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BUSINESS

音速に迫る「フォーミュラEカー」を支えるリアルタイム通信〜Cato Networksが引き出す「タグホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム」のパフォーマンス〜

by ISRAERU 編集部 |2024年04月18日

夢のフォーミュラカーが、目の前を駆け抜けていく―2024年3月30日は、日本のレースファンにとって特別な1日になりました。世界最高峰のEVレースである「フォーミュラE」が、東京・有明で日本初となる公道レースを行ったのです。


Cato Networksセキュリティ戦略担当シニアディレクター イタイ・マオル氏

その最高速度は、時速320kmに達します。迫力満点ながら、排気ガスや爆音を出さないため環境にとってクリーン。まさに未来のモビリティを先取りするショーケースと言える光景が広がりました。環境性能だけでなく、通信におけるネットワークとセキュリティに関しても最先端を行くのがフォーミュラEカーです。タグホイヤー ポルシェ フォーミュラEチームを通信面でバックアップするため来日したCato Networks(ケイト・ネットワークス)のグレッグ・イーデン氏とイタイ・マオル氏に、フォーミュラEを支える通信テクノロジーについて聞きました。


ネットワークにおける、真の「脅威」を排除するSASE

――Cato Networksはテルアビブに本社を構え、世界90以上に拠点を持つサイバーセキュリティ企業です。当誌の以前の記事では、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で統合させたフレームワーク「SASE(Secure Access Service Edge)」の概念について、日本法人代表に伺いました。このような技術がカーレースの勝敗をも左右するのが意外です。今日はフォーミュラE第5戦、東京E-Prixの決勝レースに合わせて来日したおふたりにSASEとEVレースの関係性、自動車社会の未来までを伺いたいと思います。


グレッグ・イーデン氏(以下、グレッグ):ありがとうございます。Cato Networksは2015年、創業者シュロモ・クレイマーがITのセキュリティをメインフィールドに設立した企業です。一般にSASEという名称は2019年にガートナー(デジタル分野を得意とする世界的に知られるリサーチ会社)によるレポートで登場しましたが、私たちがSASEの概念を定義したのは2016年にまで遡ります。


グレッグ・イーデン氏

企業のセキュリティとネットワーキングを単一のクラウドプラットフォームで実現するSASEの必要性は、日ごとに高まっています。企業の皆さんは、従来のようにコストがかさんで柔軟性に欠けるレガシーなインフラを、私たちが提供するオープンかつモジュール化されたSASEアーキテクチャ「Cato Cloud(ケイトクラウド)」に置き換えることができるのです。


――現在、どれほどのレガシーインフラがSASEに置き換わりつつあるのでしょう?


グレッグ:ガートナーのレポートではSASEのグローバルシェアなどは数字で示されてはいないようですが、私たちのビジネスに関して言えば、顧客がグローバルで4,200 社を超えました。昨年度の収益面は59%の成長があり、これはマーケット平均の2倍程度の伸び率だと推測しています。


――Cato Networksのクライアントリストには、グローバル企業に混じって日本企業の名前も多く見られます。日本のマーケットをどのように見ていますか。


グレッグ:日本には現在およそ350社のお客様がいます。2024年末までには500社にまで増える見込みです。これは日本の企業がテクノロジーやソリューションにますます興味を持っている現れだと考えています。Cato Cloudへの接続拠点であるPoP(Point of Presence)は世界に90カ所ですが、日本には現時点で5拠点あります。そこにまもなく6拠点目(札幌市)が加わる予定です。


イタイ・マオル氏

――市場が伸びているのは、それだけサイバーセキュリティの脅威が増えているということですか。


イタイ・マオル氏(以下、イタイ):もちろんセキュリティに対しての需要が高まっていることが需要の背景にあります。それに加えて私たちの製品は、企業におけるITマネージャーの「複雑性」を排除できるのが特徴です。


2023年にIBMが発表した「データ侵害のコストレポート」によれば、企業ネットワークにおける現実的な「脅威」とは、実はウイルスやランサムウェアといった外部からの攻撃だけではなく、自分たちのネットワークが複雑化することのほうが大きい、という結論でした。つまり、複数のシステムを管理する煩雑さが危険を招くのだと。この説に大きくうなずくIT部門の担当者もいらっしゃるかと思います。


フォーミュラEの経験が、ビジネスソリューションとなる

――本日付(決勝レース前日の3月29日)のリリースは、Cato Networksが既存のハードウェアをアップグレードすることなく、SASEスループット(転送データ量)を従来の5Gbpsから10Gbpsに引き上げることに成功したという内容でした。フォーミュラEにおいてどのような戦略的優位性を持つのかと絡めて、具体的に伺えますか?


