Share

BUSINESS

いじめられっ子が医療技術起業家として成功を収めるまでの道のり

人生は学校で終わらない。いじめを体験した起業家が若者に伝えたいこと。

by ISRAERU 編集部 |2021年11月17日

Shilo Ben Zeev氏とDavid Baram氏の写真です。白衣を着ています。
Shilo Ben Zeev氏(左)、Emendo Biotherapeuticsの共同創設者兼CEOのDavid Baram博士。(写真提供:Shilo Ben Zeev氏)

成功を収めている他のイスラエルのスタートアップ起業家とは、異なるシロ・ベン・ゼエヴ氏。


何が違うかというと、彼はボーイスカウトのリーダーでもなければ、エリート軍諜報部隊にも属しておらず、大学の学位も持っていません。実を言うと、高校を卒業するのも大変でした。


彼の幼少時代は良い場合で無視、最悪の場合いじめられるという、とても多くの苦難に直面してきました。


「私は太っていて、健康上の問題を沢山抱えていました。友達もおらず、父は私に期待していませんでした。こういったことから、私は本当に良い学生になることはできませんでした」とエルサレムの信仰の厚い家庭で育ったゼエヴ氏は言います。


高校卒業後、ゼエヴ氏は体重制限により軍の入隊を拒否されます。兵士になることを決意し、7ヶ月間の厳しい食事療法を行い40キロの減量に成功した彼は、初めて本当の友達ができた場所でもある機甲部隊への入隊を果たしました。しかし、軍は彼が1型糖尿病であることを知ると、彼の兵役期間を短縮しました。


それにも関わらず、多くのスウェットエクイティ(会社に利益をもたらす金銭的貢献ではなく、会社の利害関係者が労力と時間で与える非金銭的利益)、絶好の機会とビジネスパートナーを発掘する技巧を通じて、ゼエヴ氏は連続医療技術起業家になったのです。


彼の共同設立企業の1つであるEmendo Biotherapeuticsは、2020年に日本の製薬会社であるアンジェス株式会社に3億ドルで買収されました。


「何か問題を抱えているすべてのティーンエイジャーに、人生は学校で終わらないことを知ってもらいたい」と彼は語ります。


「私はスキルのない起業家になりました。夢を追求し続け、諦めなければ、たくさんのことができます。生計を立てるのに苦労した年もありましたし、糖尿病でつま先を2本失いました。しかし、人生とは、ただ幸せになることではなく、何を達成するかです。だから戦い続けてください。ある時、バルク ハシェム(= baruch Hashem)[神に感謝]、状況は改善していきます」


物事を成し遂げる男

軍隊の後、ゼエヴ氏は28歳になるまでリクード政党(イスラエルの政党の一つ)に勤めます。


彼の医師であるイタマール・ラズ教授は、現在イスラエル国立糖尿病評議会の議長であり、ゼエヴ氏の可能性を見抜いていました。 「彼は私が物事を成し遂げる方法を知っていると気づいていました。」


ラズ氏は、イスラエルおよび海外で糖尿病研究を進めるため、2004年にD-Cure Fundを設立。その際、ゼエヴ氏にCEOを務めてほしいと依頼しました。


ベン・ジーブ氏が笑顔の写真です。
シリアル医療技術起業家 シロ・ベン・ゼエヴ氏 (写真提供:Tamar Paluch)

「非常にうまくいったとは言えません。当時は英語も話せませんでした」とゼエヴ氏は当時を振り返ります。


しかし、1年間の任期を通して彼は、のちに人生を変えることになる医療技術へ興味を持つようになります。


2006年、ゼエヴ氏は、糖尿病性創傷を治療するためのデバイスを製造するコネクテッドヘルスソリューション、LifeWaveに参画。最高執行責任者として、彼はテルアビブ証券取引所での株式公開に貢献しました。


彼の次のベンチャーは、LabStyle Innovationsの共同設立でした。その主力製品は、糖尿病管理アプリを介してモバイルデバイスに接続されたコンパクトな血糖値計であるMyDarioです。


