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BUSINESS

家事代行ロボット、Garyとの出会い

おもちゃや汚れた靴下を拾い、植物への水やり、配膳、ベッドシーツの交換、倉庫の荷物の移動までできるロボットが来年販売開始予定

by ISRAERU 編集部 |2021年11月08日

ロボットのGaryが掃除をしている写真です。
おもちゃを片付けるロボットのGary ©Unlimited Robotics

ハリーポッターに出てくるDobbyくらいの背丈をした彼は、決して反復作業やつまらない作業に対して文句を言いません。トイレ掃除や靴下を拾うこと、倉庫の荷物運びなど苦ではないのです。


彼の名はGary。自宅や会社で使えるロボットです。


ペタフ・ティクヴァを拠点とするスタートアップ企業のUnlimited Robotics社が、2022年初めに販売を予定しているGaryは、10歳の子供程度の身長、時速 約5km、重さ40kgの家事代行ロボットです。


「現在Garyは”裸”のままです」とUnlimited Roboticsの共同創業者でCEOのGuy Altagar氏は言います。「これはGaryが服を着ていない(実際に着ていないが)と言うことではなく、まだ全てのプログラミングが完成していないという意味です。」


しかし、開発者たちがAltagar氏の3人の子供たち、Gali、Rani、Yaeliの頭文字から名付けられたGaryのアプリ開発を開始した途端にこの状況は変わります。


Garyが花の水やりをしている写真です。
Garyが花の水やりをしています。Unlimited Robotics提供。

この遊び心溢れる背景とは裏腹に、Garyは「かわいい」を目指しているわけではありません。


会話式インターフェイスのアレクサを指し、「Amazonはなんだかかわいいものを開発している」とAltagar氏は言います。イスラエルのスタートアップであるIntuition Robotics社が開発した、高齢者向けの友達ロボット「ElliQ」もかわいらしいロボットです。


「私たちはかわいい産業には所属していません」とAltagar氏は強調します。「私たちは機能・実用産業に属しているのです。」


洗濯と水やり

確かにGaryは、要望に応じたお気に入りの曲をかけたり、孫にビデオ通話を繋げたりするために設計されたわけではありません。


代わりにGaryは、使用済のタオルを洗濯カゴから拾い、洗濯機に入れることができます。お花に水をやったり、食洗機に食器を入れたり、瓶を開けることだってできるのです。


車のトランクに荷物を積むGaryの写真です。
車のトランクに荷物を積むGary ©Unlimited Robotics提供

レストランでは食事を運んだり、お客さんのお出迎えし、またホテルでは、ベッドシーツを剥がし、シャンプーやコンディショナーを補充することができます。


Garyは2本の腕で約5kgまでのものを運ぶことができます (まだ洗濯物を畳むという美学は身に付けていないがとAltagar氏も認めます)。彼は3Dで部屋を撮影できる機能や、暗闇でも撮影可能な赤外線カメラやセンサーを搭載しています。


ロボットのGaryの写真です。
Garyは2022年に販売開始 ©Unlimited Robotics

GaryはUnlimited Roboticsのウェブサイトから事前予約可能。5,900ドル(=約67万円)と安くはありませんが(月100ドルの分割払いもできます)、すでに80人もの人が99ドルを支払い、ウェイティングリストに名を連ねています。


新規機能のダウンロード

多くの企業がロボットを開発する中で(Boston Dynamicsは個人用ロボット犬のAstroを含むいくつかのモデルを開発している)、Unlimited Robotics社はロボット専用の”アプリストア”で差別化を図っています。


アプリをダウンロードし、Garyに新規機能を追加することができます。Unlimitsed Robotics提供。

Garyに新しい機能が欲しい際は、ダウンロードするだけで準備完了です。開発者がアプリの料金を請求することを選択した場合、Unlimited Roboticsは30%カットの姿勢をとります。


Unlimited Robotics社は、ロボティクス専門のソフトウェアを学んでいなくても、全てのプログラマーがアプリを開発できる手段を提供しています。例えば、もし開発者がPythonやJavaScriptを使用すれば、Altagar氏の母から名付けられたUnlimited RoboticsのRa-Yaプラットホームがコードを翻訳し、ロボティクス・ハードウェアで作動するようにします。


Altagar氏は「継続的に言語を別の言語に変換できることは、ソフトウェア開発者の人々がウェブやモバイルだけでなく、ロボットのアプリケーションを開発できる大きな可能性を与える」といいます。


Ra-YaはGary専用のアプリケーションではありません。XiaomiとSamsungが6本の腕、4本の足を持ったロボットを開発したとしたら(Garyには2本の腕と車輪がついている)、Ra-Yaにより変換され、使用可能になります。


