創業者細貝氏の経歴
細貝氏は、成蹊大学卒業後、富士通グループで電池やエレクトロニクス部品・素材を扱うFDKに入社、購買や海外営業を担当しました。細貝氏は大学では経済学部出身で技術には明るくなく、FDKのハイテク製品・技術のことがあまりわからなかったと言います。自分で理解・納得出来る仕事をしたいという思いから32歳でFDKを退職し、カイコーポレーションを起業しました。トヨタ関連企業に勤める親戚がオゾン生成器を扱っていたので、その代理店という形で事業をスタートしたのです。そのころのオゾン生成器は、オゾン(O₃)の気体を作り、それを水に溶解させて除菌や洗浄に使うオゾン水をつくるための装置です。水中では、強力な酸化作用を起こすOHラジカルが生成されるので、その酸化作用で殺菌ができるのがオゾン水です。もともと水と酸素なので、化学薬品を使う殺菌よりも安全であり、産業用だけではなく家庭でも使われるようになりました。当時の機器が生成させるオゾンの量は、500mg/時間から1000mg/時間程度であるのが一般的でした。
Ecozone Technologies社との出会い
2008年の春、細貝氏は、日本とイスラエルの橋渡しをする仕事をしている、I.J. Business Do Ltd.のヨシ・シャローム(YOSI SHALOM )氏の紹介で、イスラエルでプラズマオゾンによる脱臭装置を開発しているエコゾン社の創業者、ウリ・バスタン(Uri Bustan)氏に出会います。ウリ氏は日本進出を考えており、製品を担いで日本にやってきました。ウリ氏は、同様のオゾン生成器の事業をしている日本企業を複数訪問し、代理店になってもらおうとしましたが、どの企業も彼らの製品には魅力を感じませんでした。というのも、エコゾン社の機械は、12000mg/時間という、既存製品の10倍から20倍の大量のオゾンを発生させる能力があったのですが、当時のオゾン機器業界はオゾン水を活用することが主目的でオゾンエア(ガス)の活用法の知見、ノウハウ等がありませんでした。その為、ECOZONE社の製品に可能性を見出すことができなかったです。
カイコーポレーションは営業会社だったので、ウリ氏にこのパワフルな装置の使用目的を訊ねたところ、「消臭」に使うということでした。当時日本では「消臭」といえば、芳香剤のような商品か、臭いの元になる汚れを除去する清掃事業の一部、として考えられており、消臭そのものを事業として行う会社は数社しかなかったそうです。ところが、2008年8月に帝国ホテルで火災が発生しました。本館2階の倉庫部分で出火し、500人避難したということで大きなニュースになりました。この倉庫は最も大きな宴会場富士の間と厨房に隣接しており、鎮火後も富士の間に刺激臭が残ったため、帝国ホテルからそのうちの一社に消臭作業の依頼があったそうです。しかし、彼らの保有する装置では広い宴会場を消臭するための能力が足りませんでした。彼らからの依頼で、カイコーポレーションが預かっていたエコゾン社の装置を貸し出したところ、なんと1週間でその刺激臭が消え、その威力が実証されたのです。
今までになかった市場を作る
消臭というビジネス分野があることを理解した細貝氏は、意欲的に動き始めます。まず、ガスクロマトグラフィーを利用して、様々な臭いの中にはどのような成分が含まれるかを分析し、それぞれの成分がどれくらいのオゾン量で分解出来るのかを体系的に調べました。今まで経験値でしかなかったことを科学的に実証していきます。そして、短時間で強力に脱臭できるエコゾンの装置を使った方法に、OST(Ozon Shock Tereatment)法 という名前をつけ、かつ、日本除菌脱臭サービス協会という社団法人を立ち上げて、OST法を協会認定手法として普及活動をはじめました。現在では300社の協会会員がいるそうです。
高齢化社会が進む日本では、残念ながら孤独死やゴミ屋敷の問題が年々増えてきています。これらの現場を片付ける特殊清掃という事業分野がありますが、いくら現場を清掃しても臭いの問題は残ってしまいます。また、自然災害大国日本では、各地で集中豪雨による土砂崩れや浸水などの災害も毎年発生しています。夏場の災害現場では、復旧までの間にカビや悪臭と戦わねばなりません。つまり、従来余り考えられてこなかった、除菌・消臭という領域で、特殊清掃という市場を強化するソリューションをカイコーポレーションは手にしたのです。
コロナ対策にも貢献
昨年来の新型コロナウイルス問題でも、オゾンに注目が集まりました。奈良医科大学は、1ppmの濃度のオゾンに60分間晒すことで、ウイルスがほぼ不活性化するという論文を発表しました。また、藤田医科大学も同様の研究で、人体に安全な低濃度オゾンガスで新型コロナウイルスを不活性化出来るという研究結果を発表しています。これらの研究により、一躍オゾンへの注目が集まりました。TVのニュースでも良く見かけますが、感染者が出た介護施設、症状の無い(軽い)陽性者が一時滞在したホテル、など、関連施設は都度消毒されています。其の時に、エコゾン社のオゾン発生装置が活躍するようになったのです。エコゾン社の装置を用いた消毒の様子を伝えるこちらのビデオを参照ください。
その結果、カイコーポレーションの売上は大きく伸びているそうです。イスラエルの技術及び、カイコーポレーションの開発したソリューションが新型コロナウイルス対策にも役に立っているということは、イスラエル関連コミュニティにとっても嬉しいことです。
日本のノウハウを世界に広める
もともと消臭という目的で技術開発したエコゾン社のあるイスラエルは、国民の中央年齢がまだ30.1歳という若い国であり、孤独死のような社会問題にはまだ直面していません。消臭という枠を超えて災害復旧(水害、火災)、気候変動に伴うカビ菌処理、ウイルス対策。これまで想定していなかったニーズが拡がり顕在化してきました。細貝氏は最適な機器(ハード)+ノウハウ(ソフト)が車の両輪になり、ソリューションビジネスとして、世界に発信していけるのではないかと考えているそうです。
エコゾン社と出会った頃は、細貝氏にとってはイスラエルという国はとても遠く、イランやイラクのあたりにあるのだろう、という程度の認識しかなかったそうです。ただ、昔から、日ユ同祖論やユダヤ、イスラエル関連の本は良く読んでいたそうで、日本の文化に溶け込んでいるイスラエルの影響の大きさに興味を持っていたと言っていました。其の意味でも、細貝氏はエコゾン社との出会いは運命だと考えているそうです。この運命的な出会いが、今後も大きく展開してゆくことが期待できそうです。
カイコーポレーション