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BUSINESS

元パイロットが、史上二人目となるイスラエル人宇宙飛行士として宇宙へ飛び立つ

by nocamels |2020年11月25日

2021年末に予定されている宇宙飛行プロジェクトに、イスラエル人宇宙飛行士のエイタン・スティッベ氏が参加することがルーベン・リヴリンイスラエル大統領、ラモン財団、科学技術省の共同記者会見で発表されました。イスラエル人宇宙飛行士は史上二人目となります。


イスラエル人初の宇宙飛行士であるイーラン・ラモン大佐は、2003年に16日間にわたる任務を終え、地球に戻る際の不運の事故により、6名の宇宙飛行士と共に帰らぬ人となりました。


リヴリン大統領は今回の発表について、史上二人目となるイスラエル人宇宙飛行士が派遣されることは国民にとっても喜ばしいことであり、誇らしいことであると語ったうえで、青と白の刺繍が入った制服を纏うイスラエルのパイロットが、過去72年間ここで証明したように、空は無限であることを再び証明するでしょうと述べました。そして宇宙飛行で亡くなったイーラン・ラモン氏、その妻であり社会活動家であり、STEM(科学・技術・工学・数学の教育分野の総称)に影響力を持ち、イスラエルの若者教育発展をサポート、2018年に亡くなったロナ・ラモン氏、二人の息子で2009年に訓練中の事故で亡くなったF-16パイロットのアサフ・ラモン氏に対して、哀悼の意を示しました。


エイタン・スティッベ


イスラエル人初の宇宙飛行士イーラン・ラモン氏の妻であるロナ・ラモン氏は、2010年にラモン財団を設立し、彼女が亡くなるまで運営をしていました。スティッベ氏も財団創設者の一人であり、取締役会のメンバーでもあります。


財団はSTEM分野で高度なプログラムを提供し、イスラエルの次の世代が学術的卓越性と、社会的リーダーシップを育むサポートをしています。


イスラエル人宇宙飛行士のミッション

スティッベ氏が宇宙に飛び立つのは2021年末を予定。イスラエル政府とパートナーを組み、ラモン財団を代表してフロリダから国際宇宙ステーション(ISS)に向けて飛び立つ予定です。(NASA承認待ち)


彼のミッションは国際宇宙ステーションに200時間滞在し、共に宇宙へ向かう研究員やスタートアップのテクノロジーや科学的発展に関する実験を行うことです。


宇宙への飛行費用、発射費用、必要装備費用は全て彼が個人で負担するため、今回のミッションが民間宇宙産業の新しい領域を示していると、イスラエルのメディアHaaretzは述べています。


スティッベ氏はVital Capital Fundの創設者兼会長を務めており、35年間以上にわたり、重要なインフラストラクチャープロジェクトに関する発展途上国におけるプロジェクトのビジネス及び資金調達イニシアチブに取り組んできました。


彼が参加する今回の国際宇宙ミッションは、Axiom Spaceという民間企業によって始められ、他に2人の民間宇宙飛行士がいます。Axion Spaceの司令官は、アメリカのベテラン宇宙飛行士であり、40年以上の航空宇宙経験を持つマイケル・ロペス・アレグリア副社長です。彼はこれまで宇宙へ4回飛行し、第14回宇宙国際ステーションミッショの指揮を執りました。


「これはイスラエル初のプライベートなミッションであるだけではなく、世界初のプライベートミッションになるはずです。我々の宇宙飛行士は、NASAなどの宇宙機関の任務に参加しているわけではなく、すべてプライベートの任務です。」と、民間の宇宙船を月へ送り出した非利益団体SpaceILの共同創設者クフィール・ダマリ氏は語りました。


「来年、国際宇宙ステーションのミッションに参加する機会があります。科学、教育、ヒューマンネイチャーへの冒険という魅力的なミッションです。国際宇宙ステーションは、色々な国からの宇宙飛行士が生活から仕事を共にする世界でもっとも大きな協力ポイントのひとつです。現時点のコロナウイルスの危機の対処に一種の友情のようなものはとても重要です。

