Share

Academy

シャロームアカデミー:世代が出会い、イノベーションが生まれる場所

by Keiko |2026年05月18日

ビジネスや文化をはじめ、日本とイスラエルを深く結びつけているものの中に、Academic―学問・研究の分野があります。ISRAERUでは、研究者・学生へのインタビューなど、いま私たちが知りたい最先端の学問を通じて、日本とイスラエルの未来を考える新連載『研究者から学ぶ! シャロームアカデミー』をスタート。第1回目は、本連載のオーガナイザーでもあるクシェレヴィチ・ハダス博士のインタビューをお届けします。



人と人が出会い、学び合い、日本とイスラエルをつないでいる

―――日本に移り住んで14年になるそうですが、日本に興味を持ったきっかけについて教えてください。


「日本とイスラエルをつなぐ」と聞くと、多くの人はビジネス、テクノロジー、スタートアップ、または外交関係を思い浮かべるかもしれません。


でも、私が10年以上日本に住み、研究と教育に携わる中で強く感じるようになったのは、本当の意味で国と国をつないでいるのは制度だけではなく、「人」であるということです。


研究者、学生、教育者、起業家。


異なる文化や価値観の中で出会い、学び合い、ときには意見をぶつけながら関係を築いていく人々。その積み重ねが、長い時間をかけて両国の理解や信頼を形作っていきます。


私が最初に日本に興味を持ったのは、日本に来るずっと前のことでした。イギリスのパブで働いていた頃、トーマス・クレアリーが翻訳した『Code of the Samurai』という本を読み、日本社会に強く惹かれるようになりました。本の中で語られていた価値観の多くが、私自身がイスラエルのユダヤ人家庭で育つ中で自然に触れてきた価値観とどこか重なっていたのです。


その後も日本についての本を読み続け、「この社会はなぜこのような形をしているのだろう」と考えるようになりました。


相手の声に耳を傾ける、日本の日常生活での学び

―――実際にどんな学問を学び、来日してどんな学生生活を送りましたか?


私はヘブライ大学で日本学と政治学を学びました。幸運にも、故ベン・アミ・シロニー教授の最後の学生の一人であり、ハラリ・エフド教授の指導のもとで学び、またオトマズギン・ニシム教授が教えた初期の学生の一人でもありました。ニシム先生は、私のさまざまなアイデアに耳を傾け、日本文化や日本社会をイスラエルに紹介する活動を共に考え、支えてくださいました。


そして2012年、私は日本政府(文部科学省)の奨学金を受け、大阪大学大学院法学研究科へ留学しました。


私自身、外から日本を見るだけではなく、日本社会の中で学びたいという思いがありました。そのため、大学院入試を受け、日本語で授業を受け、ゼミに参加し、できる限り深く日本社会に身を置こうとしました。また、研究者として成長するために、日本語のデータ、研究方法、インタビューなどについても学びました。


日本各地を訪れて伝統文化に触れてきたハダスさん

研究室の雰囲気。

先輩後輩の関係。

言葉にならない配慮。

制度の背後にある価値観。

人との距離感。

組織の動き方。


日本での経験を通じて、「理解する」ということは、語ること以上に、まず相手の声に耳を傾けることなのだと感じるようになりました。


学術から日常生活へと広がっていく交流

――現在の活動に結びつくきっかけについて教えてください。


2014年、大阪大学に滞在していたニシム先生と大阪のカフェで深夜まで話していた際、「イスラエルの学生を日本へ連れて来たい」「日本とイスラエルの研究者が共に学び、研究できる環境を作りたい」という夢について語り合いました。


この会話が、現在の特定非営利活動法人 日本イスラエル学術文化振興協会(IJAC)の設立につながりました。


それ以来、10年以上にわたり少しずつ人と人との関係を築きながら、学生セミナー、共同研究、国際シンポジウム、インターンシップ、大学関係者の交流など、さまざまな活動を続けてきました。


さまざまな活動を通じて人と人を結ぶIJAC

また、学術交流だけでなく、日常生活の中での交流も大切だと考え、京都ではイスラエル・ユダヤ系学生と日本人学生が共に暮らすシェアハウス『SOMA HOUSE』も立ち上げました。


イスラエル・ユダヤ系学生と日本人学生が共に暮らす『SOMA HOUSE』

特に印象的だったのは、「日本を知る」という経験が、学生や研究者にとって単なる海外経験では終わらないということです。


ある学生は、日本で初めて自分の将来について真剣に考えるようになりました。

ある研究者は、異なる研究文化との出会いによって、自分の専門分野を新しい視点で見直しました。

またある学生は、イスラエルでの経験を通じて、「正解が一つではない世界で考え続けること」の大切さを学びました。


国際親善の一環として第266代ローマ教皇フランシスコと面会

私は、こうした人と人との出会いこそが、未来の国際関係を支えていくのだと思っています。


そして、そのような「人」の声や経験をもっと残し、共有したいという思いから生まれたのが、このアカデミアプラットフォーム『シャロームアカデミー』です。


シャロームアカデミーとは?

――新たなアカデミアプラットフォームについて、具体的に教えてください。


ここでは、研究者へのインタビュー、学生たちの経験談、大学発のイノベーション、教育や国際協力についての対話などを通じて、人・知識・経験をつなぐ場を目指しています。


『シャロームアカデミー』は、主に4つのカテゴリーで構成されています。

Meet the Scholar

研究者たちの知的な歩みや研究テーマを紹介します。


Student Voice

異文化の中で学び、生活する学生たちの視点や経験を共有します。


Academic-Based Innovation

大学や研究が、どのようにイノベーションや社会変化につながっていくのかを探ります。


Academic Leadership

教育者や大学関係者との対話を通じて、高等教育や国際協力の未来について考えます。


同志社大学 国際教育インスティテュートで講義するハダスさん

日本とイスラエルは、文化も社会も大きく異なります。


だからこそ、そこには学びがあります。


異なるからこそ対話が生まれ、  

新しい視点が生まれ、  

そこから新たな可能性が生まれていくのです。


『シャロームアカデミー』が、そのような出会いや対話が育まれる、小さくても意味のある「接点」となれれば嬉しく思います。


3人の男の子を育てながら、学術的な活動に取り組むハダスさん

学問の世界を通じて、日本とイスラエルの未来を考える『シャロームアカデミー』。研究者のインタビューをはじめ、読者のみなさんの学びに結びつく記事をお届けいたします。どうぞ、ご期待ください。


【PROFILE】
クシェレヴィチ・ハダス博士  Dr. Hadas Kushelevich

クシェレヴィッチ・ハダス博士

特定非営利活動法人 日本イスラエル学術文化振興協会 理事長

2012年に文部科学省(MEXT)の奨学金を受けて来日し、大阪大学大学院法学研究科にて博士号を取得、日本の政治制度および規制ガバナンスを専門に研究している。現在、京都を拠点とするアカデミック・アントレプレナーであり、特定非営利活動法人 日本イスラエル・学術文化振興協会(IJAC)の創設者兼代表理事長を務める。また、同志社大学、京都大学、立命館大学、ハイファ大学において非常勤講師としても活動している。


ヘブライ大学での学部時代から、イスラエル国内およびイスラエルと日本の間において、学術と社会を結びつける多様な社会的・文化的・学術的プロジェクトを企画・推進してきた。IJACを通じて、学術連携の強化、学生交流の促進、分野横断的なパートナーシップの構築を目指す取り組みを主導。さらに、研究グループの形成や国際会議の企画・運営にも関与し、大学、政府機関、国際機関と緊密に連携しながら、両国間の協力関係の発展に寄与している。