Altagar氏は、単一機能ロボット機器の機能を拡充するアプリも計画しています。窓掃除をする腕がついた未来型ルンバを想像してみてください。


ここまで行き着くのは容易な過程ではありません。


「アプリは窓を認識し、経路を把握し、掃除方法を学習しなければなりません」とAltager氏はいいます。


Ra-Yaのソフトウェア翻訳技術者は、Javascriptのコードをロボットのコンピュータービジョン、ナビゲーション、機械学習インフラストラクチャに接続する方法を把握していなければなりません。


社交的なロボット

Garyが初めて家や会社に届くとき、彼はある意味白紙状態のままです。大まかなことはアプリが教えてくれますが、パーソナライズが必要です。


「所有者がどこに寝室があるのか、拾って欲しい靴下はどこに落ちているのかをGaryに教えます。最初のやりとりを経て、Garyはフィードバックを要求します。所有者が出来を評価し、次回にはGaryが改善する流れです」とAltagar氏は言います。


洗濯物を洗濯機に入れるGaryの写真です。
洗濯物を洗濯機に入れるGary ©Unlimited Robotics

社交的な子であるGaryは、自宅や施設で学んだことをインターネットを通して他のデバイスとも共有します。


Altagar氏は「自宅の移動経路の共有は役に立たないかもしれませんが、靴下がなんであるかや最適な回収方法、またはコーヒーの運び方などは共有できます」と言います。


GaryはJetsonsに登場するRosieの現実バージョンではありません。実際に、このロボットは男性として設計されましたとAltagar氏は教えてくれました。「私たちは女性が”お守り”をする形式をとりたくなかったのです」


火からおもちゃまで

Altagar氏はロボット工学を学んできたわけではありませんでした。彼は法律と経済をテルアビブ大学で学び、携帯ゲームのスタートアップを立ち上げました。その会社は成功しなかったものの、彼の企業家精神に火をつけました。


Unlimited Roboticsの共同創業者兼CEOのGuy Altagar氏の写真です。
Unlimited Roboticsの共同創業者兼CEOのGuy Altagar氏 ©Unlimited Robotics

ロボット工学

Gary開発のきっかけは消防士を助けることでした。


「2019年、カリフォルニアとイスラエルでは多くの火災が起こっていました」とAltagar氏は言います。「唯一の解決手段は飛行機からの放水でした。そこで私たちは火元に入り込み、水やその他資源を放つことのできるロボットを開発できないかと考えました。」


Garyは、Altagar氏が想像していたよりも少し「野心を持った消防士」でした。


「3人の子供が家中におもちゃを散乱させ、それを拾い集めて背中を痛めたことからアイデアを得ました」


Altagar氏は、バルイラン大学工学部のEli Kolberg博士と今日会社の最高技術責任者および最高製品責任者であるMartin Gordon氏、それぞれとチームを組みました。現在26人の社員が在籍しており、22人がペタフ・ティクヴァ、残りがコロンビアとジョージアにいます。


Unlimited Robotics社は、WixのCEOであるAvishai Abrahami氏から着手金を調達し、1500万ドルのシリーズAラウンドを終了させています。


Unlimited Robotics社は12月に、Garyで使用できるアプリ開発のために開発者向けハッカソンを開く予定です。


機械と人間

Altagar氏はホテル、病院、介護施設、スタジアム、学校、図書館、博物館やもちろん家庭でGaryが使用されることを願っています。


Garyは人の職を奪う目的で開発されたのではない一方で、レストランから病院までの全ての業界で人手不足が続く中での発売となります。


「私たちは機械と人間が共存する新しい時代に突入しようとしています」とAltagar氏は言います。


「ロボットはすでに倉庫や物流拠点といった、一眼につきにくい場所で活躍しています。私たちはここ1、2年でロボットが人間に近付くと信じています」


Garyはハッキング可能なのでしょうか。Altagar氏はUnlimited Robotics社が「発見できる最も優れたセキュリティーを使用」していると強調します。


また、GaryはAmazonのアレクサのように人の会話を聞いたり、勝手に写真を撮影したりしません。彼の頭を覆うことのできるフードが付属品としてついてくるので、彼が監視や録音しないことを保証できます。


「私たちはあなたが青の靴下を履こうが、赤い靴下を履こうが、興味はありません。この情報は自宅以外に漏洩しません。私たちが関心を持つのは、Garyの能力を高めるために、あなたの靴下の形です。」


テスラのCEOであるElon Musk氏は、2021年8月「安全でない、または反復的で退屈な作業」を処理するように設計された、Garyのようなヒューマノイドロボット「Tesla Bot」の製作に取り組んでいることを明らかにしたときに、パーソナルロボティクスの業界全体に拍車をかけました。


「これが人々がよりこの業界に注目するきっかけとなったのです」とAltagar氏は言います。


情報提供:ISRAEL21c

テキスト:Brian Blum