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BUSINESS

スピード重視のイスラエル流ビジネスとは?日本の「ルール重視」との決定的な違い

by 平野貴之 |2026年02月03日

前回の記事「イスラエルと日本のビジネス文化の違いとは?イスラエル企業と仕事を成功させるための4つの心得」では、2国間のビジネス文化の違いについてお伝えしました。今回は、イスラエルとのビジネスにおけるコミュニケーションの違い、スピード感VSルールについてです。

スピードを最優先するイスラエルのビジネススタイルと、ルールやプロセスを重視する日本の仕事文化を比較しながら、イスラエル企業と円滑にビジネスを進めるための考え方を解説します。


テルアビブの街並み

イスラエル企業と仕事をすると驚くことは意思決定と実行のスピードです。「もう決まったの?」「ルールは後で?」と感じる場面も少なくありません。

筆者は海外企業の日本進出を支援しており、特にイスラエルのテクノロジーベンチャーとの仕事が多数あります。大手企業と違い、ベンチャー企業は限られたリソース、資金、時間の中で、有効かつ効率的にビジネスを進め、一つ一つの案件を確実にクローズしていく必要があります。それらには成功への集中力や執着力が非常に強いイスラエルの国民性が関係しています。


イスラエルのスピード感

イスラエル人のスピード感を表す事柄として、新型コロナウイルスのワクチンを世界でいち早くイスラエル国民に接種させたことで知られます。ワクチン接種を受けた人には専用のアプリパスポートが配布され、病院やレストランに入るときにアプリパスポートを見せることでスムーズに入場することができました。スピーディーかつリスクを認識した上での判断を行い、立ち止まらずスピード感を持って、動きながら判断することこそがイスラエル人の特徴です。


▲アプリパスポート


コミュニケーションの使い分け

WhatsAppをご存じでしょうか?
日本ではメッセンジャーアプリLINEが主流ですが、WhatsAppも同じく無料のメッセンジャーアプリで、世界的に利用されています。イスラエルでもビジネスマンのコミュニケーションにはWhatsAppが主流です。もしあなたがイスラエルとビジネスをするなら、WhatsAppは必須でしょう。


whatsappが入ったスマホ

筆者の顧客担当は、基本的にワールドワイドのビジネスデベロップメントのVPが多いのですが、普段はWhatsAppアプリ内でプレゼンテーションなどの資料を共有しながらコミュニケーションを取っています。もちろん、オフィシャルな時や日本の顧客や代理店に書類を送る際には日本と同じくメールを使います。また社内情報展開時などにはメールが好まれ、そのメールをベースに社内で議論がなされます。

このようにイスラエルのビジネスパーソンは、上手にコミニケーションを使い分けています。


「即座」のコミュニケーション

先ほどもお伝えした通り、イスラエルでのコミュニケーションはWhatsAppを利用しスピーディーに行われていますが、そのスピード感はまさに「即座」。


例えば、イスラエルの担当者は打ち合わせ中であっても、スマホを見る時間があれば即座に返信が来ます。日本でも基本的に営業系の方は返信が早いと思いますが、イスラエルでは営業であろうと技術系であろうと返信が早いです。もちろん現実的なプロジェクトが進んでる場合です。


ミーティングの様子

この「即座」のコミュニケーションは、日本とイスラエル間の約9000kmの距離を感じさせず、まるで隣にいるかのような感覚に陥ります。


その中でも、特にスピード感を感じられるのが、日本顧客(エンドユーザーもしくは代理店)と契約、PO、LOIを得る時です。「何が問題?どうすればクローズできる?ステータスは?フィードバックはあったか?」など、すぐに連絡が来ます。というのも、シリーズB*以下のイスラエルベンチャー企業の場合、売上を上げるだけでなく、契約書そのもの自体に価値があり、PO、LOIをもとに次のファンドも意識しているからです。


すなわち、日本側では、面白い技術だからトライアルをやってみよう!と少し軽い感じでスタートするパターンが多いのですが、イスラエル側では本気で臨みます。その背景を分からず、日本代理店とイスラエル企業側がギクシャクしてしまうこともよく見かけます。


*シリーズBシリーズA/B/Cとは、米国シリコンバレー発祥の言葉で、主にスタートアップ企業に対してのベンチャーキャピタルの投資判断の際に使われ、企業の成長段階に応じた投資ラウンドを指しています。ここで言うシリーズBとはシリーズAに続く資金調達です。シリーズAは、企業が、最初の重要なベンチャーキャピタル出資を受ける段階を指す名称です。シリーズBは、プロダクト(商品・サービス)やビジネスモデルが確立しつつあるミドルステージの段階で行われることが多いです。



日本は「ルール」、イスラエルは「目的」

日本のビジネスでは、ルール・前例・承認フローが重視されます。


一方イスラエルでは、目的を達成できるかどうかが最重要とされます。

  •   ルールは守るものだが、目的のためなら変えてよい
    •   手段より結果
      •   プロセスは柔軟に変更する

例えば、あるイスラエル企業が開発した商品があり、日本で展開する予定があるとします。ターゲットは日本企業です。しかし、この商品を日本国内で販売する為には、日本において認証機関から承認をもらわないと販売できません。この場合、多くの日本のビジネスマンは、認証を取れるまでは営業を行わないことが多く、国内で認証を取得した後に営業活動を開始するプランを立てます。販売するためには認証を取ることがルールなので当然です。こういったルールを守る、人と同じように生きる、出る杭は打たれるといった日本流が存在するため、場合により進みが遅くなり、スピード感が落ちてしまうのです。
そこで著者はイスラエルと仕事をする上で「Action First(行動第一)」を社内スローガンとして掲げています。


行動第一のイメージ

イスラエル人は、ルールを軽視しているわけではありません。彼らはルールは手段であり、ゴールではないと考えています。

  •   合理的であれば変更する
    •   非効率なら省略する
      •   目的達成に不要なら後回しにする

この考え方が、スピード感の正体です。


スピード型ビジネスに対応する3つのコツ

イスラエルのスピード感に対応するには、次の意識が重要です。


  •   完璧を求めすぎない
    •   仮決定を前向きに受け入れる
      •   問題は「止める理由」ではなく「改善点」として伝える

イスラエルとのビジネスで成功を収めるためには、ルールを守りながら、当たり前とされているプロセスの順番を今一度見直すなど、ビジネスを成功へ導く為のアイディアを常に考える事が重要です。DX、リモートワークなど、ITを活用したインフラが確立されるほど、自動的に全ての工程が早くなります。そしてその早いインフラの中でも、やはりスピード感が重要になってくるでしょう。


※記事は2021年8月13日に公開した記事を再編集しています