘル・ベルコビッチ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
以前はボートと自転車(Hクラス)の競技で出場していたが、今回はカヌー競技での出場となるパスカル ラヘル・ベルコビッチ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

バシャル・ハラビ(競泳)

26歳の競泳選手バシャル・ハラビ選手は、イスラエルチーム初のドゥルーズ派イスラエル人です。早産かつ難産により、下半身麻痺を患っています。



1964年以来、イスラエルのパラリンピック選手は金メダル122個、銀メダル123個、銅メダル129個を獲得しています。2016年では、ボートのモラン・サミュエル選手、射撃のドロン・シャジリ選手、競泳のインバル・ペザロ選手が銅メダルを獲得しました。


レース終了後のモラン・サミュエル選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
レース終了後のモラン・サミュエル選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

近年イスラエルでは、治療不能な怪我に苦しむ兵士や一般人が少なくなっているというポジティブな理由により、過去に比べてパラリンピック選手が少なくなっていると同時に、競技のレベルが急上昇しています。


パラリンピックはもはや特別なニーズを必要とする人々をサポートするイベントではありません。世界クラスの選手たちが世界レベルで戦うのです。 競泳ではアミ オメル・ダダオン選手、マーク・マリヤール選手、イヤド・シャラビ選手が世界記録保持者です。チーム全体が国と世界を誇りに思っています 」とダノス氏は述べています。


競泳のアミ オメル・ダダオン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
競泳のアミ オメル・ダダオン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

選手が金メダルと獲得するということは、理学療法士、医師、トレーナー、コーチ、サポートスタッフ、管理者など、パラリンピックチームの裏側で働くすべての人が金メダルを獲得することと同様です。


「選手たちを支える人たちの多くはボランティアで活動しており、信じられないほどの努力をしています。これはただ単に刺激的なだけでなく、一人一人が持ち合わせる献身さとコミットメントを示しています。目的と意味を求めるなら、ここで見つかるかもしれません。」


東京パラリンピックイスラエルチーム選手紹介

ニナ・ゴロデゼキ(バドミントン)

ナディブ・レビ(ボッチャ)


東京パラリンピックでイスラエル唯一ボッチャ協議に出場するナディブ・レビ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
東京パラリンピックでイスラエル唯一ボッチャ協議に出場するナディブ・レビ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

リーヒー・ベン ダビド(ゴールボール)

イルハム・マハミッド(ゴールボール)

ロニ・オハヨン(ゴールボール)

オル・ミジラヒ(ゴールボール)

ガル・ハムラニ(ゴールボール)

ノア・マリカ(ゴールボール)

イスラエルチーム最年少の18歳

パスカル ラヘル・ベルコビッチ(カヌー)

ポリーナ・カツマン(パワーリフティング)


1989年、自動車事故で足を失ったパワーリフティングのポリーナ・カツマン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
1989年、自動車事故で足を失ったパワーリフティングのポリーナ・カツマン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

モラン・サミュエル(ボート)

シュムエル・ダニエル(ボート)

アヒヤ・キライン(ボート)

バラク・ハゾル(ボート)

ミハル・ファインブラット(ボート)

シモナ・ゴレン シュトク(ボート)

マーライナ・ミラー(ボート)

ドロン・シャジリ(射撃)

ユリヤ・チェルノイ(射撃)

オレクサンドル・アレクセエンコ(陸上)


砲丸投げに出場するオレクサンドル・アレクセエンコ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
砲丸投げに出場するオレクサンドル・アレクセエンコ選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

マーク・マリヤール(競泳)

アリエル・マリヤール(競泳)

アミ オメル・ダダオン(競泳)

バシャル・ハラビ(競泳)

エレル・ハレビ(競泳)

リヤッド・シャラビ(競泳)

ユリア・ゴルディチョク(競泳)

ベロニカ・グイレンコ(競泳)

カロリン・タビブ(卓球)

アダム・ベルディチェフスキー(車いすテニス)

ガイ・サッソン(車いすテニス)

ヨシ・サアドン(車いすテニス)

シュラガ・バインバーグ(車いすテニス)

イスラエル最年長の55歳


車いすテニスのアダム・ベルディチェフスキー選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
車いすテニスのアダム・ベルディチェフスキー選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

車いすテニスのガイ・サッソン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC
車いすテニスのガイ・サッソン選手
写真提供:Karen Isaacson/IPC

情報提供:ISRAEL21c

テキスト:Abigail Klein Leichman


https://sports.nhk.or.jp/paralympic/