人間の生物学的性別は遺伝子とホルモンによって男と女に分けられていますが、人類の51%は女性です。そして、これまでの医療開発は人類の49%である男性のデータを基に開発されてきました。遺伝子やホルモンが異なる「女性の医療」は今までほとんど開発されてこなかったともいえるのです。
女性の健康分野で企業を育成する会社、impact.51の共同創始者兼CEOのミハル・シャレムさん(以後シャレムさん)とミハル・レベンタル・アンダーソンさん(以後レベンタルさん)に、広大なブルー・オーシャンともいえる、現代のフェムテックの世界観についてお話を伺いました。
フェムテックとは
フェムテックと聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
女性たちがピンクのイメージカラーを基調にしたスタートアップで不妊治療や乳がん、月経や更年期障害といった女性特有の健康課題を解決する製品などを開発している、男性には縁の薄い世界…。そんなイメージがあるのではないでしょうか?
もちろんそれは間違いではありません。乳がんや不妊治療は女性に特有の、そして、まだまだ解決されていない大きな課題であることは確かであり、また多くの女性がその解決のために努力しているのも事実です。
けれどimpact.51のシャレムさん、レベンタルさんのお話を聞くと、それはフェムテックのほんの一部、女性の医療の小さな一角に過ぎないという事、そしてフェムテックは決して男性にも縁の薄い世界ではないという事が良くわかるのです。


「世界的に医療のデータは生物学的男性が基本となっています。女性が臨床試験に参加できるようになったのは1993年以降なので、女性のデータに大きな欠如があるのです。動物実験ですらオスで行われるのですが、その理由は「女性ホルモンなどの影響を受けないために」。その結果開発された医療が私たち女性にも適用されるのですが、私達は構造上、女性ホルモンの影響を排除するこはできません」とシャレムさん。
レベンタルさんはこう言います。「人間の体にあるほとんどの液体は研究が進んでいます。唾液、血液、リンパ液…人類は、これらの液体を研究することで体に関する沢山のデータを集め問題に対する解決策を見つけ出してきました。けれど、まだ全くと言っていいほど研究がなされていない液体があります。それはヴァギナにある体液です。この液体が何で成り立っているのか、健康の何を反映しているのか、まだまだ未知の領域と言って良いでしょう。ここから私達は健康に関する多くの解決策をも開発することができると思うのです。この例ように、女性の医療には未知な領域、改善が必要とされている領域がたくさんあるのです」
「フェムテックは一部の人々の一部の問題に関する領域」という考えはもう過去のものです。これまで開発されてきたのは人類の49%(男性)の医療であり、まだ51%(女性)の医療が未開発である、というふうに考えることができるのではないでしょうか。
そして世界中どこでも、基本的に人間の寿命は延びています。これからは女性の医療に関する需要も大きくなる一方でしょう。

impact.51の役割
このように、新しい段階に入ったフェムテックの世界ですが、impact.51は女性の健康における最も差し迫った課題をめぐって、起業やスタートアップを育成しています。
「私達が重要視しているのは「問題解決」と「市場」です。現在解決が必要とされている課題は何か、それを解決することでどの市場にどのように受け入れられるのか、綿密な調査を行います。私達は世界の病院、研究所、技術者、患者の協会など、主要なステークホルダーや優れた人材を結集し、エコシステムを作り出すことで問題解決を実現させるのです。体系的な変化を生み出すことが使命です。impact.51は、これまで対応されてこなかった実際のニーズに焦点を当て、解決策を生み出す起業やスタートアップを育成しています」とミハルさんは言います。
今まで透明な存在だった51%を体系に組み込む。確かにこれは大きな変化で、女性にも男性にも大きな意識の改革が必要となるでしょう。それでも時代の流れや現実を見れば、この考え方は至極当然のこと。今まで人々の意識に上がらなかったことの方が不思議なくらいです。
既存の考え方にとらわれない自由な発想という点にもまたimpact.51のイスラエルらしさを感じます。

女性が何をするべきか
2人のミハルさんのインタビューで考えさせられたことの一つに「人類における女性の立場」というものがありました。
シャレムさんがおっしゃるには、調査によると家庭の医療に関する決定権は80%以上が母親(女性)が持っているのだそうです。それなのに、なぜこれほどまでに女性の医療が立ち遅れているのかという点です。
”女性の医療”が”男性の医療”に比べてどれほど遅れているのか、そしてそれがどんな問題を引き起こしているのか、お二人は沢山のデータを使い説明してくれました。そして、こう言いました。
「このようなデータはそれだけで何時間も話せるほどたくさんあります。そしてその遅れが不幸の元となってしまった現実の話も、いくらでもあるのです」
そしてその後すぐに言葉は続きます。
「けれど私達はこの現実に対して立ち止まって泣き言を言うのでなく、これらの課題をどうすれば解決できるのか、前を向いて考え解決に進むことを選んだのです」
「女性の医療の前進のために、ムダにできる時間などありません」
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「女性の権利が強い」「女性も男性も同等」とよく言われるイスラエルではありますが、それでも女性に対するガラスの天井は確実にあります。
イスラエルの女性は贈り物として男性と同等の権利を受け取ったのではなく、勝ち取ったのだ。そのために、常に努力しているのだという事が実感できるのです。
イスラエルの女性はとても頼もしいのです。
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EXPO2025、地球の未来と生物多様性ウィーク
さて、impact.51は現在大阪で開催されているEXPO2025「地球の未来と生物多様性」テーマ・ウィークに沿い、フェムテック・デイ「女性の健康と持続可能な未来のための革新」を実施いたします。
シャレムさん、レベンタルさん、2人のミハルさんも登壇します。さらにお2人と共に、日本市場にイスラエルのフェムテックを紹介し、投資家や企業との協力関係を生み出すことを目的に、イスラエルの主要なフェムテック企業3社 ― Nevia Bio, Ark Surgical, Illumigyn ― の代表団も同行します。
フェムテックに興味をお持ちの方はぜひプログラムに参加されてみてはいかがでしょうか?
開催日時は、9月18日(木)10:00-11:00となります。
こちらのプログラムは招待性となっておりますので、詳しくはこちらよりご確認ください。