ダーウィンの進化論ゆかりの地として知られるガラパゴス諸島。その豊かな生態系の中で長年解明されていなかった「ある海藻の謎」を、イスラエルの研究チームが明らかにしました。第二次世界大戦中に船舶によってもたらされた可能性が極めて高い。最新DNAが解き明かした真相とは?

ガラパゴスの生態系に残された長年の謎
太平洋に浮かぶガラパゴス諸島は、地理的に隔離された環境の中で独自の進化を遂げた生物が数多く生息する世界有数の生物多様性ホットスポットです。

そのため、外部から持ち込まれた外来種は、生態系に大きな影響を及ぼす可能性があります。しかし、この紅藻については長年、「もともと存在していた種なのか、それとも人間活動によって持ち込まれたのか」が分からず、「起源不明種(Cryptogenic species)」として扱われてきました。
ハイファ大学レオン・チャーニー海洋科学大学院のタル・ルツァト・クナーン博士らが主導した国際研究チームは、ガラパゴス諸島に広く分布する紅藻「アスパラゴプシス・タキシフォルミス(Asparagopsis taxiformis)」の起源を調査。その結果、この海藻はもともとガラパゴス固有の種ではなく、第二次世界大戦中、あるいはその直後に船舶によって持ち込まれた可能性が高いことを突き止めました。
DNAが明かした“海藻の履歴書”
研究チームは2024年にガラパゴス諸島27カ所で65サンプルを採取。さらに、チャールズ・ダーウィン財団が保管していた1985年の標本も解析対象に加えました。
研究者たちは3種類の遺伝マーカーを用いてDNA解析を実施。その結果、40年以上にわたるすべてのサンプルが「L2」と呼ばれる同一の遺伝系統に属していることが判明しました。
さらに、この系統は東太平洋の他地域では確認されておらず、最も近い集団は約5,000キロ離れたハワイに存在していました。
この高い遺伝的一致性は、ガラパゴスで長期間独自に進化した集団ではなく、比較的最近になって持ち込まれた外来種であることを示しています。

第二次世界大戦と海藻の意外な関係
研究では歴史資料も調査されました。
1930年代に実施された大規模な海藻調査では、この種の記録は確認されていません。しかし1962年には、すでにガラパゴス諸島のサンタクルス島で豊富に存在していたことが報告されていました。
研究チームは、第二次世界大戦中から戦後にかけて島々に軍事基地が設置され、船舶の往来が急増したことに注目。これらの歴史的記録とDNA解析の結果を組み合わせ、この海藻が船舶に付着するなどして島へ運ばれた可能性が高いと結論づけました。
DNAが「生物の歴史」を語る時代へ
今回の研究の特徴は、単に外来種を特定したことだけではありません。
現在採取したサンプルと、数十年前の標本をDNAで比較することで、生物がどのように分布を広げたのかという“歴史”そのものを再現した点にあります。
この研究により、アスパラゴプシス・タキシフォルミスは、ガラパゴス諸島で外来種として正式に確認された最初の海藻となりました。

イスラエル沿岸にも広がる外来海藻
実はこの海藻はガラパゴスだけでなく、イスラエル沿岸や地中海各地にも広がっています。
研究を率いたルツァト・クナーン博士は、この種がすでに他の生物へ影響を及ぼしている可能性を指摘しています。一方で、この海藻には有用な化学物質が含まれており、将来的な応用研究も進められています。
「外来種の侵入プロセスを理解することは、監視や予測、そして予防につながります。ガラパゴスのような特別な生態系を守るためには、こうした研究が欠かせません」と博士は語っています。
イスラエルの研究者たちは、最先端のDNA解析技術を活用しながら、地球規模の生物多様性保全にも貢献しています。今回の成果は、科学が過去を解き明かし、未来の自然を守る力を持つことを改めて示した研究と言えるでしょう。
*本記事はイスラエルメディアynetの報道をもとに構成しています。


