シャローム hello こんにちは。イスラエル在住のクニコです。
イスラエルには多くの才能あるイラストレーターが存在しますが、今回はまるで夢の世界のような可愛い絵本のイラストレーターであり、国際児童書作家・イラストレーター協会イスラエル支部(SCBWI)のコーディネーターをされている、シルリー・ワイスマン(Shirley waisman)さんにインタビュー。日本での留学経験も持つシルリーさんに、これまでの経歴、日本滞在時のこと、イラストレーターとしての思いや制作過程、今後の目標などお話を伺いました。
―――シルリーさんはとてもかわいいイラストを描かれていますが、いつからイラストを描き始めたのですか?
そうですね、5歳ぐらいからでしょうか?物心のついたころから、いつもイラストを描いていました。ピアノ、バレエ、ジャズなどを小さいころから習っており、アーティスティックな環境で育ってきたことが影響しています。また2人の兄が舞台監督、俳優という環境も影響していますね。
―――イスラエルで有名なベツァレル芸術大学デザインアカデミーで学ばれていますが、それまでの経緯を聞かせてくれますか?
ベツァレル芸術大学デザインアカデミー入学までは長い道のりでしたね。まずテルマ・ヤリン アートスクール(高校)にて、アート・彫塑を学んで基礎を固めました。その後軍隊の2年間で、コンピューターデザインを習得し、軍隊終了後にアブ二・カレッジでデザイン、絵画を2年間専攻しました。最終的にベツァレルデザインアカデミーに入学し、その4年間でデザイン、メディア、イラストレーションを専攻しましたが、この時点ではまだ絵本のイラストレーターになることは考えていませんでした。
―――幅広くアートを学ばれているのですね。ベツァレル芸術大学デザインアカデミーでビジュアルコミュニケーションの学士号を取得後、日本の文科省から奨学金を授与されているようですが、その経緯も教えてください。
まず、ベツァレル芸術大学デザインアカデミー在学中、現在の日本人の夫との出会いが大きな起点となります。彼を通して日本のアートの素晴らしさを知り、日本で勉強したいと思いました。日本の文科省は1年に一度、世界中からそれぞれのカテゴリーにおいて4~6人の優秀な人たちを選抜して奨学金を提供し、研究生として2年間日本で学べる制度があります。カテゴリーの種類は文学、科学、経済、化学、アート、スポーツなどです。私はイラストリサーチの分野で応募しました。そしてイスラエルからの選抜6人の中に選ばれたのです。
―――日本に数多く存在する大学の中でも、九州大学を選んだ理由は何ですか?
現在のシステムはわかりませんが、当時は学生が自分たちで受け入れてくれる大学を探し、指導教官を見つけないといけませんでした。私も日本中の大学に問い合わせをしたところ、九州大学(当時は九州芸術工科大)が受け入れを許可してくれたのです。
―――九州大学での2年間で影響を受けたことなんでしょうか?
日本の伝統文化に大きな影響を受けました。東洋と西洋の文化の違い、芸術におけるテクニックの違い、アイデア、マインドの違い、日本の持つ美学などすべてが興味深く、すべてに影響を受けましたね。例えば書道や水墨画、浮世絵、能芸術などです。
―――インスピレーションを受けた日本のアーティストはいますか?また絵本のイラストレーションを描き始めたのはいつからですか?
日本のアーティストで福岡出身のまちゅまゆさんという方と知り合いになり、彼女から大きな影響を受けました。
絵はずっと描いてましたが、イラストはベツァレル在学中から徐々に描くようになりましたね。
また日本に留学中にハンガリーの女性と友達になり、彼女のお姉さんがハンガリーの出版社勤務だったこともあり、卒業作品の1冊がハンガリーで出版されました。
―――子どもの絵本のイラストを描く上で難しい点、気を付ける点などはありますか?
