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AGRICULTURE

気候変動に挑む新たな小麦 イスラエルとパレスチナの共同研究が生んだ「Ufuq」

by ISRAERU 編集部 |2026年08月18日

気候変動による高温化と水不足が深刻化する中東で、イスラエルとパレスチナの研究者が5年間にわたる共同研究を実施し、高温・乾燥環境に適応する新しい小麦系統「Ufuq ウフク」を開発しました。農業技術だけでなく、国境を越えた科学協力としても注目を集めています。


気候変動に対応する小麦の栽培をイメージした黄金色の麦畑

国境を越えて始まった共同プロジェクト

世界中で気候変動の影響が広がるなか、農業は最も大きな影響を受ける分野の一つです。とくに中東では、平均気温の上昇に加え、冬の短縮や降雨パターンの変化が進み、小麦をはじめとする農作物の生産環境が年々厳しさを増しています。


こうした課題に対応するため、イスラエルのヘブライ大学、パレスチナのアル・クドゥス公衆衛生協会、そしてオランダのワーヘニンゲン大学の研究者が共同でプロジェクトを実施。研究を主導したのは、ヘブライ大学農学・食品・環境学部のツビ・ペレグ教授です。約220万ユーロ(約3億7千万円)の研究資金は、オランダ外務省の支援を受けて提供されました。


「乾燥に強い」だけでは足りない

研究チームの目標は、「乾燥に強い小麦」を見つけることだけではありません。水不足の環境でも十分な収量と品質を維持し、適切な時期に成熟し、実際の農地で安定して栽培できる品種を育成することでした。


干ばつへの耐性を持つ植物は、生育速度や収穫量が犠牲になることも少なくありません。そのため研究では、植物育種、遺伝学、農学、圃場試験を組み合わせ、多面的な評価を重ねながら最適な系統を選び出しました。


その成果として誕生したのが、「Ufuq ウフク」と名付けられた新しい小麦系統です。


気候変動に対応する小麦の栽培をイメージした黄金色の麦畑

「Ufuq」に込められた未来への願い

「Ufuq」はアラビア語で「地平線」や「未来への展望」を意味します。ヘブライ語の「Ofek(オフェク)」も同じ意味を持つことから、この名称には、農業の未来だけでなく、国境を越えた協力への願いも込められています。


研究では、将来予測される乾燥環境を再現するため、人工的に降雨を遮断できる実験施設を使用しました。さらに、植物の状態を詳細に解析するために、ハイパースペクトルカメラも導入されています。


このカメラは、人間の目では確認できないさまざまな波長の光を解析し、水不足による植物の変化を早い段階で検出できます。葉の色や形が変わる前からストレス状態を把握できるため、気候変動に適応する品種開発の有力なツールとして期待されています。


プロジェクトで開発された小麦系統「Ufuq ウフク」
プロジェクトで開発された小麦系統「Ufuq ウフク」(Photo:ツビ・ペレグ教授)

食料安全保障を支える新たな選択肢

小麦は世界で最も重要な穀物の一つであり、多くの国で主要なカロリー源・タンパク源となっています。しかし、気候変動による気温上昇や降雨量の減少は、その生産量を大きく左右します。とくに水資源の乏しい中東では、安定した小麦生産は地域の食料安全保障に直結する課題です。


もちろん、「Ufuq」だけで気候変動の問題を解決できるわけではありません。灌漑技術の向上や土壌保全、播種時期の見直しなど、さまざまな取り組みと組み合わせることで初めて大きな効果を発揮します。それでも、環境変化に適応した品種の開発は、その重要な柱の一つと考えられています。


気候変動に対応する小麦の栽培をイメージした黄金色の麦畑

科学は国境を越えられる

このプロジェクトにはもう一つ、大きな意義があります。政治的・安全保障上の緊張が続く中でも、イスラエルとパレスチナの研究者は5年間にわたり共同研究を継続しました。


食料、水、そして気候変動は、国境で区切ることのできない課題です。だからこそ、このプロジェクトは新しい小麦を生み出しただけでなく、科学が異なる地域や立場をつなぎ、共通の未来を築く力を持っていることも示しました。


気候変動に対応する小麦の栽培をイメージした黄金色の麦畑

「Ufuq」はまだ研究段階にあり、商業栽培にはさらなる試験や品種登録が必要です。それでも、この取り組みは、気候変動という世界共通の課題に対し、イスラエルの農業科学が国際協力と最先端技術を融合させながら、新たな解決策を生み出していることを示す好例といえるでしょう。


*本記事はイスラエルメディアHayadanの報道をもとに構成しています。