
日本のビジネスマンは世界から丁寧さと誠実さを評価される一方で、イスラエルのビジネスパーソンは大胆さと行動力(フツパー精神=“Chutzpah”)で注目を集めています。長年イスラエルの様々なテックスタートアップ企業の日本代表として働いた経験から、両者のスタイルの違いと成功の秘訣を解説します。
フツパー精神とは?
イスラエル流の「フツパー」とは、ヘブライ語で「厚かましさ、大胆さ、豪放」を意味する言葉で、その中でも「大胆さ」の意味合いが一番近いと感じます。ビジネス現場では積極的な質問力と行動力を表します。
質問力は「不明点の答えを問いただす力」。問いの質、投げかけ方を向上させることで様々な課題・難題を解決させる事ができると考えます。このスキルはビジネスにおいて、大変重要なスキルです。
イスラエルスタートアップ企業の方々と会議を重ねる度に、必ず本質を突く質問をして来る彼らの質問力の高さに感心します。相手が何を求めているのかを理解した上で回答を行うので、質問能力だけでなく、回答力も高くなります。
イスラエルのスタートアップ企業(以下、スタートアップ)と日本企業との会話例を見てみましょう。
スタートアップ:「本件、御社側で社内会議を行う必要があることについて、了解いたしました。それでは、御社側にボールがあるという事ですね」
日本企業:「はい」
スタートアップ:「いつその結果を教えてもらえますか?●月●日の今日と同時刻に打ち合わせをしましょう」
日本企業:「わかりました。では、オンラインのリンクを送ります」
この会話例からわかるように、質問力と大胆な言動力で会話をリードできます。『具体的に●月●日●時』と次回のミーティングを決定させたことで、相手側が決められた時間の中で必ず宿題を済ませないといけなくなり、目的への到達時間をミニマイズすることができました。
ほんの一例にすぎませんが、みなさんの日々の仕事にも役立つソフトスキルの1つかと思います。
ネバーギブアップ精神:諦めない力
イスラエルスタートアップ企業のもう一つの特性は、「ネバーギブアップ精神(やり抜く力)」です。どんな難題でも諦めず、最後まで粘り強く取り組みます。日本人が「手間だ」と感じるプロセスも、彼らは目的達成のためのステップとして恐れません。
イスラエル企業人に圧巻された経験をお話します。
フツパー精神がビジネス成功を導く例

このイスラエル企業は、世界初の電子株式取引所であるナスダック(NASDAQ)の上場企業で、当時私が日本代表を担当していました。日本でのビジネス拡大をミッションに、日本代理店の開拓とエンドユーザーへの営業展開を行っていました。
木枯らしの吹く11月中旬、イスラエル企業のワールドワイドセールスのトップとアジアパシフィックのトップが来日し、日本代理店候補企業と打ち合わせを行ったときの話です。会議の目的は、代理店契約に関しての詳細詰め及び契約締結をおこなう事でした。会話の流れの中で日本企業の営業本部長が「もう少し早ければ御社に250台の発注できたのにな・・・」とこぼした一言で、イスラエル企業のワールドワイドセールストップに火がつきます。まさにフツパー精神と諦めない精神のコンビネーションが炸裂した瞬間でした。
「ユーザーが求めている仕様は?弊社商品でも問題なくいける」「金額は?納期は?弊社も同金額で同じ納期でいける」、そしてなんと最後に「他社への発注をとにかくキャンセルして、弊社の商品に切り替えてほしい」と通常では考えられない強気のアプローチを行いました。なんと1時間以上も粘り(懇願し)ました。
私も長く現場で営業をしていましたが、発注後にも関わらず、『キャンセルして切り替えてほしい』とのリクエストを見たのは初めてでした。ネガティブに言えば、「失礼」で「しつこい」行動かもしれませんが、ポジティブに言えば、大胆(フツパー )で絶対に諦めない精神です。
結果、残念ながら発注の切り替え獲得はできなかったものの、イスラエル側の情熱と諦めない精神が日本企業と担当者にも伝わったのでしょうか、それをきっかけに、最終的に1億円を超える共同案件につながりました。
イスラエル企業人が持つ「フツパー精神」を原点とした成功するソフトスキルとして、以下の3つが重要です。
- 大胆に動く
- 本質を突く質問をする
- どんな状況でも諦めない姿勢を保つ
- 本質を突く質問をする
是非、みなさんも意識して実行してみてください。
参考文献・関連書籍
イスラエル流「フツパー精神」をさらに深く学ぶには、起業家精神をテーマにした書籍『起業家精神のルーツ フツパー』がおすすめです。著者インバル・アリエリは、イスラエル国防軍出身のビジネスエキスパートであり、スタートアップの成功事例から学べる内容になっています。
書籍名:『起業家精神のルーツ CHUTZPAH イスラエル流“やり抜く力”の源を探る』 インバル・アリエリ (著)
※記事は2021年11月3日に公開した記事を再編集しています


