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The Tokyo Art Exhibitionでイスラエル人アーティストのテッド・バールが日本初展示|5月27日(木)~30日(日)

by ISRAERU 編集部 |2021年05月25日

5月27日(木)~30日(日)までelephant STUDIO(渋谷)で開催される「The Tokyo Art Exhibition」に、イスラエル人アーティストのテッド・バールが参加し、日本で初展示を行います。本展覧会は国内外の現代アーティストのオリジナル作品を集めたグループ展で、40名を超える国際的なアーティストの作品が展示・販売されます。


イスラエル人アーティスト、テッド・バールとは

テッド・バール写真

ルーマニアで生まれたテッド・バールは、4歳の時に家族と共にイスラエルへ移住しイスラエルで育ちました。1975年にイスラエル軍に徴兵され、約26年間にわたり従事。1992年にイスラエル大隊司令官アカデミーを卒業し、少佐として副大隊司令官を務めます。


象徴主義や仏教、古代エジプト、数秘術、カバラ(ユダヤ教の伝統に基づいた神秘主義思想)といった分野に関心を持ち、7年間にわたり研究を続けたテッド・バールは、1995年から約7年間、イスラエルの巨匠シュロモ・ツァフリルの下で修業。2001年にはテッド・バールにとって初となる展覧会を開催しました。


その後、ニューヨーク、モントリオール、パロアルト、ペルージャ、グアダラハラ、デトロイト、キアンチャーノテルメ、カンヌ、マイアミ、トロント、ベニス、カトマンズ、ジャイプール、ウダイプール、ベルリン、ムンバイ、ダラス、デリー、パリと多くの場所で作品を展示しています。


テッド・バールの作品は、深宇宙と天体の要素、生命の始まり、胚、卵子、そして胎内写真で有名なスウェーデンの写真家レナート・ニルソンの作品にインスピレーションを受けた子宮内の胚の発達といったことを主要概念としています。



多くのアーティストはキャンバスに署名を入れますが、テッド・バールはあえて署名を入れていません。その代わりに、彼の難解な研究内容が詰まった著書「FLY」に描かれている、彼の人生の哲学を示すシンボルを使っています。


テッド・バールのアートの誕生

テッド・バールは、色や形が自己表現の一部となるまで、15年以上が掛かったと述べています。著書「FLY」では、私たちが存在する場所について、広大で暗い宇宙の中で輝く存在として記述し、挿絵を描き始めたときには星や銀河がキャンバスに舞い降りたのことです。


そして写真家レナート・ニルソンが撮影した胎内写真を初めて見たとき、星と卵子、彗星と精子、胚と銀河の類似性に衝撃を受けたテッド・バールは、自身の表現を用いて人の始まりについて描きました。


こうして深宇宙を描く「ディープスペース」と人の始まりについて描く「ヒューマンフォーメーション」の2つのシリーズから、現在の作品である「サイクルオブライフ」が誕生。彼の信念において生と死は同じ線上にある存在で、「そこ」にはありません。



FLYとは


テッド・バールは「Free the Life within You(略してFLY)」という手段を用いて作品を制作しています。FLYとは、あえて境界線を越え、自発的に、予測できないプロセスでオイルとアクリルをコールタールと混ぜ合わせ、予期せぬ結果を受け入れる自由という方法です。アートを創り、教えることは、世界を啓発するための共同的な努力であるという信条の下、2009年以来、世界中でこのFLYワークショップを行っています。2016年からはインドとイスラエルの学校、アートスクール、大学と提携し、学校を対象としたFLYワークショップを行い、生徒の創造性と本物の自己表現を強化しています。



テッド・バール作品紹介

それではテッド・バールの作品をいくつか紹介していきましょう。


ディープスペースシリーズ

ANDROMEDA GALAXY / Ted Barr / 2008
ANDROMEDA GALAXY / Ted Barr / 2008

250万光年離れた天の川に最も近い銀河、アンドロメダ。そこには天の川の4倍以上にもなる約9億個の星が存在します。40~50億年後には、アンドロメダと天の川が衝突しますが、テッド・バールはそれまで生き続け、この衝突を描くことを望んでいます。


サイクルオブライフシリーズ

COL HAPPINESS / Ted Barr / 2010
COL HAPPINESS / Ted Barr / 2010

この作品でテッド・バールは、人の人生は始まりも終わりもない旅にすぎず、限られた短い身体的具体化と、独自のサイクルを持つ私たちの永遠の精神との間には違いがあるという信条を表現しています。


またテッド・バールの作品は絵画に限らず、ファッションや自動車、建築、インテリアなど、様々な媒体を使って制作しています。


テッド・バールデザインの水着


テッド・バールデザインの建築

テッド・バールデザインの家具

テッド・バールが語るThe Tokyo Art Exhibition

今回The Tokyo Art Exhibitionでの出展にあたり、テッド・バールはキュレーター、ナタル・ヴァルヴェ氏とのインタビューで次のように述べています。


