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スピードVSルール。スピード感溢れるイスラエルのビジネススタイル

by 平野貴之 |2021年08月13日

年々強くなるイスラエルと日本のビジネス関係。それはコロナ禍においても変わりません。前回の記事では、「ビジネスにおけるイスラエルと日本の大きな違い、イスラエルとビジネスをする上での心得」をお伝えしましたが、今回は、イスラエルとのビジネスにおけるコミュニケーションの違い、スピード感VSルールについてお話します。


テルアビブの街並み

筆者は海外企業の日本進出を支援しており、多くの海外企業とお仕事をしていますが、その中でも特にイスラエルのテクノロジーベンチャーとのお仕事が多くあります。
大手企業と違い、ベンチャー企業は限られたリソース、資金、時間の中で、いかに有効かつ効率的にビジネスを進め、一つ一つの案件を確実にクローズしていく必要があります。それに加え、成功への集中力、執着力が非常に強いイスラエルの国民性が関係しているでしょう。


ビジネスにおけるイスラエルと日本の大きな違い、イスラエルとビジネスをする上での心得
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ビジネスにおけるイスラエルと日本の大きな違い、イスラエルとビジネスをする上での心得 ビジネスにおけるイスラエルと日本の大きな違い、イ...

平野貴之 / 2021年07月19日


ワクチン接種の速さに見るイスラエルのスピード感

イスラエル人のスピード感の速さと言えば、新型コロナウイルスのワクチンを世界で一番早くイスラエル国民に接種させたことが記憶に新しいと思います。ワクチン接種を受けた人には専用のアプリパスポートが配布されたため、病院やレストランに入るときにアプリパスポートを見せることでスムーズに入場することができました。国といえども一人一人の集合体です。スピーディーかつリスクを認識した上での判断を行い、立ち止まらずスピード感を持って、動きながら判断を行うことこそがイスラエル人の特徴であり、これは我々日本人も学べるとことではないでしょうか。


▲アプリパスポート


コミュニケーションの使い分け

突然ですが、皆さんWhatsAppをご存じでしょうか?
日本では無料のメッセンジャーアプリLINEが主流となっていますが、WhatsAppはLINEと同じく無料のメッセンジャーアプリで、世界的に利用されています。
イスラエルも例外ではなく、ビジネスマン全員と言ってもいいほど、コミュニケーションにはWhatsAppが主流となっています。日本でも少しずつコミュニケーションアプリを使った社外の人とのビジネスコミュニケーションが増えてきていますが、それでもメールや電話と比較するとオフィシャル感が薄れることを懸念して躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、あなたがもしイスラエルとビジネスをするなら、WhatsAppは必須アプリと言えるでしょう。


whatsappが入ったスマホ

筆者の顧客担当は、基本的にワールドワイドのビジネスデベロップメントのVPが多いのですが、普段はWhatsAppアプリ内でプレゼンテーションなどの資料を共有しながらコミュニケーションを取っています。とは言え、オフィシャルな時や日本の顧客や代理店に書類を送る際には、日本と同じくメールを使う傾向があります。また社内情報展開時などにはメールが好まれ、そのメールをベースに社内で議論がなされるのです。このようにイスラエルでは、上手にコミニケーションの取り方を使い分けています。


「即座」のコミュニケーション

先ほどもお伝えした通り、イスラエルでのコミュニケーションはWhatsAppを利用しスピーディーに行われています。そのスピード感はまさに「即座」です。


例えば、イスラエルの担当者は打ち合わせ中であっても、スマホを見る時間があれば即座に返信が来ます。日本でも基本的に営業系の方は返信が早いと思いますが、イスラエルでは営業であろうと技術系であろうと返信が早く来ます。もちろん現実的なプロジェクトが進んでいるからですが。


ミーティングの様子

この「即座」のコミュニケーションは、日本とイスラエル間の約9000kmの距離を感じさせず、まるで隣にいるかのような感覚に陥ります。


その中でも、特にスピード感を感じられるのが、日本顧客(エンドユーザーもしくは代理店)と契約、PO、LOIを得る時です。
「何が問題?どうすればクローズできる?ステータスは?フィードバックはあったか?」など、すぐに連絡が来ます。というのも、シリーズB*以下のイスラエルベンチャー企業の場合、売上を上げるだけでなく、契約書そのもの自体に価値があり、PO、LOIをもとに次のファンドも意識しているからです。


すなわち、日本側では、面白い技術だからトライアルをやってみよう!と少し軽い感じでスタートするパターンが多いのですが、イスラエル側では、本気(マジ)で臨みます。その背景を分からず、日本代理店とイスラエル企業側がギクシャクしてしまうこともよく見かけます。


*シリーズBシリーズA/B/Cとは、米国シリコンバレー発祥の言葉で、主にスタートアップ企業に対してのベンチャーキャピタルの投資判断の際に使われ、企業の成長段階に応じた投資ラウンドを指しています。ここで言うシリーズBとはシリーズAに続く資金調達です。シリーズAは、企業が、最初の重要なベンチャーキャピタル出資を受ける段階を指す名称です。シリーズBは、プロダクト(商品・サービス)やビジネスモデルが確立しつつあるミドルステージの段階で行われることが多いです。


イスラエルと異なる日本のスピード感

イスラエルと比べて日本のスピード感が落ちてしまう原因の一つとして、ルールの壁が挙げられるでしょう。
ルールは守る物です。書面に記述されたルールもあれば、暗黙のルールがあります。


例えば、あるイスラエル企業が開発した商品があり、日本で展開する予定があるとします。ターゲットは日本企業です。しかし、この商品を日本国内で販売する為には、日本において認証機関から承認をもらわないと販売できません。この場合、多くの日本のビジネスマンは、認証を取れるまでは営業を行わないことが多く、国内で認証を取得した後に営業活動を開始するプランを立てます。販売するためには認証を取ることがルールなので当然です。こういったルールを守る、人と同じように生きる、出る杭は打たれるといった日本流が存在するため、イスラエルと仕事をしていく上で進みが遅くなり、スピード感が落ちてしまうのです。
そこで著者はイスラエルと仕事をする上で「Action First(行動第一)」を社内スローガンとして掲げています。


行動第一のイメージ

このように言うとイスラエル企業はルールを守らないという風に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。イスラエル企業にとってまず行動することが大事であることは変わりませんが、ルールは破りません。


イスラエルとのビジネスで成功を収めるためには、ルールを守りながら、当たり前とされているプロセスの順番を今一度見直すなど、ビジネスを成功へ導く為のアイディアを常に考える事が重要だと考えます。DX、リモートワークなど、ITを活用したインフラが確立されるほど、自動的に全ての工程が早くなります。そしてその早いインフラの中でも、やはりスピード感が重要になってくるでしょう。