
イスラエルの世界遺産をご紹介するシリーズ第6弾。
今回ご紹介するのは、2008年に世界文化遺産に登録された「ハイファ及び西ガリラヤ地方のバハーイー聖地群」。
バハーイー教の創始者であるバハオラの霊廟や、バーブ教の開祖・バーブの霊廟など、美しい建築物が立ち並ぶが世界遺産を、詳しく掘り下げていきましょう。
ハイファと西ガリラヤのバハーイー教聖地群とは?
19世紀にイランで発展したバーブ教から、さらに発展したバハーイー教。
その聖地は、イスラエル北部の大都市ハイファと近隣の町アッコー、そして、西ガラリヤ地方に点在しています。
現在でも、数多くの信者が訪れるこの地には、26もの遺産が登録。バーブとバハーイーの霊廟をはじめ、住宅や庭園、近代建築などで構成されています。

バーブ廟
ハイファの中心部にあるバーブの霊廟。
現在のイランで生まれたバーブ(本名:セイイェド・アリー・モハンマド)は、イスラム教徒でありながら、自ら預言者として「バーブ(門という意味)」と名乗り、バーブ教の始祖となりました。
バーブはシャリーア(イスラム法)の廃止などしたため、イランでは弾圧を受け1850年に処刑。
その後、後継者であるバハオラは、バーブの流れを組む、バハーイー教の開祖となりました。
しかし、彼はイランを追放され、パレスチナのアッコーへ。そこで、イランから開祖であるバーブの遺骸を、ハイファのカルメル山に移動し、霊廟を建設しました。
1909年に完成した「バハーイー世界センター」のひとつとなったこの場所は、カルメル山の斜面に18ものテラスがあり、その中心部にある霊廟は、西洋と東洋の建築様式が融合。花崗岩の列柱やオリエント風のドームなども見ることができます。

バハーイー廟
ハイファからアッコーの郊外にあるバハーイー教の開祖であるバハオラの霊廟。
バハオラは、イラン本国から追放された後、1892年に亡くなるまで本邸宅に在住。
その後、彼の息子アブドル・バハによって、彼の霊廟を含めてハラム・イ・アクダスと呼ばれる庭園が建造されました。
ここも、バハーイー世界センターに含まれており、バハーイー教徒の巡礼地となっています。
ハイファと西ガリラヤのバハーイー教聖地群が世界遺産に登録された理由とは?
さて、このハイファと西ガリラヤのバハーイー聖地群。なぜ、世界遺産に登録されたのでしょう。
その理由は、大きく分けて2つ考えられます。
そのひとつが、この地は全世界のバハーイー教徒が多く訪れる聖地で、最も神聖な場所であること。そして、バハーイー教の伝統を証明するものであるという点。
そしてもうひとつが、バーブが眠るバーブ廟とバハオラが眠るバハーイー廟が、バハーイー教の歴史とその教義を示す場所であるという点。
現在のイランで生まれたバーブ教とその流れを組むバハーイー教。国内では弾圧され、この地を本拠地としたために、教祖たちの霊廟を中心とした世界センターが築かれ、その歴史と教義が示されているという点で評価されているそうです。

さらに、バーブ廟のあるハイファのカルメル山は、カルメル会というローマ・カトリックの修道会があるなど、キリスト教の聖地という側面も。
ハイファは、バハーイー教やバーブ教だけではなく、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など、さまざまな宗教の信徒が暮らすモザイク都市でもあるのです。
イスラエルには、日本ではあまり知られていない世界遺産がまだまだあります。
次回もお楽しみに。