ナタル・ヴァルヴェ(以下:ナタル):The Tokyo Art Exhibitionの出展される作品について教えてください。


テッド・バール(以下:テッド):日本のオーディエンスの好みに合わせて、これまでの作品の中からベストな作品を3つ選ぶのはとても難しい選択でしたね。日本で初めての出展ということでとても迷いましたが、最終的にメインのシリーズであるヒューマンフォーメーション、ディープスペース、サイクルオブライフから各1点ずつ選ぶことにあしました。


Embryo's Hand Formation(胚内での手の形成)」は、レナート・ニルソンの写真にインスピレーションを受けて制作した「ヒューマンフォーメーション」シリーズの最初の作品です。精子と卵子から人間を創り出す神様によるコーディングから、生命の魔法が始まるのです。通常妊娠9週目から手の形成が始まり、5週間以内に完成します。妊娠3か月目には手と指が完全に完成するのは圧倒的です。


(サイズ:150cm x 150cm、キャンバス、オイル、タール、アクリル)


Stephan's Quintet(ステファンの五つ子銀河)」は、ハッブル宇宙望遠鏡の写真からインスピレーションを受けた、「ディープスペース」シリーズの作品です。幼い頃から満天の星空に魅了されていた私は、広大な宇宙の中で、人間としての自分の役割は何なのか、何が理由で何のために存在するのかを自問自答しています。

ステファンの五つ子銀河は、3億光年先にあるペガサス座の方角に見える銀河です。これらの銀河は大規模な宇宙での衝突により、巨大なブラックホールを引き起こすとされています。


(サイズ:200cm x 150cm、キャンバス、オイル、タール、アクリル)


Happiness(幸福)」は、「サイクルオブライフ」シリーズから選んだ作品で、カバラ(ユダヤ教の伝統に基づいた神秘主義思想)の言葉である「上記のように下記のように」からインスピレーションを受けています。これは、私たちが地球で経験すること全ては、存在自体よりも高い次元にあり、それには始まりも終わりもなく、”生命”という肉体と共にあること、”死”という肉体を離れることの流れが永遠に続くということを意味します。

幸福は弓と矢のシンボルであり、弓は物理的な地面を表現し、矢は精神的な発達の目標を表現しています。


(サイズ:150cm x 150cm、キャンバス、オイル、タール、アクリル)


ナタル:アイディアから作品として作り上げるため、どのような過程を経ていますか?


テッド:毎朝、太陽が昇る前に起床し、描くオブジェの形や色、サイズを想像します。そして作業服をまといスタジオに向かい、キャンバスを選んで作品を創り出しています。

時には何も浮かばない時もありますが、その場合もとりあえずスタジオに向かい、椅子に座って瞑想、熟考、反芻(はんすう)し、何かが表れるのを待つのです。それでも何も思い浮かばない時もありますね。その場合は、無理やり何かを創り出そうとはせず、真っ白なキャンバスを家に持ち帰ります。時として小さな火花がクリエイティブな反応の連鎖に火をつけ、その形や姿がキャンバスに舞い降りることもあります。これは理想的な状態で、より良い作品を生み出すこととなるのです。


しかし、スタジオに到着したとき、完全に迷い疑いに満ちていると感じる第三の心の状態があります。全ての努力は、問題は、何を求めて世界旅行をし、果たして価値があるのか、といった状態です。ほとんどの場合、この状態では作品が作れませんが、何かがきっかけでこの状態から脱却したとき、それこそが最高の作品を創るタイミングであると考えています。


ナタル:今日の様々な社会的トピックにおいて、アートおよびアーティストはどのような役割を果たしていますか。


テッド:アートは国際的な言語であり、地球の反対側の人々が私の作品や著書に触れていただいてるのを見ると、とても驚きます。美しさや流れ、調和などは普遍的な価値があり、アートを通じて宗教や国籍に関係なく鑑賞することができるのです。私が実施しているワークショップでは、様々な人々や社会が混在する傾向があり、アートは人々を結び付け、共通のクリエイティブプロセスが世界中の人間同士のギャップを埋めることができると発見しました。



ナタル:お気に入りのアーティストを教えてください。


テッドアンドリュー・ワイエスが好きですね。彼の「クリスティーナの世界」という作品は、私に多くのインスピレーションを与えてくれます。MoMAに訪れると、彼の作品の前で一日中過ごすことができます。とても小さな作品ですが、その小さな作品からは力強い感情が溢れています。

またサイ・トゥオンブリーも好きなアーティストの一人です。彼からミニマリズムとシンボリズムという領域を学びました。


The Tokyo Art Exhibition

The Tokyo Art Exhibitionポスター

日時:2021年5月27日(木)~30日(日)

会場:elephant STUDIO(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-7-4 elephant STUDIO)

参加アーティスト一覧はコチラをクリック


残念ながら今回はCOVID-19の影響でテッド・バールの来日は叶わず、バーチャルでの作品展示となりますが、彼の日本初展示をぜひ楽しんでください。


https://www.tedbarrart.com/