イスラエルショートフィルム「White Eye」がアカデミー賞のベストアクションショートフィルム部門にノミネート
トメル・シュシャン監督が手掛けた短編映画「White Eye」が、オスカーとして知られるアカデミー賞のベストアクションショートフィルム部門にノミネートされました。4/26に開催される第93回アカデミー賞にて、5作品の中から受賞者が発表されます。
本作品は、盗まれた自転車から物語が始まり、特権や偏見、アフリカからの移民、難民、亡命希望者に対するイスラエルの不当な扱いについて言及した、スピード感溢れるアクション映画です。今回のノミネートについてトメル・シュシャン監督は、人生において一番最高の瞬間であると述べています。
テルアビブ在住のオメル・アティアスが、盗まれた自分の自転車をメレツ通りで発見しますが、エリトリアの亡命希望者は、これは自分がテルアビブ中央バスステーションで、娘のために購入した自転車であると主張します。しかしオメルはそれを信じず警察に通報、事態は想像していたよりはるかに悲惨な方向へ・・・。
シュシャン監督は、この映画は実際に起こった事件に基づいた物語であると述べています。実際の事件の結末は映画の結末よりましなものであったものの、十分に気分が悪くなるできごとであり、家に着くなり40分で脚本を書き上げたとのことです。
「よくクレイジーな夢を見ては、起きてすぐにノートに全てを書き残し、忘れないようにしていたのですが、まるでそのような感覚でしたね。実際にクレイジーな事件を目の当たりにし、詳細を忘れる前に全てを書き起こしたのです。これは私に非常に大きな影響を与えました。」
「White Eye」の映画は、驚くべきことに全てをワンテイクで撮影。つまり、編集によりいくつかのカットを繋ぐのではなく、映画全体をひとつながりで撮影しています。そのため、俳優陣は何度もリハーサルを行い、映画全体を何度も何度も撮影しなければなりませんでした。
「主人公は、考えなしに本能で行動をし、立ち止まって息を落ち着かせるようなことはしない人間なのですが、映画を観ている人に彼との繋がりを感じさせたいと強く願っていました。いくつものカットを編集で繋ぎ合わせると、どうしても見ている人に理解するための間、呼吸する間というのを与えてしまいます。それを避けるために、映画全体をワンテイクで撮影することに挑戦しました。」
本作には、現在のイスラエルの社会構造を編成する、様々な背景を持つヘブライ語スピーカーの多様なグループが起用されています。主人公のオメルを演じるのは、人気ホームコメディ「シャバブニキム」にも出演したイスラエルの俳優ダニエル・ガッド。アフリカ系の俳優は、シュシャン監督がテルアビブの路上で出会った実在の人々によって演じられています。
本作は、オスカー認定の2020 SXSW映画祭で最優秀脚本短編映画賞を受賞するなど、既に高い評価を得ています。この映画が計100を超える映画祭に受け入れられた理由の一つに、黒人の人権を擁護する社会活動「Black Lives Matter」が話題になっていることがあるとシュシャン監督は述べています。
「この話題は、現在多くの人に語り掛けているものであると思います。イスラエルにおけるユダヤ人とイスラム教徒の対立は知られていますが、本作で扱うアフリカ系の人々に対する不当な扱いなどは、ある種新しいことであり、それについて知りたい人は多くいます。」