Share

FASHION

日本を愛する個性的イスラエル人ファッションデザイナー、カリン・ヴァシルク氏インタビュー

by Rotem Kles |2020年07月10日

Karin Vasilukデザインのドレス
Model : Karin Vasiluk / Photo : Eric Moskowitz

情熱的なイスラエル人ファッションデザイナー、カリン・ヴァシルク(Karin Vasiluk)さん(以下、カリンさん)は、イスラエルで最も有名なミュージシャンの一人であるNettaを見たとき、彼女のために服を作ることを決意しました。Nettaのスタイリストにフェイスブックを通じてメッセージを送りましたが、当時はデザイナーとしての知名度も低く、経験も浅かったため、正直返事が返ってくるとは期待していなかったそう。


しかしメッセージを送った数週間後、Nettaはカリンさんがデザインしたドレスをまとい有名な雑誌の表紙を飾るだけでなく、再生回数は数百万回を超えるミュージックビデオにも彼女のドレスを着て登場にしたのです。この年、彼女のデザインはVOGUEイタリアや、多くのファッション・プロダクションで採用され、彼女のブランドは成長を続けながら、ファンの層を広げていきました。



デザイナーになる前は、アニメーションを学び、その業界で働きたいと思っていたと話すカリンさん。幼い頃はよくアニメを見たり、漫画を読んだりして、いつかアニメーション業界で働くことを夢見ていました。そして兵役を終えた後、3Dアニメーションを学ぶためにアニメーションを勉強しましたが、それらを学び終えた頃には、思っていたほど自分がアニメ―ションを楽しめていないこと、そしてデザインやキャラクターを描いたりするほうが好きだということに気づいたそうです。


今回は、アニメーションの世界からファッションの世界に飛び込んだ、個性的イスラエル人ファッションデザイナー、カリン・ヴァシルクさんにお話を伺いました。


カリンさんがデザインしたドレス
Photo: Shlomi Tal / Model: Nika Dadon / Styling: Tal Ben Shlomo / Hair: Lee Ganem / Makeup: Liron Marton

―――ファッションデザインを始められたきっかけを教えてください。

カリン:以前勉強していたアニメーションにも関係していますが、私は絵を描くのでとても得意でした。自分の想像力を働かせて、服のスケッチを描くのが好きなのです。縫製などの基本的なことを学ぶために、いくつかのクラスを受けましたが、私がNettaにコンタクトした時には、自分のポートフォリオさえも持っていませんでした。しかし彼女たちは、私のスケッチを気に入ってくれ、チャンスを与えてくれました。それからは、すべてが目まぐるしい勢いで起こり、次から次へとプロジェクトが舞い込んできたのです。


―――服のデザインはどのように作っていますか?

カリン:いろんなものからインスピレーションを得ています。例えば、18世紀や19世紀のスタイル、ロリータ、人形のファッションまで。あと、ふくらみがあるデザイン、リボンや帯が付いたインパクトのあるシェイプも好きですね。柄や、生地、形など頭の中になにか1つのアイデアが浮かぶと、そのコンセプトを基に私は全体のデザインを作ります。時には、ランダムにアイデアを絵に描き始めて、それをデザインに落とし込んでいくのも好きです。


カリンさんがデザインしたドレス
Models: Maya Skorsky and Ronnie Schiff to La.models tlv / Photo: Rotem Barak / Makeup and Hair: Keshet Hakun and Noam Cohen
カリンさんがデザインしたドレス
Photographer: Angie Shiral / Model: Gaia Kay / Makeup and Hair: Lena Oislander

―――日本に興味があると伺いましたが、どうして日本に関心を持つようになったのですか?

カリン:日本に興味を持ち始めたのは、アニメを好きになった頃ですね。大きな目、力強い色使い、美しくてユニークなアートスタイルが大好きでした。ストーリーよりも、その画に引き付けられたんです。当時イスラエルで放送されていたアニメとは全く違いましたからね。それがきっかけでイスラエルにもアニメのカンファレンスやコスプレイベントなど、大規模なアニメや漫画の文化があることを知りました。私の日本への興味は、このイベントから芽生えたと思います。私も漫画を集めていて、同じ関心を持った人達にも会うことができました(私のお気に入りは『フルーツバスケット』(原作:高屋奈月)ですね。)日本語も少しだけですが、勉強したんですよ。


―――日本で訪れてみたい場所はありますか?

