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SOCIAL INNOVATION

イスラエル発、障がい者就労支援の革新モデルが日本へ

by ISRAERU 編集部 |2026年08月27日

障がいのある人を「支援の対象」ではなく、「社会の担い手」として捉える——。そんな新しい発想の就労支援モデルを実践するのが、イスラエルの社会的企業Shekulo Tov Groupです。国際的に高い評価を受けるその取り組みは、いま日本でもスタートラインとの協業を通じて新たな広がりを見せています。


Shekulo Tov Groupとスタートラインが推進する障害者就労支援とIUMモデル

障がい者就労支援に新たな視点をもたらしたShekulo Tov

イスラエルは「スタートアップ国家」として知られていますが、その革新性はテクノロジー分野だけにとどまりません。社会課題の解決においても数多くの先進的な取り組みを生み出しており、その代表例の一つが「Shekulo Tov Group シェクロトブ・グループ」です。


2005年に設立された同団体は、精神障がいや発達障がいなどさまざまな困難を抱える人々が、地域社会のなかで自立し、自分らしく働きながら暮らせる環境づくりを進めてきました。現在ではイスラエル国内で幅広い事業を展開し、多くの利用者の社会参加と就労を支援しています。


「Shekulo Tov」とはヘブライ語で「すべてが良い」「みんなのために」といった意味を持つ言葉です。その名称には、一人ひとりが尊重され、社会の一員として活躍できる環境をつくりたいという理念が込められています。


Shekulo Tovのリアルジョブトレーニングとして運営されるソーシャルカフェ

「保護」ではなく「活躍」を支援する発想

従来の障がい者支援は、福祉サービスや保護的な支援を中心とするケースが少なくありませんでした。しかしShekulo Tovが重視するのは、障がいのある人々を受け身の存在として捉えるのではなく、社会のなかで価値を生み出す存在として支援することです。


その背景には、イスラエル社会に根付く実践重視の文化があります。人が持つ可能性に着目し、挑戦する機会を提供することで成長を後押しする。その考え方が障がい者支援の分野にも生かされています。


同団体が目指しているのは、単に就職することではありません。働くことを通じて自信を育み、人とのつながりを築き、自らの役割を見出していくことです。就労はゴールではなく、社会参加を実現するための重要なプロセスとして位置づけられています。


イスラエル保健省と開発した独自モデル「IUM」

Shekulo Tovの活動を支えるのが、イスラエル保健省と共同開発した「Integrated Unit Model(IUM)」です。

このモデルでは、利用者一人ひとりの特性や希望に応じて個別の支援計画を作成し、段階的に就労経験を積み重ねていきます。職業訓練だけではなく、生活面や心理面のサポートも含めながら、一般就労や社会参加へとつなげていく包括的なアプローチが特徴です。


また、支援は施設内だけで完結しません。地域社会や企業との接点を積極的に創出し、実際の仕事を経験しながら成長できる環境を整えています。こうした実践的な仕組みによって、多くの利用者が就職や社会復帰を実現してきました。


その成果は国際的にも高く評価され、障がい者の社会参加を促進する革新的なモデルとして国連関連機関やOECDをはじめとするさまざまな組織から注目を集めています。


2022年「Israel Impact Award」授賞式
2022年「Israel Impact Award」授賞式

「リアルな仕事」が成長を生み出す

Shekulo Tovの特徴を語るうえで欠かせないのが、「リアルジョブトレーニング」という考え方です。


同団体はカフェやリユースショップ、古書店など複数のソーシャルビジネスを運営しています。利用者は実際の店舗で接客や販売、商品管理などを担当しながら、仕事に必要なスキルを身につけていきます。


重要なのは、それらが訓練のためだけの模擬環境ではないという点です。実際のお客様が訪れ、地域の人々が集う場所で働くことで、利用者は社会との接点を自然に広げていきます。


仕事を通じて責任感や達成感を得るだけでなく、人との関わりや地域とのつながりを実感できることも大きな価値です。この「本物の仕事」を通じた学びこそが、Shekulo Tovの支援モデルの核となっています。


障害者就労支援の一環として実際の店舗で調理業務を経験する利用者

リアルジョブトレーニングの場となるShekulo Tovのカフェ

社会課題を解決するソーシャルイノベーションとして

Shekulo Tovの取り組みは、障がい者福祉の枠を超えた社会イノベーションとして評価されています。


世界各国で障がい者雇用の重要性が叫ばれる一方、実際には就労機会や職場定着に課題を抱える人は少なくありません。そのなかで同団体は、福祉と雇用、地域コミュニティを有機的につなぎ、新しい社会参加のモデルを構築してきました。


障がいの有無に関わらず、一人ひとりが能力を発揮できる環境をつくることは、より多様で包摂的な社会の実現につながります。Shekulo Tovは、その可能性を具体的な形で示している存在と言えるでしょう。


日本との接点――スタートラインとの協業

こうしたイスラエル発の先進的な取り組みに着目したのが、日本で障がい者雇用支援を手がけるスタートラインです。


スタートラインは長年にわたり、企業の障がい者雇用支援や定着支援に取り組んできました。そのなかで、一般就労に向けた実践的な訓練の場の必要性を感じ、海外の先進事例の調査を進めていました。

2024年には関係者がイスラエルを訪れ、Shekulo Tovの施設や事業を視察。障がいのある人々が地域社会のなかで自然に働き、成長していく姿に強い共感を抱いたといいます。その後、両者はパートナーシップを締結し、日本におけるIUMモデルの導入を進めてきました。


イスラエルのShekulo Tov施設を視察するスタートライン関係者
イスラエルのShekulo Tov施設を視察するスタートライン関係者

その象徴的な取り組みが、さいたま市に開設された「GOOD THE GOOD」です。実際に営業するカフェを活用したリアルジョブトレーニングの場として運営されており、Shekulo Tovの理念とスタートラインの知見が融合した拠点となっています。


カフェ業務を通じて就労スキルを身につけるリアルジョブトレーニング

イスラエルで生まれた社会イノベーションが、日本の現場で新たな形へと発展し始めています。Shekulo Tovとスタートラインの協業は、障がい者就労支援の未来を考えるうえで、国境を越えた挑戦の好例として注目を集めています。