イラストを描く上で、私自身が楽しんで描いてるかと言うことですね。私自身が楽しんで描いていると、子供も読んで楽しくなる。子供はとても敏感ですからね。気を付けているのは、イスラエルはユダヤ教の国なので宗教的タブーがあり、そこは守って製作しています。また世界中からユダヤ人が帰還しているので多様性を取り込むことは重視していますね。
―――作者の気持ちが子どもに伝わる、とてもわかる気がします。絵本を出版するまでに、どのような過程を経ていますか?
まず出版社、エージェント、または個人作家から依頼を受けます。契約後、テキストを読み、コンセプトをまとめ、ページを分割し、ストリートボードにキャラクターをスケッチしていきます。
修正、編集を得て最終的に印刷、出版となります。
―――現在は国際児童書作家・イラストレーター協会(SCBWI)イスラエル支部のイラストレーターコーディネーターとしても活躍されていますが、どのような仕事でしょうか?
国際児童書作家・イラストレーター協会(SCBWI)はアメリカ基盤の協会です。ボランティアとして働き始めた後、コーディネーターに選ばれました。活動内容としては、アメリカの出版社・エージェントとイラストレーター達とのZoomミーティングをアレンジします。またイラストレーターたちの批評ミーティングもアレンジします。批評ミーティングはイラストレーターにはとても大切で、自分ではわからない部分を他人が見て助言を与えるミーティングです。これはテクニックが進歩する上で重要なプロセスなのです。
―――批評ミーティング、ちょっと勇気がいりますね。現在多くの人がオンラインでメディアと繋がっており、読書をすることが少なくなってきていると思いますが、この点をどのように考えますか?
信じられないかもしれませんが、実は書籍の世界は広がっているのです。しかし以前のように、多くの文字の中に部分的にイラストがあるのではなく、よりビジュアル(視覚的)な書籍になりつつあります。即ち、より多くのイラストの中に文字があるような形です。これは子供用の書籍に限らず、大人の書籍にも言える事です。
―――確かに最近は大人向けの絵本も出てますよね。ちなみにシルリーさんは3人の男の子のお母さんでもありますが、お子さんはお母さんが素晴らしいイラストレーターであることに対してどのように感じているのでしょうか?
いつか、息子のサッカーチームTシャツのイラストをデザインしたら、”お母さんはすごいイラストレーターだけど、こんなに素敵なデザインも出来るんだ、すご~い!”と感激していました。こういう瞬間は嬉しいですね。
―――キャリアと主婦を両立する上で、家族のサポートはありますか?
主人もデザイナーなので、アドバイスをいつも受けています。共同事業をしている感じですね。家事や子育てもシェアしながらやってます。現在修士課程もやっているのでたくさんヘルプしてくれます。
―――お互い支え合っているのですね。それでは最後に今後の目標を教えてください。
将来は自分でお話を書いてそれに自分でイラストをつけて、日本や世界中に出版したいです。
シルリー・ワイスマン
イラストレーター、国際児童書作家・イラストレーター協会SCBWIイスラエル支部イラストレーターコーディネーター
イスラエル生まれ。テルアビブ在住。イラストレーター。創造性あるイラストを児童書並びに多くの書物に導入。50冊以上の彼女のイラスト入り書物を出版。Bezalel Academy of Arts and Design, (ベツァレル芸術デザインアカデミー)でビジュアルコミュニケーションの学士号取得。日本で児童書イラスト研究のための文部省より2年間の奨学金取得後、九州大学入学。ユニークな彼女のスタイルは多くの作家を惹きつけ、書籍イラストレーターとして起用される。現在多くのプロジェクトのイラストレーターとして活動する。
https://www.shirleywaisman.com/
いかがでしたか?シルリーさんの描くイラストはとても夢と愛のある暖かなイラストだと思いました。日本の影響を多く受け、西洋と東洋の文化を合体させた、イラストレーション。今後のシルリーさんの活動を期待いたします。それでは、次回をお楽しみに!レヒトラオット!さようなら!