3月29日のプレス発表会でリリースに関するプレゼンテーションを行った。

イタイ:そのためにまず、タグホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームがレース中にどんなことを行っているか説明しましょう。すべてが電動化され、規格が統一されたフォーミュラEカーのレースで勝敗を分けるのは、「ドライバーのレーシングテクニック」と「データ処理」です。私たちは後者のために2022年末からチームをサポートしています。


レース中にリアルタイムでやり取りされるデータ量は、数百GBにも達する巨大なボリュームです。ドライバー視点の映像、刻々と変わる道路状況、スピード、熱、バッテリー状況……こうした情報をすべて車載カメラやセンサーで収集して、ドイツにあるポルシェのヴァイザッハ開発センターに送ります。その地でデータアナリティクスを行い、その分析結果をまたデータで返す。こうしたやり取りを繰り返すことで、レース中のドライバーは自分の運転にとって必要な最低限の情報だけにフォーカスできるのです。


ドイツ・シュトゥットガルト近郊、ヴァイザッハにあるポルシェの開発センター

――毎秒10Gビットの通信とは、どのようなレベルにあるか想像もつきません。


イタイ:例えば、フォーミュラEのシーズン全体で収集するデータを一度にドイツへ送ると仮定した場合、従来だと3日半かかっていたのが、わずか2時間半以内に終わってしまうパフォーマンスです。


ゼロコンマ数秒を争うフォーミュラEレースの勝敗を分けるのは、一にも二にもやはりスピード。素早くリアルタイムでデータを収集して、それを遠方のアナリストが分析して、すぐにソリューションをレース中のドライバーに返すという仕組み、それが非常に重要です。私がドイツの開発センターを訪問した際は、本当に数多くのコンピュータが並んでいて、まるで精密な防衛システムのように、実に細かいデータまでもがシミュレーションされていました。


最終ラップ近くまで激戦となったフォーミュラE第5戦「東京E-Prix」。タグホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームは、A.F.ダ・コスタ選手が4位、P.ウェーレイン選手が5位でフィニッシュした

――自動車メーカーにとって、F1(フォーミュラ1)レースが開発力を競いながら未来の技術をテストする環境なのと同じく、これからいくつもの波を超えて普及していく電気自動車にとっても、多くのデータが収集できるフォーミュラEが「リアルなテストコース」になるのだと感じます。


イタイ:私はセキュリティの専門家なので、その視点からクルマ社会の未来を見ています。これから自動車の電気化が進んでいくとコネクティビティが重要になってくるはずです。ドライバーに対して必要な情報を提供することの価値が、ますます高まるということです。


自動運転の普及とともに、ハッキングなどのセキュリティ問題も深刻化するでしょう。また、情報がクルマからそれだけ収集できるということは、その情報を一体誰が、どこで使うのかというプライバシーの問題もクローズアップされてくるはずです。


フォーミュラEカーの操縦に挑戦するイタイ氏のドキュメント動画。

グレッグ:フォーミュラEへの参加は、私たちCato Networksの能力を証明する機会でもあります。カーレースという大きな制約がある環境でオペレーションをこなすわけですが、それは私たちの顧客が置かれている環境と同じかもしれません。だから、フォーミュラEで培うことができたサービスは、他のお客様に展開できると考えています。


先ほど申し上げたように、ネットワークとセキュリティを一つのプラットフォームにしたCato Cloudを導入する最大のメリットは、複雑性を排除できることです。レーサーがドライビングだけに集中できる環境を整えるように、私たちの顧客が日々のビジネスに集中できるIT環境を整える。優秀なチームを支えたいというスピリットは、私たちの創業時から不変のものなのです。


プレス発表を行った「ポルシェスタジオ銀座」で、イタイ氏とグレッグ氏


Cato Networksの提供するSASEは、世界中のあらゆる場所から、あらゆるユーザーを、あらゆるアプリケーションに安全かつ最適に接続します。Catoのクラウドファーストアーキテクチャは、ITチームへの負担を排除し、新しい機能を迅速に展開し、最適なセキュリティ体制を維持できます。当社サービスなら、貴社のIT組織およびビジネスの新たな事態に備えることが可能です。

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