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BUSINESS

イスラエル最大の港「アシュドッドポート」の未来へ向けた展望

by ISRAERU 編集部 |2025年09月24日


大阪・関西万博で、独創的な存在感を醸し出している「イスラエルパビリオン」。

そのパビリオン出展のサイドイベントとして、東京と大阪で開催された「サイバーテック 2025」のカンファレンスにて、これからの海運のあり方、そして重要性について、イスラエル最大の港「アシュドッドポート」の取締役会会長であるシャウル・シュナイダー氏が語りました。

また、9月5日に都内で行われた記者会見にて、今後の海運におけるサイバーテックの必要性と未来の展望について語られたシュナイダー氏のコメントをご紹介します。


イスラエル最大の港であるアシュドッド港。
イスラエル最大の港であるアシュドッド港。

世界情勢に対応した新たな戦略

「現在、私たちは世界の超大国間における貿易戦争の真っただ中にあるといえるでしょう。それは、イスラエルの流通や経済にも、大きな影響を与えています。また、船舶への攻撃なども大きな問題となっており、世界で年間数兆ドル規模の損害を受けています」と語るシュナイダー氏。

激動の世界情勢の中、海運事業においても、その影響は少なくないそうです。

「イスラエルでは、現在6つの港が稼働しています。その中でも、私たちのアシュドッド港はイスラエルで唯一の国営の港で、11の埠頭と48台のクレーンを有する大規模な港です。
また、イスラエルに届くコンテナの約40%を受け入れている非常に重要な貿易拠点となっています。
海運は、古くから続く非常にトラディショナルな産業ではありますが、常に世界情勢の変化に対して柔軟に対応していくことが責務となっています。
そのため、非常に速い世界の変化に対応するために、私たちは新しいプログラムの立ち上げや新たな戦略の企画などを常に進めており、効率化や安全性のを追求を続けています」。


テルアビブの南に位置する、地中海に面したイスラエルの主要港。
テルアビブの南に位置する、地中海に面したイスラエルの主要港。

重要性が高まるスタートアップとの連携

新たな戦略について具体的な内容を尋ねてみると、そのひとつは世界でも類を見ないスタートアップとのリレーションが鍵を握っているとのことでした。

「私たちの港では、スタートアップのためのプラットフォームとして改革を進めてきました。私たちがスタートアップを支援するとともに、スタートアップが私たちの港より安全に、そしてより近代的にサポートし、より多くの利益をもたらしてくれるという関係性を培うための試作を実践してきました。

現在、アシュドッド港では105社のスタートアップ企業を支援しており、44社が概念実証(POC)を終了しています。その他に、40社が協力会社になりました。私たちがサポートする会社には、第1段階で100万ドルを支援しています。さらに、その支援の継続も行っており、今後2年間で5500万ドルの予算を企業投資に活用する予定です」。

今後もスタートアップとの連携を強めていくことで、効率化と安全性の実現を目指すアシュドッド港。
その運営の中で、重要視していることをシュナイダー氏が語ってくれました。


海運におけるサイバーセキュリティの重要さを語るシャウル・シュナイダー氏。
海運におけるサイバーセキュリティの重要さを語るシャウル・シュナイダー氏。

「こうした状況の中、私たちには特に大切にしている2つの要素があります。そのひとつが、人間が持つ力や能力といった人的要素。そして、もうひとつが、効率性と安全性を向上させるための技術的要素です。この2つの要素は、これまでも、これからも欠かせないものとなっています。特に、昨今はサイバー攻撃によって、世界中の人々が苦しめられており、その手法は日に日に悪質かつ高度なものになっています。
こうした中、私たちはイスラエルのサイバーテック企業と連携し、イノベーションの力によって、新たな形で安全性を高めていくことで協力関係を築いています」。


サイバーセキュリティをはじめ、先進的なテクノロジーを駆使した港。
サイバーセキュリティをはじめ、先進的なテクノロジーを駆使した港。

また、アシュドッド港は、世界の27の港や船会社とアライアンスを進め、共通の課題解決に向けて取り組んでいるとのこと。

「私は、この1ヶ月余りの間に、2度日本に訪れて、横浜港、神戸港、大阪港を訪問するとともに、大阪と東京でのフォーラムに参加しました。
そこでは、これからの海運のあり方はもちろん、サイバー攻撃に対応するためのサイバーテックの重要性についてお伝えしました。
あまり良いことではありませんが、私たちは他のどの国よりもサイバー攻撃を受けた経験があると自負しています。そうした経験を日本とも共有し、学び合うことによって、サイバー攻撃を受けた際の対応はもちろん、サイバーセキュリティ分野においても強く協力したいと考えています」。

シュナイダー会長は、中東の地政学リスクをはじめ、いま世界が抱えている様々な問題を例に挙げ、これからのアシュドッド港における貨物取扱量の目標や未来へ向けた展望についてもコメント。
その実現において、サイバーセキュリティの存在が不可欠であることを示唆していました。
ますます重要となるテクノロジーの進化において、IT先進国イスラエルの役割の大きさを垣間見る機会となりました。




シャウル・シュナイダー(Shaul Schneider)


アシュドッド港 取締役会会長
経営者 | 財務ガバナンスの専門家 | 公共・民間部門のリーダー



公共部門、資本市場、インフラ、通信、不動産、投資運用など幅広い分野で25年以上にわたり、リーダーシップ経験を有する経営者・取締役。
戦略的洞察力と事業再建の専門性で知られ、数十億シェケル規模の組織を統括。
機関投資家に対しても、複雑な再編プロセスにおける助言を行ってきました。
現在、イスラエルの国家港湾である「アシュドッド港」の取締役会会長を務め、
1,300人を超える従業員と年間12.5億シェケル(約500億円)の収益を誇る同港を率いています。