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CULTURE

エルサレムから京都へ。イド・タットナーワーさんが見た日本とイスラエルの共通点とは。

by ISRAERU 編集部 |2023年04月06日

イスラエル、エルサレム出身のイド・タットナーワーさんは、同志社大学で日本語とビジネスを学ぶ留学生。なぜ日本に来たのか?日本についての印象は?お話をお伺いしました。


イド・タットナーワー
同社社大学イノベーション・コミュニティー創設者
文部科学省奨学生として同社大学在学中
ヘブライ大学(エルサレム)経営学部アジア研究科在学中


──今日はよろしくお願いします。まずイドさんについて教えてください。


イド:現在、奨学金プログラムを利用して同志社大学で学んでいます。ヘブライ大学に在籍していたのですが、日本でリサーチをしたかったので、このプログラムに参加できたことは幸運でした。


同志社大学では、日本語とビジネスアドミニストレーションを学んでいます。主に日本語の勉強に集中していますが、その間に自分のリサーチも行っています。



──何についてリサーチしていらっしゃるんですか?


イド:日本とイスラエルの経済です。(日本とイスラエルの関係は)過去数年で成長しており、特にイスラエルのテクノロジーやさまざまな方面での投資が盛んになっています。私のリサーチの目的は、日本とイスラエルのビジネス文化の問題点を理解することです。イスラエル人は日本のビジネスマナーについてよく知りませんし、その逆も言えますね。日本のビジネスマナーを理解していれば、もっと改善していけると思うんです。


すでに日本に5ヶ月滞在していますが、もっともエキサイティングなことの一つは同志社大学のサークル活動。日本のサークル活動は私にとっては真新しいです。


毎月、総合商社など日本の大企業から人をお呼びして、どんな挑戦をしているのかお話していただきます。



──たくさんの学びがありそうですね。ところでイドさんはなぜ日本に興味を持ったんですか?


イド:日本に興味を持つ外国人は、多くはアニメや漫画などのポップカルチャーから入る人が多いのですが、私の場合は少し違います。イスラエルには兵役があるのですが、そこで3年間、戦場カメラマンをしていました。その間に使ったカメラがすべて日本製だったんです。


──ああ、CanonやNikonといったような。


イド:はい。それで、なぜ?と疑問を持ったのがきっかけでした。なぜ日本はテクノロジーが発見しているのか。車など、他にも興味深いものがたくさんあります。それで、日本を訪れてみたいと思うようになりました。


兵役を終えてから、4ヶ月の東アジア旅行に出ました。スリランカから始まりインド、最後はハワイへ行き、そしてイスラエルに戻りました。中でも感銘を受けたのはやはり日本だったんです。



日本の面白いところは、最先端技術(cutting-edge technology)と歴史を感じられるディープなカルチャーが融合しているところです。新幹線が走っている一方で、寺院がある。そんな日本の文化に感銘を受けて、日本語を学ぼうと思いました。縄文時代から明治革命、現代の政治や法律、社会問題まで、学ぶものがたくさんあります。



──イドさんはエルサレム出身ですよね。エルサレムにも長い歴史があるのでは。


イド:そうですね。イスラエルは強いユダヤ教のバックグラウンドを持ち、ほかの伝統宗教も混ざり合っていますが、日本ほど素晴らしい調和はとれていないのです。


──日本とイスラエルの文化の違い、また類似性はどんなところに感じますか?


イド:イスラエルが日本と異なる部分は、多民族国家であることだと感じています。ユダヤ人は2000年前に世界中に離散(ディアスポラ)し、その間もユダヤ教の祝日などは守ってきましたが、それぞれ異なった文化圏で生活してきています。ですから、みんな違う歴史を持っているのです。イスラエル人同士でも、「そんな祝日があるの?」ってなったりしますよ。


私自身の家族についても、母親はイスラエル生まれ、母方の祖母はイラク生まれ、父はアメリカ生まれです。みんなそれぞれ、独自の食文化など異なったカラー、アイデンティティを持っています。対して日本は長い歴史があり、全員が同じ土台を共有している。そこが大きな差ではないかと思います。



──日本の生活はどうでしょう?嫌だなと思うところ、逆に素晴らしいなと思うところは?


イド:正直に言って、嫌な思いをしたことはありません(笑)。大好きな所は、やはり京都ですね。この場所に1年間住むことで、日本人の考え方や、ディープな文化について学べます。多くの寺院は歴史的な建築であると同時に、近代に繋がっているとも感じます。



京都とエルサレムは似ているかもしれません。両方ともコンパクトな街でありながら長い歴史を持っており、国際的です。エルサレムにはイスラエル人もパレスチナ人もいますし、アルメニアやエチオピアから来た人もいます。旧市街にはさまざまな宗教の指導者もいます。彼らと接していると、みんな一人の「人」であることを思い起こすんです。


また、音楽などの文化から日本について学ぶことも多いですよ。今度、石川さゆりのコンサートへ行こうと思っています。演歌からJ-Pop、また茶道や生け花など。裏千家の茶道体験もしました。いろいろな文化を体験して、日本を理解しようとしています。



日本人と話していると、よく「日本は小さい国ですから……」と謙遜されるのですが、とんでもない。1.2億の人が住んでいて、国土はイスラエルの16倍です。どうもみなさん、イスラエルが四国のサイズしかないということがイメージしづらいみたいですね。


──多くの日本人はイスラエルのことをよく知りませんから。日本のイスラエルに対する印象はどんな感じですか?


イド:一般的な日本人がイスラエルについて持っている知識の8割はニュースで流れていることですね。主に治安情勢についてです。ビジネス分野の方はその他のことについてもご存知の方が多いですね。食文化や自然、イノベーション、またイスラエルのアカデミックな分野などについてでしょうか。


最初にもお話しましたが、ビジネスでコラボレーションを進める上で、文化的な側面について知っていることはとても重要だと思います。


──その通りですね。ISRAERUとしても、もっとイスラエルのいろいろな側面を知ってもらいたいと思っています。イドさんの今後の展望は?



イド:1年間のプログラムを終えたらイスラエルに帰国する予定です。2つやりたいと思っていることがあって、1つめは、同志社大学のサークルを存続させること。ポーランドやドイツなどさまざまな国から参加しています。帰国してからも繋がりを持って、各国の架け橋になりたいと思っています。同志社大学は100年以上の歴史を持ちますが、そこで40年教鞭をとっている私の指導教授は、外国人がこのようなサークル活動をしているのを初めて見るとおっしゃっていました。


2つ目は、リサーチを進めることです。経済的なパートナーシップを築くには、日本とイスラエルについてよく理解するのはもちろん、韓国やドイツなど他の国についても学ぶ必要があります。


可能なら日本の大学院で学び、いずれは外交関係の仕事に就いてみたいですが、それはずっと未来の話かな。



今後ますます深まっていくイスラエルと日本の関係性。お互いまだ知らないことも多いなか、次の世代が相互理解を深めていくことは重要です。イスラエルと日本の架け橋になりたいというイドさんの今後を応援しております。