イーランとアサフの悲劇的な喪失の後、我々はロナと共にラモン財団を創立し、宇宙研究がどの様に意識を高め、好奇心を刺激しワイルドな想像力に挑戦できるか見てきました。我々の宇宙へのミッションが協力と平和の新しいチャンネルを開き、未来の世代のために我々の可能性を信じ、平和で美しい地球を見送ることができることを願っています。」と、イスラエル空軍予備兵の大佐を43年間務めるスティッベ氏は語りました。


誇り高きイスラエル

イェッツアー・シャイ科学技術大臣は、同省はイスラエル人として二人目の宇宙飛行士であるエイタン・スティッベ氏のミッションについて、数万人の子供と大人、男性女性問わず科学者、実業家の頭脳を集結した国家規模のミッションパートナーであることを誇りに思っている、と述べました。


イスラエルは、宇宙分野において既に世界的にパワーを持つ国として見なされています。イスラエル人二人目の宇宙飛行士は、何万人もの雇用を創出し、イノベーションと起業家の経済の新しく重要な分野を生み出し、新たな宇宙産業の発展に貢献するでしょう、と加えました。


コロンビアスペースシャトル飛行士たち。一番右がイーラン・ラモン氏。

発表によると、ラモン財団は科学技術省とイスラエル宇宙局と共に、科学的そして教育的なイスラエルのミッションをリードし、各省庁とのパートナーシップも主導するとのことです。


スティッベ氏のミッションは、イスラエルの子供たちに宇宙という世界を知ってもらうきっかけとなることが期待されています。


イスラエルの新たな宇宙飛行士に向け、リヴリン大統領は次のように述べています。

「親愛なるエイタンさん。セブンスヘブン(ユダヤ教では死後セブンスヘブンで神に会えるとする)を超えて、あなたはイスラエルテクノロジーの実験を行います。そのうちのいくつかは我々の若者によって開発されました。あなたの輝かしい頭脳、現在および次世代のイスラエルの研究の使節となり、それは遠くから見たとき世界がどのように機能しているのかを理解するための助けになるでしょう。あなたはこの惑星での生活を可能にする素晴らしい働きを理解し、宇宙の秘密を明らかにするための人類の努力におけるイスラエルの代表となります。」


The International Space Station photographed in 2010 by an STS-132 crew member on board the Space Shuttle Atlantis after the station and shuttle began their post-undocking relative separation. Wikimedia

ラモン財団は、出発前の3か月間、スティッベ氏がアメリカ、ドイツ、ロシアで集中的なトレーニングを受けることも発表しました。


「科学と研究、人類の果てしない知識への探求、発見、理解のためのこの宇宙ミッションは、人類が最大の問題の1つに直面しているときに始まります。それは誰もが経験したことのない危機です。ウイルスのおかげで科学、医学、研究など重要なコンセプトが、私たちの生活を揺るがすことができるのか気が付きました。我々は遠くの惑星や、無限に巨大な銀河だけではなく、自身の小さな惑星についてもどれだけ無知であるか思い知らされました。ミクロレベルのウイルスに対処し、ワクチンを見つけるためにも、さまざまな国の人々や科学者と協力しなければなりません。それが科学の力です。それは我々がはるか大きな何かの一部であることを思い知らせ、私たち人類皆の精神に語りかけます。」と大統領は語りました。


SpaceILのダマリ氏は、このようなプロジェクトは、人々にメッセージを送るために重要だと語りました。


このミッションから得られる一番の利点は、別のミッションが生まれることです。我々が夢を見続けるということは事実ですが、それほど遠くない夢である可能性があります、とダマリ氏は述べ、亡くなった夫(イーラン)の宇宙プロジェクトの継続として照らし合わせて、このことは次の世代が宇宙を冒険し、色々なことを宇宙でやったり、宇宙に行くことをインスパイアするだろうと、ロナ・ラモン氏がよく言っていたと語りました。