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BUSINESS

最先端テクノロジーが集結!CES2022に参加したイスラエル企業

by 新井 均 |2022年01月20日

クレジット:Consumer Technology Association

今年のCESは、現地時間1月3日から7日までの5日間(展示会は5日から)、ホームグラウンドであるラスベガスでリアルどオンラインのハイブリッドで開催された。


以前のCESはその名前の通りConsumer Electronics Showであり、オーディオ、ビデオ、ゲームなど消費者向けエレクトロニクスの最新技術発表の場だったが、いつからか、あらゆるテクノロジーのショーケースとなり、近年ではEVの発表の場としても注目されている。ソニーがEVへの参入を発表したのもCESの場である。新型コロナウイルスの感染拡大により、対面からオンライン参加に切り替えた企業も多かったようだが、日本からはソニーなどの大企業だけではなく、JETROのサポートにより50社以上のスタートアップも対面で参加した。主催者は、多くの中小企業やスタートアップが対面でのCESを望んでおり、彼らの未来のためにも対面開催を決断した、とコメントしている。


クレジット:Consumer Technology Association

多くのテクノロジー系メディアがイベントレポートを出しているので全体のトピックはそちらを参照いただきたいが、今年の主要な話題はやはりEVメタバースではなかったろうか。ここではそれらのトピックに触れるのではなく、当メディアらしく、CESに参加したイスラエル企業を紹介したい。駐日イスラエル大使館経済部によれば、当初は18社が参加予定だったようだが、アメリカでのオミクロン株感染拡大状況を受け、イスラエル政府がアメリカをREDカントリーに指定したことで渡航が困難になった。しかし、これらの企業は政府にCES参加のための特別な許可申請を提出し、イスラエルイノベーション庁から渡米制限免除を受けた、とのことである。その後、ラスベガス地区での感染状況を踏まえて独自の判断で参加を取りやめた企業もあり、最終的には9社の参加となったようだ。


参加企業それぞれの概要を以下に示す。


CES2022参加イスラエル企業

1.       BIOBEAT TECHNOLOGIES LTD

血圧、脈拍をはじめとする13種類のバイタルサインを非侵襲のウェアラブルデバイスでモニターし、ビッグデータとAIにより、患者の症状悪化を遠隔でモニターする。、デバイスには使い捨ての短期胸部モニターと長期手首モニターがあり、どちらも光電式(PPG)センサーを利用している。


出典:Start-up Nation Central

2.       BZIGO LTD

テーブルの上に置ける小型のデバイスが部屋内の蚊を数秒で検知し、検知するとWiFi経由で利用者のスマートフォンに通知するとともに、レーザーマーカーで蚊の正確な位置を示すので、利用者は簡単に蚊を駆除することが可能。今後は自律的に駆除も行えるようにして、家庭やオフィスだけではなく、厩舎などでの利用も想定する。



3.       Cecilia.ai

会話型AIと音声認識により、来場者と対話・チャットを行い、時にはジョークも交えながら顧客の求めるカクテルを30秒以内に提供することができるロボットバーテンダー。イベントやクルーズ船などで活用、企業の宣伝媒体ともなる。



4.       IROMA SCENTS A.B. LTD

5000以上の香りを格納できる小型の電池駆動デバイスにより、映画やCM、ゲームなどの映像エンタテイメントにシンクロしたり、あるいはオンデマンドで一度に最大45種類の異なる香りを提供する。


5.       MOODOAIR LTD

こちらも香りのディフューザーで、Siri、Alexa、GoogleHomeなどと連動する。30種類以上の香りはリサイクル可能なカプセルで提供され、アプリを使って何千種類の組み合わせ・カスタマイズが可能。熱やオイルを使わない方式。



6.       SILENTIUM LTD.

Quiet Bubble™という技術で、自動車の車内で搭乗者がヘッドホンを使用せずに、エンジンや風やタイヤなどからのノイズをキャンセルし静かな環境を得ることができる。さらに、パーソナルサウンドバブルPSB™では、他人の邪魔をすることなく、自分だけの音を体験することが可能。



7.       TikBag

子供たちが通学に利用するカバンの中身を非接触で読み取り、忘れ物や不要なものがないかをチェックし、重量やバランスを測るアプリ。重いカバンは成長の途上にある子供にとって良いものではなく、子供の健康を守る為に開発された。


8.       Vbox

旧来のTV放送と、インターネット経由で提供されるネットフリックスなどのOTT(Over the Top)サービスを統合したデバイス。スマートフォン、タブレット、XBoxなどマルチデバイス対応。プロ向けも個人向けも用意。



9.       Visionery.ai

AIを活用したソフトウェアベースのISP(Image Signal Processor)技術で、夜間の低照度、ノイズ、露出不足、などの低品質画像・映像を処理し、見えなかったものが見えるような最高レベルの画像品質に改善する。

CES2022参加イスラエル企業のロゴ

言葉による説明だとなかなか技術や製品の具体的なイメージがわかないかもしれないが、各社の社名をクリックしてWEBサイトへいけば、わかりやすいビデオや図があるので参考にしてほしい。#6のSILENTIUM LTD.は数年前に東京でデモをしたことがあり、筆者も体験した。運転席と助手席が異なる”バブル”に入るので、ヘッドフォンをつけていないのに隣り合う席で別々の音楽を聞けたのに驚いた記憶がある。蚊の検出だとか通学カバンの最適化など、これらの9つからは、時流の”メタバース”のような話題性と華やかさは感じられないかも知れないが、それぞれの技術・製品は既に商用化して実績もある。アイデアと技術力により、ニッチな市場のニーズを着実に取ってゆくのがイスラエルのスタートアップらしい。


以前ISRAERUで紹介した自動車へのサイバー攻撃リスクを防ぐCybellumも当初は参加予定であったようだ。参加出来なかった企業のためには、イスラエル輸出国際協力機構のCES担当者数名及び、米国の幾つかの拠点及びメキシコから商務官が派遣されて、来場者対応等をしたとのことである。来年のCESではイスラエルからより多くの企業が参加し、主流となる分野でも存在感を発揮することを期待したい。