イスラエル系ユダヤ人とパレスチナ系アラブ人の若者たちが、ひとつのグループとして世界デビューを果たしました。音楽業界のベテランたちが手掛けたボーイズグループ「as1one」は、対立や分断を超えて協力する姿を通じ、新しいメッセージを発信しています。

「ひとつになる」という名前に込められた思い
「as1one アズワン」は、“as one(ひとつになって)”を意味する名前を持つ6人組ポップグループです。メンバーはイスラエル系ユダヤ人とパレスチナ系アラブ人で構成され、宗教的にもユダヤ教、イスラム教、キリスト教という異なる背景を持っています。
グループ誕生のきっかけは、音楽業界で数々のスターを発掘してきたジェームズ・ダイナー氏とケン・レビタン氏の構想でした。2人はイスラエル各地でオーディションを実施し、1,000人を超える応募者の中から現在の6人を選出。世界市場を視野に入れ、英語で歌うグループとして育成を進めました。
戦争勃発と重なったデビューへの道
「as1one」の物語が世界から注目を集めた理由のひとつは、その活動開始のタイミングでした。
2023年10月6日、メンバーたちはデビューアルバム制作のためロサンゼルスへ渡航。しかしその翌日、イスラエルでハマスによる大規模攻撃が発生し、ガザ戦争が始まります。家族や友人を故郷に残したまま、彼らは遠く離れたアメリカで不安な日々を過ごすことになりました。
この出来事はグループの活動にも大きな影響を与えました。しかし、異なる背景を持つメンバーたちは分裂するのではなく、互いを支え合いながら活動を続けたと報じられています。

ナイル・ロジャースとの共演でデビュー
「as1one」は2024年、伝説的ミュージシャンのナイル・ロジャースを迎えたデビュー曲『All Eyes On Us』をリリースしました。ロンドンのアビーロード・スタジオでのレコーディングも行われ、世界的プロデューサーやソングライター陣と制作を進めています。
彼らの音楽は、政治的な主張を前面に出すものではありません。むしろ、「異なる立場の人々が協力できること」を示すことに重点が置かれています。メンバーたちはインタビューの中で、自分たちは政治家ではなくミュージシャンであり、音楽を通じて人々をつなげたいと語っています。

ドキュメンタリーも話題に
「as1one」の結成からデビューまでの道のりは、4部構成のドキュメンタリーシリーズとして映像化されました。作品では、オーディションやトレーニングの様子だけでなく、戦争勃発後にメンバーたちが直面した葛藤や対話も描かれています。
異なる民族や宗教的背景を持つ若者たちが、共同生活や音楽制作を通じて理解を深めていく姿は、多くの視聴者の関心を集めました。

イスラエル社会の多様性を映す存在
日本では、イスラエルとパレスチナの関係が対立の側面から語られることが少なくありません。しかし実際には、イスラエル国内にはユダヤ人、イスラム教徒、キリスト教徒など多様なコミュニティが共存しています。
「as1one」は、その複雑で多様な社会の一面を映し出す存在とも言えるでしょう。音楽グループとしての成功がどこまで広がるかはこれからですが、彼らの挑戦は「違いがあるからこそ協力できる」という可能性を世界に示しています。音楽を通じて生まれた6人の友情は、分断が語られることの多い中東から届いた、ひとつの希望のストーリーなのかもしれません。


