
昨年、培養肉の生産を宇宙で行うという野心的計画を発表したイスラエルのフードテックスタートアップ「アレフ・ファームズ(Aleph Farms)」は、世界第三位の経済大国で食糧問題に挑みます。
2018年に世界初となる牛の細胞から製造した培養肉ステーキを開発した、イスラエル・レホボトに拠点を置くアレフ・ファームズは、三菱商事食品産業グループと提携し、ラボで製造された培養肉を日本で展開する合意を結んだことを発表しました。

ディディエ・トゥビア最高経営責任者(CEO)によると、培養肉の培養に必要な製造プラットフォーム「BioFarm」をアレフ・ファームズが提供し、バイオテクノロジープロセス、ブランド食品製造、日本での流通に関する専門知識を三菱商事が提供します。
トゥビア氏は今回のパートナーシップについて、イスラエルの培養肉スタートアップにとって「重要なマイルストーン」であるとし、アレフ・ファームズが作り出すポジティブなインパクトを最大化させつつ、食品および食肉産業と協力することで生態系に培養肉をうまく統合させるというアレフ・ファームズの戦略を実証するものであると述べています。
また同社は、日本の消費者の好みや規制に合わせた製品づくりに取り組んでおり、日本展開に対する意気込みを見せています。
三菱商事のグローバル企業ネットワークは、10のビジネスグループで構成されており、各産業分野をほぼ網羅しています。食品産業グループでは食糧資源、生鮮食品、消費財、原料のほか、原材料の製造・調達、食品の生産まで、食品サプライチェーンのあらゆる分野で活躍しています。
三菱商事のグローバルな企業ネットワークは、ほぼすべての産業分野で10のビジネスグループで構成されています。食品産業グループは、食品資源、生鮮食品、消費者向け製品、食品素材を対象とし、原材料の生産・調達から最終製品の製造まで、食品サプライチェーンのあらゆる分野で活動しています。
アレフ・ファームズと三菱商事は、共に東京に拠点を置く日本の東京に拠点を置くルール形成戦略研究所の下で政策提言を行う「細胞農業研究会」のメンバーでもあります。この研究会では、細胞性産物の定義と構築に関する専門家を集め、日本の製品や技術に関する政策提言を行っています。
食べ物の安全性
COVID-19危機や気候変動の脅威は、持続可能な食料安全保障の必要性を示しており、土地や地域の水資源に頼らない肉を生産することで、この問題に取り組ことが使命であると、アレフ・ファームズは述べています。
また三菱商事との提携は、気候変動問題への取り組みの先導者となっていると同社の声明で述べています。
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするという目標を掲げています。4月、アレフ・ファームでは、2025年までに食肉生産に伴う排出をなくし、2030年までにはサプライチェーン全体における排出量ゼロを達成することを約束しました。
食肉の需要が高まり続ける中、今回の提携により、現在の食品および食肉業界と連携することで、質の高い栄養などのメリットを生み出す新しい戦略が実現可能となります。
トゥビア氏によると、日本との協業はアレフ・ファームズがアジア太平洋地域、ラテンアメリカ、ヨーロッパで展開している「BioFarm to Fork」という戦略的パートナーシップネットワークの取り組みの一環であり、2019年に米食品大手カーギルやスイスのミグロスグループから受けたラウンドAの戦略的投資にも繋がっているとのことです。
同社は10月、気候変動や天然資源に依存しない新鮮な食肉を生産することで食料安全保障を推進し、宇宙のような最も過酷で遠隔地の環境下でも、食料を生産可能な機能を導入する「Aleph Zero」と呼ばれる新プログラムを発表しました。
またアレフ・ファームズのイノベーションを宇宙プログラムに確実に統合するため、テクノロジー企業や宇宙機関との長期的な共同研究開発の提携に取り組んでいると述べました。
アレフ・ファームズは、2017年に
Aleph Farmsは、2017年にストロースグループのThe Kitchen Hubと、テクニオン・イスラエル工科大学で生物医学工学学部長を務めるシュラミット・レベンバーグ教授の共同で設立されました。
食肉代替品の需要
健康と環境への懸念から、世界的に食肉代替品の需要が高まっている中、ジャパンタイムズの8月のレポートによると、日本でも特にパンデミックの際に、肉の代替品が地元で注目を集め始めています。
先月、シンガポールは世界で初めて、クリーン培養肉の販売を承認しました。米国では、Beyond MeatやImpossible Foodsのような企業が人気を博しており、すでにTysonやPerdueのような米国の多国籍食品協同企業が独自の代替肉を展開し始めています。
地元で消費される牛肉の85%が輸入肉であるイスラエルでは、レホボトに拠点を置くRedefine Meatという会社が、特許出願中の3Dプリント技術を使って作られた世界初の植物性ステーキであると7月に発表しました。
その1ヶ月後には、イスラエルの培養肉バイオプリンティングスタートアップMeaTech社が、同社の科学者が幹細胞から生産された無屠殺の肉組織の3Dプリンティングに成功したと発表に至りました。
また、スマートロボットの3Dプリント技術と植物由来製法、そして高度な調理法を組み合わせて肉の代替品を作るイスラエルの企業SavorEatは、テルアビブ証券取引所でIPOを行った初のフードテック企業となりました。
イスラエルのネタニヤフ首相は先月、アレフ・ファームズの工場を訪れ、同社の培養肉ステーキを試食しました。
「美味しくて罪悪感を感じない、そして本物の肉の味と変わりありません。この分野で活動するすべての利害関係者を結び付け、それを監督するため、これらの業界にサービスを提供する機関を任命するようツァヒ・ブレイバーマン内閣官房長官に指示を出しました。イスラエルは代替肉と代替たんぱく質大国となるでしょう。」とネタニヤフ首相は述べています。
アレフ・ファームズ