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CULTURE

イスラエルはどのようにしてLGBTQ先進国となったのか

by クニコ コーヘン |2021年06月11日

シャローム  hello こんにちは。イスラエル在住のクニコです。


世界の多くの国でLGBTQに対する認識が高まっている現在。日本でも東京レインボープライドといったLGBTQサポートのイベントが開催され、LGBTQの人たちに対する取り組みがますます活発になっています。また 2015年渋谷区と世田谷区を皮切りに、現在では約30の自治体でパートナーシップ制度が認められるなど、少しずつではあるものの着々とLGBTQに対する理解が深まっています。


そもそも「LGBTQ」とは、セクシュアルマイノリティの総称の一つで、下記セクシュアリティの名前の頭文字を並べた言葉です。


L(Lesbian)=レズビアン

G(Gay)=ゲイ

B(Bisexual)=バイセクシュアル

T(Transgender)=トランスジェンダー

Q(Queer)=クイアー


多くの著名人やインフルエンサーもLGBTQサポートの啓蒙活動を行い、LGBTQに対する関心が世界的に強まっている今。その中でも特にLGBTQに対する理解があり、LGBTQ先進国として知られているのがイスラエルです。宗教や伝統の課題を乗り越え、多くのLGBTQの権利が認められています。


毎年エルサレムとテルアビブでは、盛大なゲイパレードやイベントが開催されており、特に有名なのがエルサレムパレード(2021年6月3日開催)とテルアビブゲイプライド(2021年6月11日開催)です。


テルアビブは中東のゲイの首都としてだけではなく、世界のゲイの首都の一つとして評判が高く、テルアビブゲイプライドには世界各地から25万人以上が訪れます。


ダビデの星が描かれたレインボーフラッグ


イスラエルのLGBTQの歴史

イスラエルでLGBTQの権利が主張されるようになったのは、1980年代初め。イスラエルの政治家であるシュラミット・アロニ氏が、イスラエルの法律におけるLGBTQの権利を主張したことが始まりです。その後多くの議論がなされた結果、1988年に同性愛が合法化されました。1990年代には様々な形態の差別が禁止され、相続、居住、養子縁組など、同性パートナーに対する権利に焦点が当てられるようになりました。


そして2006年には同性による結婚や事実婚が認められ、2008年には同性のカップルが子どもを養子として受け入れ、法律上の家族になれることを裁判所が定めています。


テルアビブゲイプライド
Photo by Mark Neyman/GPO

イスラエルのLGBTQ支援組織と団体

現在イスラエルには約20のLGBTQ組織団体が、それぞれの目的を持って活動しています。これらの団体は主に、セクシュアルアイデンティティに基づくコミュニティの方針や特定の課題に焦点を当てています。


GBTQ関連団体のロゴ

LGBTQコミュニティのメンバーの中には、認識の欠如による迫害やアイデンティティを隠す必要性などを経験してきた人も多く、これらに対して声を上げることでコミュニティの成長に大きな影響を与えました。


そして彼らの継続的な活動の結果、公的認証制度や先述した同性愛を禁止する法律の撤回、議会や地方政府におけるLGBTQ代表の増加、性的嗜好に関する若者のための教育的枠組み、LGBTQ関連イベントの企画、組織の強化・安定化、メディアにおける個々のカミングアウトなど、多くの成果を上げています。


テルアビブゲイプライドの写真

自身もゲイであることをカミングアウトし、LGBTQをサポートする政治家

LGBTQ先進国のイスラエルでは、LGBTQをサポートする活動や支援団体が数多く存在しています。イスラエルの政治家アミール・オハナ氏は、LGBTQサポート活動に熱心なことで知られており、また自らゲイであることをカミングアウトしたイスラエル初の政治家でもあります。彼は弁護士そして公安大臣でもあり、以前は法務大臣を務めていました。


アミール・オハナ

オハナ氏はパートナーであるアロン・ハダット氏について「私の人生の中で最も愛する人です」と語り、彼らには代理母から生まれた双子の息子と娘がいます。そして自らを「セファルディ出身のユダヤ人、イスラエル人、同性愛者、リクード(イスラエルの政党)、防衛軍人、社会自由主義者、そして自由市場の擁護者」であると説明しています。政治家として自分自身をここまで公然と表現できる人は、なかなかいないでしょう。


このように、政治家も自分のセクシュアリティを隠すことなくカミングアウトできる国、これがLGBTQ先進国イスラエルです。ここまでの道のりは決して容易なものではありませんでしたが、諦めずに声を上げ続けたことで人々の理解が深まり、ゲイの首都として認識されるまでになりました。今後も彼らの活動が大きく成長していくことを期待しています。


それでは、次回をお楽しみに!レヒトラオット!さようなら!