「iPhoneが医療機器として使用されたのはこれが初めてでした。」と、血糖値計の試験紙を販売することをビジネスモデルとしていたゼエヴ氏は言います。


MyDarioはその革新的なアプローチで賞を受賞しましたが、最終的に生き残ったのは装置ではなくアプリでした。


ゼエヴ氏が株式を売却してから2年後の2016年に、会社はDarioHealthに改名され、慢性疾患や持病を管理するために広く使用できるデジタルプラットフォームが開発されました。


「その後、David Baram博士と出会い、3つの会社を設立しました。微生物叢製薬会社のMyBiotics、タンパク質工学のための高度なツールを構築する診断および治療会社であるSmartzyme Biopharma、遺伝性疾患の遺伝子編集ツールを開発するEmendo Biotherapeuticsです。昨年、Davidが調整した取引でEmendoを売却しましたが、彼は引き続きCEOを務めています。」


より良い乳首

現在オーストラリアに滞在するゼエヴ氏は、現在は1年以内に設立したスタートアップであるEmulaitのみに焦点を当てていると述べています。


Emulaitは、哺乳瓶用にカスタマイズされた医薬品グレードのシリコーン乳首を3D印刷するシステムを開発しています。これは、授乳中の母親の乳房の形状、質感、色を生体模倣したレプリカです。


ゼエヴ氏がオーストラリアで母乳育児について話している理由を理解するには、彼の私生活について説明する必要があります。


38歳のとき、ゼエヴ氏は仕事でニューヨークにいることがよくありました。 2013年、複数の人からオーストラリアからイスラエルに引っ越したばかりの女性に会うように促されました。


「私は2013年に彼女に会うためにニューヨークからイスラエルに戻り、そして1年後に彼女と結婚しました。」と彼は言います。


ゼエヴ氏と妻であるタマール氏は現在、主にオーストラリアに住んでいます。彼らはネバダ州にも永住権を持っており、2人の娘たち、Amalia(6歳半)とRahni(3歳)と一緒に暮らしています。


「私はタマールとすべてを共有し、彼女は私にアドバイスをくれます。ほとんどの場合、良いアドバイスです。」と彼は冗談を言います。


「いいえ、それは彼が聞くこともあれば聞かないこともあるというだけです。」と彼の妻は助手席から付け加えます。


Emulaitは、アマリアが授乳を卒業し、哺乳瓶に切り替える際の問題から生まれました。「乳頭混乱」は本物の乳首と偽の乳首では吸引の仕方が異なり、その違いに子供が適応できないことから発生するよくある問題です。


吸い付き能力を向上させるための外科的矯正治療に受けた娘と妻が苦しんでいる姿を見て、ゼエヴ氏は、母親の乳首とまったく同じ形状のものを哺乳瓶に取り付けられるよう、女性の乳首をスキャンし、印刷する方法を模索しました。


長年の研究の後、ゼエヴ氏はアプリの開発に成功しました。


「このアプリは乳頭混乱を起こす乳児の20パーセントを助け、また仕事に戻る母親の支えとなります」と彼は言います。 「どの介護者も、母親が仕事をしている間、Emulaitの授乳システムで赤ちゃんに授乳することができ、母親が帰宅した際にはまた母乳を与えることができるため、哺乳瓶と母乳の移行が容易になります」


Emulaitは、3月頃の発売を目指して生産段階に移行し、資金調達を行っています。


「アイデアがあり、研究を行い、それが正しいとわかっているならば、誰にも間違っているとは言わせないでください。」と、ゼエヴ氏は自身の経験に基づいて助言します。


これまでゼエヴ氏は、投資家候補に自身の経歴を伝えるたびに門前払いを食らっていました。


「当時、彼らが私のことを軽視していることは感じとっていました。しかし、誰かが私に耳を傾けるまで、私は挑戦し続けました。今日、私がVCに話をすると、彼らは敬意を持って接してくれます。しかし、ここまで来るには22年かかりました。経歴を持たず、起業家になるのは非常に難しく、一生懸命働かなければならないことは間違いありません」と彼は認めます。


彼は彼に決して期待しなかった父とは疎遠のままですが、ゼエヴ氏は彼自身の失敗と成功に対して全責任を負っています。


「誰のせいにもしないでください」と彼は言います。 「努力を続けてください。自分がしていることを信じるならば、行動に起こすのみです」


情報提供:ISRAERL21c

テキスト:Abigail Klein Leichman