カリン:渋谷や原宿に行ってみたいですね。竹下通りを訪れて、ファッションスタイルやお店を見てみたいといつも思っています。インスタグラムで日本のストリートファッションをフォローしているのですが、どれもとても刺激的です。


―――面白いと感じられる日本の文化はありますか?

カリン:日本人の、プライバシーやパーソナルスペースを守りながらお互いを尊重する礼節に憧れます。また、いくつか本を読んだ際、日本の歴史や伝統文化、ファッションスタイルが面白いと感じました。イスラエルの伝統や文化とは全く違いますが、この文化の違いのおかげで自分自身を理解したい、学びたいと思うようになりました。


―――アニメーションを勉強しようと思った理由は何ですか?

カリン:私は、海外で働きながらアニメーターになりたかったんです。種村有菜さんや由貴香織里さんといった日本の漫画家のファンでした。10代の頃、絵を描くのが大好きで、イスラエルの漫画コンクールで優勝したこともあるんですよ。日本のアニメや漫画文化への愛情や感謝もあり、アニメーション業界に携わりながら働くことを目指していました。


―――日本の美学のどんな要素に感銘をうけられましたか?

カリン:私がインスピレーションを受けた要素がいくつかあります。

例えば、私のデザインで大きなリボンがついたものがあるのですが、この形や色のコンビネーションは日本の雰囲気を漂わせています。帯のようにも見えて、それが見た目に特別な空気感を与えています。私は、日本の伝統的な服装から着想を得た要素を少し加えて私のブランドの個性的なスタイルするため、特別な解釈や個人的なひねりを加えて調整するのが好きですね。


大きなリボンがついたドレス
Styling: Ron Sponton / Photo: Adi Herman / Model: Yuval Bader / Makeup and Hair: Tal Levi

―――カリンさん自身のスタイルがブランドに影響していると思いますか?

カリン:もちろん!

私の個人的なスタイルは、私のブランドに反映されています。例えば、マルチレイヤーのスカートやレース生地など、私自身が身に着けたいと思うものなどが表れています。リボンを髪につけたり、鮮やかな色を使ったりすることも好きですね。

私のブランドは私自身、そして私の日常生活の一部です。個人的なスタイルに選択やブランドのために作るもの、すべてが含まれているのです。


カリンさんがデザインしたドレス
Model: Nelly Vipchenko for mn2 Tel Aviv agency / Photographer: Noa Salti / Hair and makeup: Yael Eitan / Location: Sitrin design

―――これまでのカリンさんの一番の功績や今後の目標を教えていただけますか?

カリン:これまでの私の最も大きな功績は、Nettaがユーロビジョン(世界最大級の音楽コンテスト)のレッドカーペットで私が作ったデザインを着てくれたことです。イベント当日もそのデザインを着てくれて、多くのメディアで掲載されました。また、「エッセンス・コスメティクス(Essence Cosmetics)」や「パンドラ・ジュエリー(Pandora Jewelry)」といったビッグクライアントとも仕事ができたことはすごく光栄でした。

今後は、イタリアで行ったように、私のブランドを海外にも展開していきたいと考えています。もちろん、簡単にはいかないと思いますが、一番の夢は日本での展開ですね。

東京のさまざまなファッションシーンの中で、私の服も着てもらえるように、一生懸命頑張りたいと思っています。いつか東京ファッションウィークにも参加できるようになるかもしれません。


―――ぜひいつか日本にも遊びに来てくださいね!本日はありがとうございました。


カリン さんのブランド『BOOBA MACHO』についてはこちら

ウェブサイト

https://www.boobamacho.com/

インスタグラム

https://www.instagram.com/boobamacho/


カリンさんがデザインしたドレス
Model: Melat Yalo / Photographer: Michael Nachimobich / Styling: Tal Ben Shlomo / Hair and makeup: Daphne Beck