東日本大震災から10年―――。今なお仮設住宅に暮らしている人は数多く、行方不明者の捜索も続いています。この世界を震撼させた東日本大震災に際して、世界中のどこの国よりも早く医療団を被災地に派遣したのがイスラエルです。
震災直後から始まったイスラエルの東北支援は今なお継続しており、震災から10年の節目を迎えた今年は、イスラエルを代表するバンドと南三陸町の伝統芸能団体とコラボレーションした「311-321プロジェクト」や、津波で行方不明になった妻を探すために海に潜り続けている被災者を追った短編映画「行き止まりの向こう側」プロジェクトなど、駐日イスラエル大使館による東北イニシアティブが強化されています。
そしてこの度、新たな東北イニシアティブとして、「東北ーイスラエルスタートアップグローバルチャレンジ」が始動しました。
目次
「東北ーイスラエルスタートアップグローバルチャレンジ」とは
駐日イスラエル大使館と日本貿易振興機構(JETRO)が主催する本プロジェクトでは、東北のスタートアップ企業を世界で通用するグローバルスタートアップ企業へと成長させるため、スタートアップ大国イスラエルの専門家たちがメンターとなり、グローバルスタートアップとなるための講義やセッション、ビジネスマッチングを行います。2021年7月に開催されたキックオフイベントを皮切りに、2022年2月に予定している成果発表会に向けて、毎月開催される講義やメンタリングでグローバルで戦うために必要な実践的スキルや知識を習得します。
今回参加するスタートアップ企業は、Adansons、aiforce solutions、アジュール エナジー、ボールウェーブ、セルスペクト、チェンジ・ザ・ワールド、炎重工、ミーチュー、ソニア・セラピューティクス、サステナブルエネルギー開発の10社。東北から強い事業を作る事業創造企業グループMAKOTOグループを統括する株式会社MAKOTO、東北起業家やスタートアップ企業に対して投資を行う株式会社MAKOTOキャピタル、ハイテク起業家ベンチャーの成長を成功を促進する非営利団体MITエンタープライズ・フォーラム イスラエル、一つのグローバルな起業家エコシステムの構築を目指す非営利団体グローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク・イスラエル、IDF (イスラエル国防軍) の諜報部隊組織8200部隊出身者で構成される8200部隊同窓会という強力な運営体制の下、東北の起業家のレベルアップを図ります。
7月28日に宮城県仙台市で開催されたキックオフイベントは、駐日イスラエル大使のヤッファ・ベンアリ氏による挨拶の言葉に始まり、イスラエル国外務大臣兼首相代理のヤイール・ラピッド氏、日本国外務大臣の茂木敏充氏によるビデオメッセージ、経済産業省新規事業創造推進室長の石井芳明氏、Similarweb社共同創業者兼CEOのオア・オファー氏が基調講演などを行い、会場とオンライン視聴合わせて国内外から約200名が参加しました。
プロジェクト参加スタートアップ企業
キックオフイベントでは、プロジェクトに関する概要説明のほか、本プロジェクトに参加する東北スタートアップ企業10社がそれぞれの自社紹介、および意気込みを語りました。以下、参加企業です。
Adansons(AI技術)https://www.adansons.co.jp/
aiforce solutions(自動機械学習)https://www.aiforce.solutions/
アジュール エナジー(電池技術)https://www.azul-energy.co.jp/
ボールウェーブ(センサー装置)http://www.ballwave.jp/
セルスペクト(ヘルスケア技術)https://www.cellspect.com/
チェンジ・ザ・ワールド(太陽光電池マーケットプレイス)https://ctws.jp/
炎重工(スマート漁業)https://www.hmrc.co.jp/
ミーチュー(ITサービス)https://mechu.chat/
ソニア・セラピューティクス(医療機器)https://www.sonire-therapeutics.com/
サステナブルエネルギー開発(エネルギー技術)https://sustainable-energy.co.jp/
Similarweb社共同創業者兼CEOが語った起業家に必要な4つのこと
本イベントで基調講演を行ったオア・オファー氏が共同創業者兼CEOを務めるSimilarweb社は、2009年イスラエルでIT企業として誕生しました。創業当初は、BtoCマーケットリサーチのためのウェブサイト解析ツールを提供していましたが、2013年からはBtoBマーケットリサーチに軌道変更。2014年からは有償版をリリースし、2020年には売上1億ドルを達成。2021年5月には、ニューヨーク株式市場へ上場しています。Similarweb社をイスラエルのスタートアップ企業からグローバル企業へと成長させ、起業家でありながら投資家でもあり、イスラエルの最も影響力のある起業家100人に選ばれているオア・オファー氏は、起業家には次の4つのことが必要であると述べました。
1.タフであること、諦めないこと。上手くいかないことは変えること。
2.ビジネスにおいて、常に2手先のことを考えること。
3.問題点を探すのではなく、解決策を探すこと。
4.ヒトに投資すること。
東北から世界へ!
強力な運営体制の下、ついに始まった「東北ーイスラエルスタートアップグローバルチャレンジ」。人口当たりの起業家数が世界一を誇るスタートアップ大国イスラエルとして、駐日イスラエル大使館も特に力を入れているプロジェクトです。一体ここから何社がグローバルスタートアップ企業へと変貌を遂げるのでしょうか。今後の動向に注目です。